【植木靖男の相場展望】 ─25日移動平均線の重圧を崩せるか
「25日移動平均線の重圧を崩せるか」
●東京市場の命運を握る為替相場
日経平均株価は7月3日に戻り高値を付けて調整局面入りし、12日には3万2000円割れまで下落した。その後、下値固めに終始しているが、上に行くでなし、さりとてさらに下げるでもなく膠着状態にある。
チャートを見ると、7月6日以降、25日移動平均線を下回って推移している。NYダウの13連騰に刺激されて、27日に25日線を上抜いたが、翌日は辛うじてプラス乖離を維持する水準まで押し返された。
幾度となく突破を試みたものの、ここまで明確に突破できないということは、この25日線が大きな重圧になっているという事実に気づかされる。この平均線を信奉する投資家がいかに多いことか。そして、こういう状況に至ると、今後ますます25日線は重要な売買の尺度になってくるのだ。
今後の焦点は、25日線を明確に突破し、かつ目先的に7月19日の高値3万2896円(終値ベース)をいつ上抜いて新しい上昇局面を迎えるか、である。
最大のカギを握るのは、円相場であろう。前述したように、日経平均株価が25日線を下回ったのは7月6日である。そして円相場が円高に転じたのも、やはり7月6日だった。つまり、株価の膠着と円高が同時に進行しているのであり、今後、円相場がどう展開するかに市場の関心が集まることになろう。
日銀は28日の金融政策決定会合で長期金利の変動幅について市場動向に応じて0.5%程度としてきた上限を超えることも容認し、金利操作を柔軟化すると決定した。ただし、これはYCC(長短金利操作:イールドカーブ・コントロール)の“修正”ではない。すでに日銀は2022年12月に同じことを行っている。文字通り、小手先の変更といえる。
日銀としては苦渋の決断だろう。YCC修正は行いたくてもできない。長期金利がさらに上昇すれば、米国のシリコンバレーバンク破綻に端を発した金融危機の再来を招くリスクが高まるからだ。
いずれにしても、株価の生殺与奪権を握るのは円相場である。そして、2022年12月のケースをみるまでもなく、少し時間をおいて再び円安が進むとみてよさそうだ。
一方、ここへきて気掛かりなのは、米国株式市場の動向だ。NYダウが大天井を付けたのは2021年 12月の3万6338ドル(終値ベース)だ。本年7月26日の高値は3万5520ドル(同)、すなわち大天井を抜くまで818ドルだ。仮に大天井を抜くとなると、米国株価はまったく新しい段階に入ることを意味する。しかし、抜けないとすれば再調整は必至である。投資家としてはここでの売買は大きな賭けとなる可能性がある。たかが800ドル、されど800ドルである。注目したい。
●新指標株となるか、三菱重工業
さて、物色動向をどうみるか。この3月以来の日経平均株価の上昇がなお持続するとみれば、当然、主役は不変でありテック株といえる。そのカギを握るのは、やはりソシオネクスト <6526> [東証P]であろう。逆にまったく新しい相場が始まるとすればその指標株は三菱重工業 <7011> [東証P]か。防衛、宇宙、水素、アンモニアに注力し、来年以降のインフレ相場の主役期待株だ。
また、時に相場は目先を変えることもある。今日ではその対象は鉄鋼株、不動産株、鉄道株、百貨店株、海運株などであろう。
鉄鋼株では日本製鉄 <5401> [東証P]。PER7.9倍、PBR0.7倍は魅力的だ。下値は盤石である。次いで困ったときに頼りになる銘柄として挙げたいのは、日本郵船 <9101> [東証P]だ。これもPER8.9倍、PBR0.7倍と割安だ。来年以降、再び収益拡大へ向かうか。
2023年7月28日 記
株探ニュース