日本情報C Research Memo(1):2023年6月期は先行投資等の影響で減益なるも、売上面は順調に推移
■要約
日本情報クリエイト<4054>は不動産領域のDXプラットフォーマーとして、全国の不動産仲介会社及び賃貸管理会社向けに、不動産業務フローに沿った一気通貫のDXソリューションを提供する不動産Tech企業である。サービス区分は不動産仲介業務を対象とする仲介ソリューション、賃貸管理業務を対象とする管理ソリューションである。2023年6月期の売上構成比は仲介ソリューションが39.9%、管理ソリューションが59.0%となった。仲介ソリューションの売上高が大幅に増加したのは2023年6月期から新規連結した(株)リアルネットプロによるものである。併せてイニシャル・ストック別でもリアルネットプロの寄与によりストック売上比率が一気に70%台まで上昇した。ストック売上の積み上げのほか、低い解約率も伴って高い利益率や安定した財務基盤を実現していることが同社の強みの1つである。
1. 2023年6月期は先行投資等の影響で減益なるも、売上面は順調に推移
2023年6月期の連結業績は、売上高が前期比23.5%増の3,770百万円、営業利益が同34.2%減の329百万円、経常利益が同30.1%減の376百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同34.6%減の185百万円となった。EBITDAは同15.5%増の661百万円となった。売上面は月額有償サービス利用顧客数が順調に増加し、リアルネットプロの損益計算書新規連結も寄与して大幅増収と順調となった。利益面は減価償却費の増加、一時的な保守費用・外注加工費の増加、前期に実施した営業体制強化に伴う販管費の増加などにより減益となった。ただし四半期ベースでは、第4四半期は売上高がオーガニック成長やリアルネットプロの寄与本格化などにより過去最高の1,037百万円(前年同期比21.1%増)となり、営業利益もストック売上高の増収(前年同期比37.6%増)効果や、営業体制強化に向けた先行投資一巡効果などにより、151百万円(前年同期比約3.0倍)と回復基調に転じた。営業利益率も14.6%まで回復した。
2. 2024年6月期は大幅増収増益予想で利益率も回復基調
2024年6月期の連結業績予想は、売上高が前期比16.7%増の4,400百万円、営業利益が同112.3%増の700百万円、EBITDAが同57.3%増の1,040百万円、経常利益が同86.2%増の700百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同105.1%増の380百万円としている。売上面は新規顧客獲得などにより各サービスが順調に拡大(イニシャル売上高が同12.5%増の1,120百万円、ストック売上高が同18.1%増の3,280百万円の計画)して大幅増収となった。利益面は、増収効果やストック売上の積み上げ効果、前期の一時的費用の剥落、先行投資一巡に伴う販管費抑制などにより大幅増益予想としている。売上総利益率は減価償却費等の影響により前期並みだが、販管費比率が大幅に低下することにより、営業利益率は同7.2ポイント上昇の15.9%、EBITDAマージンは同6.1ポイント上昇の23.6%の計画とし、利益率も回復基調の見込みである。同社予想は、営業人員・営業拠点への投資が一巡して高利益率へ回帰する体制が整ったとしている。サービス導入事業者数が増加基調であり、ストック売上拡大の効果、先行投資の効果、大量採用した営業人員の戦力化、リアルネットプロとのシナジーなども勘案すれば、会社予想に上振れの可能性があると弊社では考えている。
3. 2022年6月期~2024年6月期はプラットフォーム構築ステージで積極先行投資
不動産仲介・管理領域では全国に12万を超える宅地建物取引事業者が存在している。小規模事業者が多く、毎年5,000社前後が廃業する一方で、宅地建物取引資格を取得するなどして新規開業する事業者が毎年6,000社前後あり、結果的に法人事業者数は緩やかに拡大基調となっている。新規開業事業者にはデジタルネイティブ世代と言われる若い経営者が多く、DXを積極的に推進する傾向が強いため、同社のDXソリューションの市場開拓余地は大きく、同社にとって市場環境は良好と言えるだろう。このような市場環境を背景に同社は、2022年6月期~2024年6月期をプラットフォーム構築ステージと位置付ける3ヶ年成長戦略を策定した。積極的な先行投資により、独自プラットフォーム構築に向けた商品・サービス力強化戦略、顧客数拡大及び市場シェア拡大に向けた営業体制強化戦略を推進している。そして2024年6月期の主要KPIとしては業者間物件流通サービス(無償)の顧客数が48,017事業所、月額有償サービスの利用顧客数が6,500事業所まで拡大する計画としている。
4. アナリストの視点
同社は、2023年6月期が実質2期連続減益となったため利益成長のトレンドが崩れた形となったが、これは先行投資などの影響である。2024年6月期は顧客数やストック売上の順調な拡大、先行投資負担の一巡や一時的費用の剥落により、収益が回復基調に転じる見込みだ。弊社では中長期的な視点で見て、顧客数やストック売上が拡大基調である点を高く評価している。そして、同社を取り巻く市場環境が良好であることも勘案すれば、さらなる新サービス開発やきめ細かなコンサルティング・サポートによって収益拡大が加速する可能性があり、中長期的な成長ポテンシャルは大きいと言えるだろう。したがって当面は2024年6月期の収益回復の進捗状況、2025年6月期以降の新たな成長戦略に注目したい。
■Key Points
・2023年6月期は先行投資等の影響で減益だが売上面は順調
・2024年6月期は大幅増収増益予想で利益率も回復基調
・2022年6月期~2024年6月期はプラットフォーム構築ステージで積極先行投資
・顧客数やストック売上が拡大基調である点を評価
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《SI》
提供:フィスコ