明日の株式相場に向けて=注目度最高潮、植田総裁は何を語る?
きょう(21日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比452円安の3万2571円と大幅安で3日続落。先物を絡めた売り仕掛けが効いて下げ幅は400円を超えた。今週に入ってからリスクオフモードにスイッチが切り替わり、3営業日合計で950円以上の下落。前週後半に上げた分をすべて吐き出し、更に下値を探る格好となった。
今週は各国中銀の金融政策会合ラッシュとなっているが、きょうは英国中銀のほか、トルコやスイス、スウェーデン、南アフリカといった数多くの中銀が政策金利を発表する。ここで改めて各国の金利水準を比較すると、当然ながら日本だけが異常値ともいえるマイナス0.1%と水面下にあり、その現実を突きつけているのが激化する円売りの動き、止まらない円安である。気がつけば一時1ドル=148円40銭台まで円安が進行している。仮に1ドル=150円の壁を突き破れば昨年10月下旬以来、更にそこを通過点とする円売りで152円ラインを突破するような展開となれば33年ぶりの円安水準に突入する。
「33年ぶり」というのは日経平均やTOPIXなどの株価指数の高値更新に絡み、もはや耳慣れたフレーズとなっているが、株高はウェルカムでもこれ以上の円安は喜べない部分が多い。振り返って2012年の年末を起点とするアベノミクス相場は株高と円安がワンセットになっていた。円安が株式市場を救ったといっても過言ではないが、当時の日本はデフレの渦中にあった。今は国内でもかつての欧米と同様にインフレに対する警戒ムードが覆うべくもない状態にあり、過度な円安はスタグフレーションを想起させ、明らかな「恐怖」へと形を変えていく。
以前はマイナス金利で日本と歩調を合わせていたスイスだが、今からちょうど1年前にスイス国立銀行(中央銀行)がこれを解除した。そして、今回の会合前の時点でスイスの政策金利は1.75%まで切り上がっていた。日本だけ利上げ不能の経済環境にあるというのであればそれはそれで問題だが、そうでなければ川上インフレが押し寄せる状況下にあって「これ以上、水面下を這うような金利(マイナス金利)を継続することは、グローバル的見地に立ってナンセンスというよりない」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。
前日の米国株市場ではハイテク株中心に売りがかさんだ。注目されたFOMCは想定通り追加利上げを見送ったものの、ドットチャートや会合後のパウエルFRB議長の記者会見で、タカ派寄りであるとの認識がマーケットに広がり、取引終盤の崩れ足に反映された。Fedウォッチでは会合前の段階で、11月FOMCでの利上げはないと見る向きが7割を占めていた。今回の会合後はその比率が下がったとはいえ、数パーセントで誤差の範囲だ。では、何が市場センチメントを冷やしたかといえば、前日の繰り返しになるが来年の早期利下げ期待の剥落である。24年末の政策金利見通しがこれまでの4.6%から5.1%に引き上げられた。ちなみに23年末は5.6%の想定で、これがターミナルレートとすると来年1年間で0.5%の引き下げにとどまる勘定だ。1会合で0.25%引き下げることを前提とすれば、FOMC2回分は利下げのタイミングが後ずれすることになる。
米長期金利は直近4.4%台まで上昇、これは約16年ぶりの高水準。また米2年債利回りも5.1%台まで水準を切り上げ、こちらはおよそ17年ぶりの高さだ。反射的に半導体関連を筆頭とするハイテク・グロース株に売りが広がり、その流れがきょうの東京市場にも波及した。あすの日銀金融政策決定会合でマイナス金利解除といった政策変更が行われる可能性は限りなく低い。しかし、メインイベントはその後に行われる植田日銀総裁の記者会見の方だ。何を語るのか。FOMC後のパウエルFRB議長の会見よりも東京市場に与える影響ははるかに大きく、総裁就任後の会見の中でも今回は“注目度マックス”といえる。
あすのスケジュールでは、8月の全国消費者物価指数(CPI)が朝方取引開始前に開示されるほか、午後取引時間中に8月の全国スーパー売上高が発表される。また、日銀金融政策決定会合の結果発表と植田日銀総裁の記者会見にマーケットの関心が高い。IPOが2社予定されており、東証スタンダード市場と名証メイン市場に笹徳印刷<3958>、東証グロース市場にファーストアカウンティング<5588>が新規上場する。海外では8月の英小売売上高、9月の仏購買担当者景気指数(PMI)、9月の独PMI、9月の英PMI、9月のユーロ圏PMI、9月の米PMIが発表される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年09月21日 17時55分
