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退職後に4年で資産3倍の億超え、決め手は「高配当&優良株」のドン底狙い
目指せ億トレ、頑張り投資家さんの稼ぎ技 リンゴの木さんの場合
2020年に定年退職したリンゴの木さん(ハンドルネーム、以下、リンゴさん)は、毎朝、近所のコンビニで日本経済新聞を購入して、日々のニュースをチェックするのが日課になっている。
わざわざ歩いて出かけるのは、普段は部屋にこもりがちな生活で、運動不足になるのを避けるためだ。退職後に一旦はアルバイトに出たものの、時間や労力がかかる割には思ったほどの実入りはなかったことから、再び株式投資に本腰を入れる。
その判断は吉と出て、リンゴさんは定年退職後に株の運用資産を3倍以上に膨らますことに成功、億り人に昇格。目下の目標は年間に受け取る配当金を手取りで300万円を獲得することを目指している。
投資を始めて35年以上になるが、成績はほぼ負けなしという。成功の秘訣は、ゆったり&マイペース。これは前回登場し、多くの読者の関心を集めたマロンさん(ハンドルネーム)の手法と通ずるものがある。自身を「カメさん」と称したマロンさんに続く、カメさん2号的な存在のリンゴさんだが、もちろんまったく同じ手法ではない。
そのやり方とはどのようなものなのか。これから、見ていこう。
日本を代表する優良大型株で長期投資
リンゴさんが株式投資を始めたのは1987年。日本電信電話<9432>が政府保有株を放出して新規上場する際に、抽選に当たり取得したことがきっかけだった。
その元手は、給与で貯めた120万円。その後にボーナスや退職金の一部を加えたことで累積の元本は2500万円となり、これを累計で1億3000万円に膨らましている。運用益のうち1000万円は、サラリーマン時代に購入したマイホームの頭金に充てている。
こうした資産の拡大に貢献した主な銘柄は、東日本旅客鉄道<9020>、トヨタ自動車<7203>、三菱商事<8058>、日立製作所<6501>、日本電信電話<9432>などになる。
いずれも日本を代表する超有名企業で、リンゴさんはこうした企業ならば株価が紙くずになることは考えられないと、株価が軟調になった時を狙い、ここぞとばかりに買いを入れてきた。
この中で、最近仕込んだのがJR東日本だ。
JR東日本はコロナの凹みを狙う
同社は、2020年、コロナ禍で大きく売られたタイミングを好機と見なして買った銘柄だ。外出自粛の痛手をもろに食らった同社の株価は、6000円水準にまで下落する。長期の株価チャートを見ると、15年にマークした、高値1万2000円どころの約半分のかなり割安な水準であることがわかり、さらに大きく売られるリスクは限定的だと考えた。
QUICK・ファクトセットによれば同社の配当利回りは20年6月が2.2%、同7月が2.7%で、足元の1.4%より1.5倍ないし2倍程度の水準。当時に日経平均株価の配当利回りは2.0~2.2%だったことから、JR東の配当利回りが特段、魅力的な水準であったわけではなかった。
だが、リンゴさんは配当利回りより、将来の成長性に注目して投資を決めた。コロナ禍の需要の凹みは一時的で、コロナ禍が収束し経済の動きが正常化する過程では、リバウンドの動きが出ることに期待した。
また、JR東日本が首都圏に優良不動産を多く保有し、その有効活用が見込まれることにも目を向ける。今後、鉄道収入以外でも多目的に稼げる会社へと変貌していくストーリーを描き、長期的に有望だと考えた。
これらの見立てがハマり、最近10年の底値付近で購入したJR東日本株の含み益は少しずつ拡大している最中だ。
■JR東日本の月足チャート(18年11月~)
リコール問題からの立ち直りを期待
2009年に買い出動したトヨタ自動車<7203>は、「車好き」なリンゴさんにとって、特に思い入れのある銘柄となっている。
この頃は、同社が生産する『レクサス』が米国で大規模なリコールとなり、それがハイブリッド車の新型『プリウス』なども対象となるまでに深刻化していた時期だった。ハイブリッド車の好調がさらに勢いづくかと期待されていたトヨタにとっては大きなダメージとなり、09年3月期決算は、大幅な減収と赤字転落という惨憺たる結果となった。
だがリンゴさんは、モノづくりの分野でトヨタは世界でトップクラスの企業と見ていたことや、当時、社長に就任したばかりの豊田章男氏が米議会公聴会で構造上問題がないことを訴えた姿勢を評価する。「この問題が解決すれば、再浮上できる」との思いが起こり、ここも買いチャンスとして行動に出た。
同社株が期待通りの展開となるには時間がかかったが、リンゴさんの信念は揺るがず。その忍耐が花を咲かせることになったのは4年後の2013年。トヨタは業績回復とともに株価は大きくリバウンドしていく。ここで得たリターンを元手に新車を買うなど、収穫が大きかった。
■『株探プレミアム』で確認できるトヨタの業績成長性の長期推移
この他、赤字の時期を購入チャンスとしたパターンでは、09年頃に買った日立製作所<6501>がある。同社は07年3月期に最終赤字に転落後、10年3月期まで最終赤字が続いた。
