サイバートラスト Research Memo(9):2025年3月期にCAGR営業利益32%~40%を目指す
■成長戦略
1. 中期経営計画「BizX 20/40」
サイバートラスト<4498>は中期経営計画において、2023年3月期からの3ヶ年で業績の飛躍的成長を実現するためのスローガンとして「BizX 20/40(ビジネストランスフォーメーション トゥエンティーフォーティー)」を掲げ、5つの重要テーマ(成長する組織と人材育成、新規市場の立ち上げとフォーカス、将来に向けた研究開発、グローバル展開、システム安定稼働品質確保)に取り組むとしている。
数値目標としては、最終年度2025年3月期の売上高1,000百万円(サービス別売上高は認証・セキュリティサービスが4,900百万円、Linux/OSSサービスが2,900百万円、IoTサービスが2,200百万円)、営業利益2,000?2,380百万円(外部環境の不確実性を考慮してレンジ設定)を掲げている。3ヶ年のCAGRは売上高が20%、営業利益が32%~40%となる。
サービス別の戦略としては、同社が高成長牽引サービスとして位置付けている認証・セキュリティサービスのiTrust、Linux/OSSサービスのLinuxサポート、IoTサービスのEMLinuxなどの拡大を図り、さらなるリカーリングサービスの売上拡大を推進する方針だ。
認証・セキュリティサービスのiTrustについては、マイナンバーカードの普及によってオンライン本人確認の利用場面増加が見込まれるため、パートナー企業のアプリに組み込んだソフトウェアと連携し、iTrustの「トランザクション課金の拡大=リカーリングサービス売上の拡大」を推進する。
Linux/OSSサービスのLinuxサポートについては、無償Linuxで最も使用されているCentOS7のサポートが2024年6月で終了することに伴い、2020年12月のCentOS6のサポート終了時に続いてCentOSの延長サポートニーズが増加する見込みである。同社は、商機を逃すことなく受注拡大を行いつつ、CloudLinuxとの業務提携により取り扱いを開始したセキュリティ向上の付加価値サービス販売をスタートする。さらに、後継として有力視されるAlmaLinux OSへの対応という両面でリカーリングサービス売上拡大を推進する。
IoTサービスのEMLinuxについては、今後のIoT機器の出荷台数のさらなる増加に伴い、IoT機器のセキュリティリスクが増加することが見込まれるため、海外及び国内のIoTセキュリティ要件に準拠したEMLinuxの契約件数増加を推進する。さらに、IoT機器の真正性を確認して長期のライフサイクル管理を提供するSIOTP、EMLinuxとSIOTPをまとめた総合サービスEM+PLSについても契約件数増加を推進し、リカーリングサービス売上拡大につなげる方針だ。
認証・セキュリティサービスにおけるリカーリングサービス売上に占める主要プロダクトの構成比を見ると、主力サービスであるSureServerの構成比が低下する一方で、今後の成長ドライバーと位置付けているiTrustの構成比が上昇基調となっている。今後は、SureServerも一定規模の売上高を確保するが、売上高構成比で見ると高成長牽引サービスのiTrustの構成比が上昇する見込みだ。
なお、OSSグローバルコミュニティ※1との連携については、セキュリティ問題を背景として米国主導でOSSグローバルコミュニティがセキュリティ行動計画を策定しており、同社もこの行動計画に参加・貢献することを表明している。そして、長期保証CIP※2への貢献の成果として、EMLinuxの長期サポートを提供している。今後もセキュリティ行動計画に準拠した製品の開発・提供によってさらなる信頼性向上を図る方針だ。
※1 オープンソースソフトウェアのセキュリティ強化を目的として活動するグローバルコミュニティ。
※2 Civil Infrastructure Platformの略。社会インフラ用途の組込システムを長期間保守することを目指したOSSコミュニティ。
中期的に高収益化が一段と加速
2. 中期的に高収益化が一段と加速
同社は認証・セキュリティサービスとLinux/OSSサービスという収益基盤を確立し、さらに成長分野と位置付ける独自のIoTサービスも展開している。DXの進展に伴うセキュリティ意識の高まりなどにより、同社を取り巻く事業環境は良好に推移すると予想される。そして、高成長牽引サービスであるiTrust、Linuxサポート、EMLinuxなどリカーリングサービスが順調に拡大している。これらの事業環境や同社の事業戦略を勘案すれば、中期的に全体収益の拡大はもちろん、高収益化が一段と加速することを期待できると弊社では評価している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《SI》
提供:フィスコ