今週は各国中銀の金融政策会合ラッシュとなっているが、きょうは英国中銀のほか、トルコやスイス、スウェーデン、南アフリカといった数多くの中銀が政策金利を発表する。ここで改めて各国の金利水準を比較すると、当然ながら日本だけが異常値ともいえるマイナス0.1%と水面下にあり、その現実を突きつけているのが激化する円売りの動き、止まらない円安である。気がつけば一時1ドル=148円40銭台まで円安が進行している。仮に1ドル=150円の壁を突き破れば昨年10月下旬以来、更にそこを通過点とする円売りで152円ラインを突破するような展開となれば33年ぶりの円安水準に突入する。
「33年ぶり」というのは日経平均やTOPIXなどの株価指数の高値更新に絡み、もはや耳慣れたフレーズとなっているが、株高はウェルカムでもこれ以上の円安は喜べない部分が多い。振り返って2012年の年末を起点とするアベノミクス相場は株高と円安がワンセットになっていた。円安が株式市場を救ったといっても過言ではないが、当時の日本はデフレの渦中にあった。今は国内でもかつての欧米と同様にインフレに対する警戒ムードが覆うべくもない状態にあり、過度な円安はスタグフレーションを想起させ、明らかな「恐怖」へと形を変えていく。
以前はマイナス金利で日本と歩調を合わせていたスイスだが、今からちょうど1年前にスイス国立銀行(中央銀行)がこれを解除した。そして、今回の会合前の時点でスイスの政策金利は1.75%まで切り上がっていた。日本だけ利上げ不能の経済環境にあるというのであればそれはそれで問題だが、そうでなければ川上インフレが押し寄せる状況下にあって「これ以上、水面下を這うような金利(マイナス金利)を継続することは、グローバル的見地に立ってナンセンスというよりない」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。
前日の米国株市場ではハイテク株中心に売りがかさんだ。注目されたFOMCは想定通り追加利上げを見送ったものの、ドットチャートや会合後のパウエルFRB議長の記者会見で、タカ派寄りであるとの認識がマーケットに広がり、取引終盤の崩れ足に反映された。Fedウォッチでは会合前の段階で、11月FOMCでの利上げはないと見る向きが7割を占めていた。今回の会合後はその比率が下がったとはいえ、数パーセントで誤差の範囲だ。では、何が市場センチメントを冷やしたかといえば、前日の繰り返しになるが来年の早期利下げ期待の剥落である。24年末の政策金利見通しがこれまでの4.6%から5.1%に引き上げられた。ちなみに23年末は5.6%の想定で、これがターミナルレートとすると来年1年間で0.5%の引き下げにとどまる勘定だ。1会合で0.25%引き下げることを前提とすれば、FOMC2回分は利下げのタイミングが後ずれすることになる。
米長期金利は直近4.4%台まで上昇、これは約16年ぶりの高水準。また米2年債利回りも5.1%台まで水準を切り上げ、こちらはおよそ17年ぶりの高さだ。反射的に半導体関連を筆頭とするハイテク・グロース株に売りが広がり、その流れがきょうの東京市場にも波及した。あすの日銀金融政策決定会合でマイナス金利解除といった政策変更が行われる可能性は限りなく低い。しかし、メインイベントはその後に行われる植田日銀総裁の記者会見の方だ。何を語るのか。FOMC後のパウエルFRB議長の会見よりも東京市場に与える影響ははるかに大きく、総裁就任後の会見の中でも今回は“注目度マックス”といえる。
あすのスケジュールでは、8月の全国消費者物価指数(CPI)が朝方取引開始前に開示されるほか、午後取引時間中に8月の全国スーパー売上高が発表される。また、日銀金融政策決定会合の結果発表と植田日銀総裁の記者会見にマーケットの関心が高い。IPOが2社予定されており、東証スタンダード市場と名証メイン市場に笹徳印刷<3958>、東証グロース市場にファーストアカウンティング<5588>が新規上場する。海外では8月の英小売売上高、9月の仏購買担当者景気指数(PMI)、9月の独PMI、9月の英PMI、9月のユーロ圏PMI、9月の米PMIが発表される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年09月21日 17時55分