リンゴの木さんが買い出動したのは、赤字決算の最終局面で、後から見れば絶妙なタイミングとなった。
■日立の月足チャート(07年8月~)
10年以上前に買った商社は大幅減益を好機に
今年(23年)の花形銘柄の一角、商社株については、リンゴさんは10年以上も前から着目して仕込んでいた。三菱商事のケースでは、09年3月期決算で最終損益が大幅減益に転じて以降、株価も軟調気味だったところを狙い、11年頃に買い出動する。
リンゴさんによると、このころの同社の配当利回りは5%程度と高水準で、これが株価の下支え役になると考えた。仮に業績がすぐに好転しなくても、長期で配当を得ていれば、自分の利益は積み重なると考えたうえでの行動だ。
同様の観点で、時期をずらして三井物産<8031>、住友商事<8053>も購入する。現在は、これらの持ち株が大きく花開き、リンゴさんの運用成績を大きく押し上げている。
■『株探プレミアム』で確認できる三菱商事の業績成長性の長期推移
■三菱商事の月足チャート(08年10月~)
また日本電信電話<9432>の場合は、19年3月期に経常減益となり、業績の不調から株価がくすぶっていた頃に購入した。その資金は、NTTが20年末の子会社化する際に株価上昇したNTTドコモの売却益を充てた。
三菱商事やNTTは、業績の低迷をカタリスト(株価変動のきっかけ)と捉え、株価の低迷期に購入したのが、成功につながった。
長期間の実績に注目
リンゴさんが、銘柄選択時に重視する主なポイントは、2つある。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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編集・構成/真弓重孝(株探編集部)、文・イラスト/福島由恵(ライター)
リンゴの木さん(ハンドルネーム・60代・男性)のプロフィール:
1987年のNTT上場時から投資を始めた大ベテランで、定年退職後も投資を続けている。スタイルは高配当&優良銘柄に長期投資するやり方で、総額2500万円の元手を1億3000万円にまで拡大させている。ダイエーの業績不振で食らった300万円のヤラレ以外は大きな負けはなく、主力銘柄は10~15銘柄に絞り、資産の7割程度をここに集中させている。学生時代から政治経済への関心が高く、日本経済新聞を愛読、そのほかビジネス誌やマネー誌などから吸収する時代の変化を、銘柄選びに生かしている。「株探-個人投資家大調査-2023春」の回答者で、投資スタイルは「バリュー重視」、日本株投資の腕前は「上級者」となる。
1987年のNTT上場時から投資を始めた大ベテランで、定年退職後も投資を続けている。スタイルは高配当&優良銘柄に長期投資するやり方で、総額2500万円の元手を1億3000万円にまで拡大させている。ダイエーの業績不振で食らった300万円のヤラレ以外は大きな負けはなく、主力銘柄は10~15銘柄に絞り、資産の7割程度をここに集中させている。学生時代から政治経済への関心が高く、日本経済新聞を愛読、そのほかビジネス誌やマネー誌などから吸収する時代の変化を、銘柄選びに生かしている。「株探-個人投資家大調査-2023春」の回答者で、投資スタイルは「バリュー重視」、日本株投資の腕前は「上級者」となる。
2020年に定年退職したリンゴの木さん(ハンドルネーム、以下、リンゴさん)は、毎朝、近所のコンビニで日本経済新聞を購入して、日々のニュースをチェックするのが日課になっている。
わざわざ歩いて出かけるのは、普段は部屋にこもりがちな生活で、運動不足になるのを避けるためだ。退職後に一旦はアルバイトに出たものの、時間や労力がかかる割には思ったほどの実入りはなかったことから、再び株式投資に本腰を入れる。
その判断は吉と出て、リンゴさんは定年退職後に株の運用資産を3倍以上に膨らますことに成功、億り人に昇格。目下の目標は年間に受け取る配当金を手取りで300万円を獲得することを目指している。
投資を始めて35年以上になるが、成績はほぼ負けなしという。成功の秘訣は、ゆったり&マイペース。これは前回登場し、多くの読者の関心を集めたマロンさん(ハンドルネーム)の手法と通ずるものがある。自身を「カメさん」と称したマロンさんに続く、カメさん2号的な存在のリンゴさんだが、もちろんまったく同じ手法ではない。
そのやり方とはどのようなものなのか。これから、見ていこう。
日本を代表する優良大型株で長期投資
リンゴさんが株式投資を始めたのは1987年。日本電信電話<9432>が政府保有株を放出して新規上場する際に、抽選に当たり取得したことがきっかけだった。
その元手は、給与で貯めた120万円。その後にボーナスや退職金の一部を加えたことで累積の元本は2500万円となり、これを累計で1億3000万円に膨らましている。運用益のうち1000万円は、サラリーマン時代に購入したマイホームの頭金に充てている。
