「GX関連株」に再評価機運、脱炭素成長型経済でスパークする株 <株探トップ特集>
―GX推進戦略の閣議決定で注目度アップ、関連企業のビジネス機会拡大へ―
気候変動問題への対応が世界的な課題となっているなか、政府が注力する分野の一つが化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心に転換する「グリーントランスフォーメーション(GX)」だ。今年2月に2050年 カーボンニュートラルに向けた「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定され、5月には成長志向型カーボンプライシングの導入などを盛り込んだ「GX推進法」が国会で成立。7月28日には今後10年間の温暖化対策の中核となる政策を示した「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略)が閣議決定され、改めて関連銘柄に注目する機運が高まっている。
●新たな政策を実行する段階へ
GX推進戦略では「脱炭素」と「経済成長」、ロシアがウクライナに侵攻して以降、大きな課題となっている「エネルギー安定供給の確保」を同時に実現するための2つの方針が示された。1つ目は徹底した省エネルギーに加え、再生可能エネルギーや原子力などのエネルギー自給率の向上につながる脱炭素電源への転換などGXに向けた取り組みを進めること。2つ目はGX経済移行債などを活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用などを含む成長志向型カーボンプライシング構想の実現・実行だ。
また、新たな国民運動を全国展開し、脱炭素製品などの需要を喚起する方針。事業再構築補助金などを活用した支援、プッシュ型支援に向けた中小企業支援機関の人材育成、パートナーシップ構築宣言の更なる拡大などで中小企業を含むサプライチェーン(供給網)全体の取り組みを促進することも盛り込まれている。
カーボンニュートラルを宣言する国・地域が増加し、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減と経済成長をともに実現させる取り組みが世界的に活発化するなか、その成否が国家や企業の競争力に直結する時代となっており、GX推進につながる事業を展開する企業から目が離せない。
●今後の動向が注目される7銘柄
アイリッジ <3917> [東証G]は7月から、企業が消費者とともにカーボンオフセットに取り組める「ゼロカーボンゴー!」を開始した。カーボンオフセットとは企業活動などで発生するCO2を、森林による吸収や省エネ設備への更新で生み出された削減分を購入することなどで、埋め合わせしようとする取り組み。同社は「ゼロカーボンゴー!」を通じて、今年度中に10万トンのCO2削減を目指す。
サイバーエージェント <4751> [東証P]は7月、IoT技術を活用した独自の省エネソリューションの提供を開始すると発表した。これまで積極的に人工知能(AI)やロボティクス技術の研究開発を重ねてきた自社の知見を生かすことで、導入するだけで照明や空調を柔軟かつ効率的に制御。また、フロアにセンサーを配置することで客数や従業員の滞在傾向にあわせた省エネモデルの構築・運用を行い、従業員が働きやすい環境を維持しながらフロアごとに節電を行うことができるという。同社は今後、更なる効果・効率の改善を実施し、25年度中にオフィスビルを保有する企業を含んだ100社への導入を目指している。
バルミューダ <6612> [東証G]は現在、小型・高効率の風力発電を実現し、再生可能エネの利用可能性を最大化するための研究開発に取り組んでおり、独自の発電用タービンの開発を進めている。今秋には実際の使用環境である屋外での性能を確認・追求するための実証実験を開始する予定。今後、計測方法を多様化し、発電用タービンの研究と改良を重ねることで、技術の確立を進める構えだ。
ダイヤモンドエレクトリックホールディングス <6699> [東証P]は5月、アンモニアなど次世代燃料エンジン用の「超高エネルギー点火システム」の開発で一定の成果を得たと発表している。これは従来製品に比べ6倍以上の点火エネルギーが出力可能な点火コイル技術と、1000分の1秒レベルで複数回の火花放電を可能とするマルチ点火技術を組み合わせ、トータルで12倍以上の点火エネルギーが出力可能なシステムをエンジンに搭載できるサイズに収めたもの。リーンバーン(希薄燃焼)エンジンにも応用可能だとしており、24年3月の試作品完成を予定しているという。
東京計器 <7721> [東証P]と子会社の東京計器パワーシステム、産業技術総合研究所(東京都千代田区)は、ギ酸からの高圧水素製造装置の小型・実用化モデルに関する共同研究開発に取り組んでいる。ギ酸は家畜飼料の防腐剤や皮なめし剤、凍結防止剤などに広く利用される化学物質で、ギ酸を用いた水素製造では高圧水素が直接得られることから圧縮工程を省略でき、高圧水素製造における装置の小型化と低コスト化が期待できるという。同社グループは同研究開発を通じて、水素エネルギーの更なる普及に取り組む構えだ。
Green Earth Institute <9212> [東証G]は、双日 <2768> [東証P]を幹事会社とし、東レ <3402> [東証P]、ダイセル <4202> [東証P]、DIC <4631> [東証P]などと共同提案した「水素細菌によるCO2とH2(水素分子)を原料とする革新的なものづくり技術の開発」について、このほど新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と正式に契約を締結したと発表している。これはCO2固定能力が大きい水素細菌の中でも、特に増殖能力が高い菌種を使い、CO2とH2を原料としてさまざまな化学品をつくることで、カーボンニュートラル実現に貢献するとともに、CO2の資源化による産業構造を変革していく研究開発事業。この事業の中でGEIは、バイオプラスチックの原料となり得る化学品を生産する水素細菌の開発と事業化に向けたスケールアップ実証に取り組むという。
レノバ <9519> [東証P]は1日、出光興産 <5019> [東証P]、長瀬産業 <8012> [東証P]、SMFLみらいパートナーズ(東京都千代田区)との共同出資で「姫路蓄電所」を設立し、送電線と蓄電池を直接つないで充放電する「系統用蓄電池」事業に参入すると発表した。同事業は天候や時間帯の影響で発電量が変動する再生可能エネの主力電源化を支える調整機能を担うとともに、電力系統の安定化や更なる再生可能エネの導入拡大につながるもの。同社は国内外の系統用蓄電池や蓄電池併設型再生可能エネ発電所の開発を通じて、自社の企業価値向上を図るとしている。
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