TOKAI Research Memo(2):2024年3月期第1四半期は増収減益。おおむね会社計画どおりの進捗
■業績動向
1. 2024年3月期第1四半期業績の概要
TOKAIホールディングス<3167>の2024年3月期第1四半期の連結業績は、売上高で前年同期比4.2%増の53,971百万円、営業利益で同26.0%減の2,484百万円、経常利益で同22.8%減の2,617百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で同25.4%減の1,338百万円となった。売上高はエネルギー事業やCATV事業等を中心とした継続取引顧客件数の増加による増収に加え、法人向け情報通信事業の拡大等により3期連続の増収、過去最高を更新した。利益面では、継続取引顧客件数の増加による増益があったものの、高気温等による家庭用ガス販売量の減少や顧客獲得コストの増加等によりエネルギー事業で前年同期比10億円の減益となったほか、人的資本投資の一環としてグループ全体で賃上げを実施したことにより人件費が10億円増加したこと等が減益要因となった。
会社計画に対する営業利益の状況については、エネルギー事業が高気温等の影響により2億円の下振れとなったものの、情報通信事業がコンシューマー向けの顧客獲得コスト効率化と法人向けの増収効果で2億円の上振れとなり、全体では計画どおりの進捗となったようだ。なお、当第1四半期末の継続取引顧客件数は3,312千件となり、前年同期比で99千件増加、前期末比で13千件の増加となった。
(1) エネルギー事業
エネルギー事業の売上高は前年同期比3.0%増の23,966百万円、営業利益(間接費用等配賦前営業利益で決算短信とは算出方法が異なる。以下、同様)は同52.3%減の924百万円となった。主な減益要因として、家庭用LPガスの販売量減少3億円、顧客獲得コストの増加3億円、人件費の増加3億円が挙げられる。
LPガス事業の売上高は前年同期並みの19,336百万円となった。第1四半期末の顧客件数は前年同期比35千件増加の755千件と順調に増加したものの、高気温(1度上昇)等により家庭用の販売量が同3%減少したことが響いた。顧客件数は前期末比で9千件増加し、その内訳は新規獲得が9千件、M&A・アライアンスによるものが5千件、さらに中止・解約が5千件となった。純増数としては前年同期の5千件増(新規獲得8千件、M&A・アライアンス2千件、中止・解約5千件)に対して新規獲得、M&Aアライアンスともに伸ばしたことになる。エリア別では、既存エリアで5.5千件増、新規エリアで3.5千件増とそれぞれ順調に増加した。
都市ガス事業の売上高は同17.5%増の4,629百万円となり、顧客件数は同4千件増加の75千件となった。売上高は原料費調整制度による販売単価の上昇が主な増収要因となった。なお、顧客件数の増加分の大半は、持分法適用関連会社であるT&Tエナジー(株)における東海エリアでの契約件数増加※による(販売手数料のみ売上計上)。
※T&Tエナジーは東京電力エナジーパートナー(株)との合弁(出資比率50%)で2019年10月に設立し、愛知県、岐阜県、三重県の東海3県で都市ガスの小売事業等を行っている。
(2) 情報通信事業
情報通信事業の売上高は前年同期比4.6%増の13,468百万円、営業利益は同17.8%増の1,456百万円と2期連続の増収、3期連続の増益となった。
コンシューマー向け事業については、売上高で同1.2%増の6,035百万円、営業利益で272百万円と増収増益となった。売上高は、光コラボの顧客件数が大手携帯キャリアとの提携による獲得強化により同14千件増の365千件となったほか、LIBMO(格安スマホ)もサービスメニューの拡充や固定回線とのセットプラン導入等の効果により同14千件増の72千件となったことが増収要因となった。光コラボについては大手携帯キャリア経由での比率が上昇していることから、顧客売上単価は低下傾向だが、売上総利益への影響はない。営業利益は、光コラボやLIBMOの契約件数増加で1億円の増益、顧客獲得コストの効率化に取り組んだことが1.2億円の増益要因となった。
法人向け事業の売上高は同7.5%増の7,433百万円、ストックビジネスとなる通信回線サービスやクラウドサービスの売上が順調に拡大したことが増収要因となった。営業利益は増収効果で0.8億円の増益となったものの、人件費で0.5億円増、電気代で0.3億円増加となったことで、全体では横ばい水準に留まった。
(3) CATV事業
CATV事業の売上高は前年同期比7.1%増の8,820百万円、営業利益は同3.8%増の1,618百万円となった。2022年10月に沖縄ケーブルネットワーク(株)を子会社化した効果もあって、第1四半期末の顧客件数が放送サービスで同24千件増の915千件、通信サービスで同30千件増の379千件となったことが増収の要因と考えられる。前期末比では放送サービスで1千件増、通信サービスで5千件増となっており、光化投資の推進により通信サービスの契約比率が上昇している。沖縄ケーブルネットワークの上乗せ分で売上高は370百万円の増収要因となっており、既存事業ベースでは同2.6%の増収、営業利益率が18.9%から18.3%と若干低下したが、電気代や人件費の増加が主因と考えられる。
(4) 建築設備不動産事業
建築設備不動産事業の売上高は前年同期比4.5%増の4,852百万円、営業利益は同137.7%増の126百万円となった。リフォーム工事や土木工事は横ばい水準に留まったものの、事業用新築案件の受注増加により建築部門が1億円の増収となったほか、不動産管理部門が1億円の増収となり、営業利益も増収効果により2期ぶりの増益に転じた。
(5) アクア事業
アクア事業の売上高は前年同期比0.6%増の1,871百万円、営業利益は同58.1%増の98百万円となった。第1四半期末の顧客件数は前年同期比1千件減の165千件となったものの、前期末比では1千件増と4四半期ぶりに増加に転じた。新たに浄水サーバーの取り扱いを開始し、顧客基盤の拡充に取り組んだことが奏功した。利益面では顧客獲得コストを抑制したことが増益要因となった。
(6) その他・調整額
その他の売上高は前年同期比8.5%増の992百万円となった。介護事業ではデイサービスの利用者数減少により同3.8%減の345百万円となったが、婚礼催事事業が婚礼・宴会需要の回復により同20.2%増の260百万円となったほか、船舶修繕事業も修繕隻数の増加により同51.0%増の189百万円となった。内部調整額も含めた営業損失は1,739百万円となり、前年同期比で245百万円増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《YI》
提供:フィスコ