こうした資産の拡大に貢献した主な銘柄は、東日本旅客鉄道<9020>、トヨタ自動車<7203>、三菱商事<8058>、日立製作所<6501>、日本電信電話<9432>などになる。
いずれも日本を代表する超有名企業で、リンゴさんはこうした企業ならば株価が紙くずになることは考えられないと、株価が軟調になった時を狙い、ここぞとばかりに買いを入れてきた。
この中で、最近仕込んだのがJR東日本だ。
JR東日本はコロナの凹みを狙う
同社は、2020年、コロナ禍で大きく売られたタイミングを好機と見なして買った銘柄だ。外出自粛の痛手をもろに食らった同社の株価は、6000円水準にまで下落する。長期の株価チャートを見ると、15年にマークした、高値1万2000円どころの約半分のかなり割安な水準であることがわかり、さらに大きく売られるリスクは限定的だと考えた。
QUICK・ファクトセットによれば同社の配当利回りは20年6月が2.2%、同7月が2.7%で、足元の1.4%より1.5倍ないし2倍程度の水準。当時に日経平均株価の配当利回りは2.0~2.2%だったことから、JR東の配当利回りが特段、魅力的な水準であったわけではなかった。
だが、リンゴさんは配当利回りより、将来の成長性に注目して投資を決めた。コロナ禍の需要の凹みは一時的で、コロナ禍が収束し経済の動きが正常化する過程では、リバウンドの動きが出ることに期待した。
また、JR東日本が首都圏に優良不動産を多く保有し、その有効活用が見込まれることにも目を向ける。今後、鉄道収入以外でも多目的に稼げる会社へと変貌していくストーリーを描き、長期的に有望だと考えた。
これらの見立てがハマり、最近10年の底値付近で購入したJR東日本株の含み益は少しずつ拡大している最中だ。
■JR東日本の月足チャート(18年11月~)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
リコール問題からの立ち直りを期待
2009年に買い出動したトヨタ自動車<7203>は、「車好き」なリンゴさんにとって、特に思い入れのある銘柄となっている。
この頃は、同社が生産する『レクサス』が米国で大規模なリコールとなり、それがハイブリッド車の新型『プリウス』なども対象となるまでに深刻化していた時期だった。ハイブリッド車の好調がさらに勢いづくかと期待されていたトヨタにとっては大きなダメージとなり、09年3月期決算は、大幅な減収と赤字転落という惨憺たる結果となった。
だがリンゴさんは、モノづくりの分野でトヨタは世界でトップクラスの企業と見ていたことや、当時、社長に就任したばかりの豊田章男氏が米議会公聴会で構造上問題がないことを訴えた姿勢を評価する。「この問題が解決すれば、再浮上できる」との思いが起こり、ここも買いチャンスとして行動に出た。
同社株が期待通りの展開となるには時間がかかったが、リンゴさんの信念は揺るがず。その忍耐が花を咲かせることになったのは4年後の2013年。トヨタは業績回復とともに株価は大きくリバウンドしていく。ここで得たリターンを元手に新車を買うなど、収穫が大きかった。
■『株探プレミアム』で確認できるトヨタの業績成長性の長期推移
この他、赤字の時期を購入チャンスとしたパターンでは、09年頃に買った日立製作所<6501>がある。同社は07年3月期に最終赤字に転落後、10年3月期まで最終赤字が続いた。
リンゴの木さんが買い出動したのは、赤字決算の最終局面で、後から見れば絶妙なタイミングとなった。
■日立の月足チャート(07年8月~)
10年以上前に買った商社は大幅減益を好機に
今年(23年)の花形銘柄の一角、商社株については、リンゴさんは10年以上も前から着目して仕込んでいた。三菱商事のケースでは、09年3月期決算で最終損益が大幅減益に転じて以降、株価も軟調気味だったところを狙い、11年頃に買い出動する。
リンゴさんによると、このころの同社の配当利回りは5%程度と高水準で、これが株価の下支え役になると考えた。仮に業績がすぐに好転しなくても、長期で配当を得ていれば、自分の利益は積み重なると考えたうえでの行動だ。
同様の観点で、時期をずらして三井物産<8031>、住友商事<8053>も購入する。現在は、これらの持ち株が大きく花開き、リンゴさんの運用成績を大きく押し上げている。
■『株探プレミアム』で確認できる三菱商事の業績成長性の長期推移
■三菱商事の月足チャート(08年10月~)
また日本電信電話<9432>の場合は、19年3月期に経常減益となり、業績の不調から株価がくすぶっていた頃に購入した。その資金は、NTTが20年末の子会社化する際に株価上昇したNTTドコモの売却益を充てた。
三菱商事やNTTは、業績の低迷をカタリスト(株価変動のきっかけ)と捉え、株価の低迷期に購入したのが、成功につながった。
長期間の実績に注目
リンゴさんが、銘柄選択時に重視する主なポイントは、2つある。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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