オンコリス Research Memo(6):テロメライシンは2023年10月に国内臨床試験結果を発表予定(3)
■オンコリスバイオファーマ<4588>の開発パイプラインの動向
(4) アジア市場への展開について
食道がんの世界患者数は2020年の約60.4万人から2040年には1.6倍の約98.7万人に増加すると予測されている。なかでもアジア市場が約8割と最も大きく、国別では中国が最大市場となる。このため、同社にとって中国市場は重要戦略市場と位置付けられる。現時点では、国内で販売承認を取得し製品価値を高めたうえで、ライセンス契約交渉を進める方針である。また、東南アジアへの展開についても視野に入れているようで、提携先であるMedigenとの協業が進む可能性もある。
(5) 成長戦略と潜在市場規模
テロメライシンの今後の成長戦略については、食道がんを適応症とする放射線併用療法での販売からスタートし、その後適応拡大と海外市場の開拓を進めることで収益最大化を図る戦略である。
まずは、国内で2024年に販売承認申請を行うことを最優先に取り組んでいく。販売承認された場合は、「手術不適応な局所進行性食道がん」が対象となり、「放射線療法の併用」が適用条件になると考えられる。その後はCRT療法や免疫チェックポイント阻害剤との併用療法に適応拡大を進めながら市場を開拓することになるが、開発リスク(開発費用)も考慮に入れてリターンが最大化する戦略をパートナー企業と協議しながら進める方針だ。
国内における潜在市場規模は、最大で250億円規模になると同社は推計している。国内の食道がん患者数は年間に約2.5万人で、このうちテロメライシンの適応対象となる「手術不適応な局所進行性食道がん」の患者数の比率は約10%(約2,500人)で、これに想定薬価と導入率を掛け合わせたものが市場規模となる。薬価についてはウイルス製剤として日本国内で初めて販売承認された第一三共<4568>の「デリタクト」(悪性神経膠腫治療薬)の薬価143万円を前提とする。テロメライシンは少なくとも1クール3回投与するため、429万円(143万円×3回)となるが、4回目を投与する患者もいることから1症例当たり500万円とし、これに導入率80%(2,000人)を掛けると100億円がピーク売上となる計算だ。ただ、「デリタクト」の薬価は原価計算方式※で算出されており、テロメライシンも原価計算方式で算出されることになれば薬価はもう少し高い水準で決まり、ピーク時売上も100億円を超えてくるものと予想される。また、CRT療法との併用療法に適応拡大が進めば対象患者数がさらに広がることになり、CRT併用療法での導入率40%を前提とすれば、年間250億円程度の売上が期待できる。
※ 薬価の算出方式は、類似薬効比較方式と原価計算方式の2通りがあり、類似薬のない新薬については原価計算方式が用いられる。算出方式は、製造原価や販管費、流通経費を積み上げ、そこに製薬企業の利益を乗せた額を薬価とする。また、新規性のある薬や先駆け審査指定品目については補正加算が上乗せされることになる。販管費、流通経費、営業利益については、直近3年間の業界平均値の係数が原則として用いられる。
米国市場については、胃がんで2nd-Line治療における免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の開発に成功すれば、数百億円規模の需要が見込まれるが、上市は最速で2030年以降となる。ただ、国内での上市に成功すれば最大マーケットである中国市場でも開発が進む可能性が高まり、将来的に国内外合わせて1,000億円を超える市場規模が視野に入ってくる。まずは、2023年10月に発表される国内臨床試験のトップラインデータの内容に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SO》
提供:フィスコ