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秋のIPO本格化、「10月新規上場」銘柄は逆風を突き抜けられるか <株探トップ特集>


―KOKUSAの大型IPOに関心集まる、地味な銘柄が目立つという声も―

  10月IPOが3日から始まる。今月は12社が登場する。特に東証プライム市場に直接上場する大型IPOの登場もあり、その動向が市場の関心を集めている。足もとで、中小型株の値動きは冴えない展開が続いており、ベンチャー企業を中心とするIPO銘柄も上値の重い展開が続く。最近は初値が公開価格を割り込む銘柄も目立ち、人気格差も目立つ。10月IPOは逆風を突き抜け上昇基調に突入することができるか。

●10月は12社が登場、9月不振の挽回なるか

 10月IPOでは、12社が登場する。昨年同月に比べて3社の増加となる。内訳は東証プライム市場への上場が1社、東証スタンダード市場への上場が3社、東証グロース市場への上場が7社、名証メイン市場への上場が1社となっている。半導体製造装置メーカーのほか、家賃債務保証、情報ソフト開発、M&A関連などの銘柄が上場する。SBI証券の主幹事銘柄が5社と目立つ。
 
 9月IPOを振り返ってみると、10社が登場し、このうち初値の上昇率が50%を上回ったのは、ファーストアカウンティング <5588> [東証G]とオカムラ食品工業 <2938> [東証S]の2社だけだった。その一方、3社の初値は公開価格を割り込み、2社は初値と公開価格が同値だった。この結果、初値が上昇したのは、全体の半分にとどまるという冴えない結果となった。資金吸収額が、やや大きい銘柄が少なくなく、需給関係の悪化なども警戒された様子だ。グロース系のIPO銘柄は上値の重い状況が続いている。

●KOKUSAはコロナ禍後で最大のIPOに

 そんななか10月IPOが始まる。注目されるのは何と言っても、25日に東証プライム市場に上場するKOKUSAI ELECTRIC <6525> [東証P]だ。同社は半導体製造装置メーカーで日立国際電気の半導体製造装置部門が分社し発足。バッチ成膜装置やトリートメント(膜質改善)装置は世界トップクラスのシェアを誇る。想定売出価格から弾いたIPOの資金吸収額は約1270億円、時価総額は4350億円前後とコロナ禍後で最大のIPOとなる。売り出しのみの案件で、今期業績予想も減益見通しだが、「基本的には株価は半導体関連株の動向次第。下落する場面があれば中長期的には拾い場となるかもしれない」(市場関係者)と期待する声も出ている。

●西部技研に強弱観、キャスターは値が飛ぶ展開も

 10月IPOではKOKUSAは突出した規模となるが、同社以外ではまず3日に西部技研 <6223> [東証S]とニッポンインシュア <5843> [東証S]が登場する。西部技研はデシカント除湿機やVOC濃縮装置などの製造販売を手掛ける。電気自動車(EV)や半導体絡みの需要などにも乗り業績は拡大している。ただ、資金吸収額は150億円強と大きい。発行価格も想定価格から大きく引き下げられて決定している。同社株には強弱観が対立しており、10月IPOの動向を占う銘柄との見方もある。インシュアは家賃債務保証サービスを手掛ける。資金吸収額は13億円程度だ。
 
 4日にはキャスター <9331> [東証G]とくすりの窓口 <5592> [東証G]が登場する。キャスターはリモートアシスタントをはじめとした人材事業運営を展開。リモートワーク関連株として注目されている。資金吸収額は3億円程度と小さく、値が飛ぶ展開が期待されている。くすりの窓口は、薬局・ドラッグストア検索・予約サイト「EPARKくすりの窓口」などを運営。資金吸収額は50億円強の水準だ。

●ジャパンMや全保連、ドリームAなどに期待

 13日には名証メイン市場に成友興業 <9170> [名証M]が上場。同社は汚染土壌処理事業などを手掛けている。資金吸収額は3億円程度の見込み。17日にはケイファーマ <4896> [東証G]が上場する。同社は慶応大学発のバイオベンチャーでiPS創薬事業と再生医療事業を手掛ける。前期まで赤字が続いたが今期は黒字転換の見込み。資金吸収額は20億円程度。

 23日には売れるネット広告社 <9235> [東証G]が登場。同社はD2C(ネット通販)事業者のインターネット広告の費用対効果を改善することを目的としたクラウドサービス及びマーケティング支援サービスを提供している。資金吸収額は10億円程度。24日にはジャパンM&Aソリューション <9236> [東証G]が上場する。同社はM&Aアドバイザリーサービスを手掛ける。同社の資金吸収額は5億円強の見込みで、値が飛ぶ展開が見込まれている。
 
 25日には全保連 <5845> [東証S]が登場する。同社は大手家賃債務保証サービス会社。沖縄発で現在は全国19拠点で事業展開している。同社の資金吸収額は50億円前後。KOKUSAと同日の上場となる点を警戒する声もある。

 26日には笑美面 <9237> [東証G]が上場する。同社は高齢者に対するシニアホームの紹介サービスを展開。資金吸収額は5億円強の見込み。27日にはドリーム・アーツ <4811> [東証G]が登場する。同社は、大企業に特化した業務デジタル化SaaSプロダクト及びコンサルティングサービスの提供を行っている。資金吸収額は20億円強の見込み。

●IPO市場の潮流変化には注意を

 10月IPOに関しては、KOKUSAを除けば「全体的に地味な企業が多い」との声が少なくない。9月と同様に相場の地合い次第では、初値が公開価格を割り込む銘柄が出てくることもあり得る。金融商品仲介業者(IFA)である「みんなの証券アドバイザー」のシニア・フィナンシャル・アドバイザーで、中小型株に詳しい藤井知明氏は、現在のIPO市場の状況に関して「以前だったら大きく値を飛ばしたような銘柄も、いまはさほど人気が盛り上がらなくなっている。バリュー系の銘柄が評価されるなどIPOの潮流の変化を捉えた対応が必要だろう」と指摘している。


■10月IPO一覧
上場日 コード・上場市場 企業名 主幹事
10月3日 6223・東S  西部技研       SMBC日興
  3日 5843・東S  ニッポンインシュア  野村
  4日 9331・東G  キャスター      大和
  4日 5592・東G  くすりの窓口     SBI
  13日 9170・名M  成友興業       SBI
  17日 4896・東G  ケイファーマ     SBI
  23日 9235・東G  売れるネット広告社  東海東京
  24日 9236・東G  ジャパンM&Aソリューション
                       SBI
  25日 6525・東P  KOKUSAI ELECTRIC
                       野村、SMBC日興
  25日 5845・東S  全保連        三菱UFJモルガン・スタンレー
  26日 9237・東G  笑美面        SBI
  27日 4811・東G  ドリーム・アーツ   みずほ
(注)東Pは東証プライム、東Sは東証スタンダード、東Gは東証グロース、名Mは名証メイン

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