明日の株式相場に向けて=自動車周辺に出世株繚乱の気配
週明け10日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比198円安の3万2189円と5日続落となった。米株安でリスクを取りにくい環境下にあって、前週末に続きETF分配金捻出のための売り圧力が意識され、下値を模索する展開を余儀なくされた。途中、押し目買いで下げ渋る場面はあったが最後まで方向感が定まらず、午後2時半を回ってから大口のインデックス売りで下げ幅を広げた。
前週末の米国株市場では朝方発表の6月の米雇用統計が注目されたが、やや残念な内容だったといえる。非農業部門の雇用者数の増加ペースはコンセンサスを下回ったものの、失業率は想定通りで再び低下。更に平均時給についてはコンセンサスを上回る強い内容であり、総括すると7月25~26日のFOMCでの利上げはほぼ確実視される状況となった。7月の利上げは既に織り込み済みの感が強いが、年内はFOMCが7月を含めてあと4回残されている。このうち2回利上げがあるのかどうか、ここが今後の相場を左右する焦点となる。一時は年内利下げの可能性まで織り込んでいた米株市場だったが、現実とはだいぶ遊離した勝手解釈であったことがはっきりした。注意しなければならないのは今週12日発表の6月の米消費者物価指数(CPI)。現状はコア指数で前年同月比5.0%の伸び率がコンセンサス。これは前月の5.3%から減速する見通しだが、それでも7月FOMCでの利上げは避けられないとみられている。仮に上振れした場合は、相場の波乱要因となりやすい。これまで日本株は確変モードの外国人買いで上値を伸ばしていたが、現状は海外マネーの流入も一服場面にあるだけに、米株安の影響は以前より受けやすくなっている。
ただ、きょうも指数は安かったが、プライム市場ベースで値上がり銘柄数が値下がり数を上回った。個別株物色の波は途絶えていない。
オンリーワン企業や世界的なニッチトップ銘柄を物色する動きが足もと強まっている。前週末8日配信のトップ特集10銘柄では1銘柄を除き全面高。この強い資金の流れは同じ範疇にある他の銘柄にも及んでいる。ここで紹介されていないオンリーワン企業では、きょうは量子ドットレーザーを手掛けるQDレーザ<6613>が大幅高に買われた。4月20日以来となる年初来高値を更新するなど派手な上昇パフォーマンスを演じている。このほか、マイクロ波活用の製造プロセス開発やエンジニアリングで脚光を浴びたマイクロ波化学<9227>。今月4日に戻り高値形成後に下押ししているが、25日移動平均線への接近で押し目買いを誘導。ここは正念場だが、日足一目均衡表の雲の上空で踏ん張れれば、再び上値トライが期待できる。更にポリウレタンレザー専業で海外売上高96%という異色の合皮メーカー、ウルトラファブリックス・ホールディングス<4235>もニッチトップの一角。2200~2300円近辺のもみ合いは上放れの踊り場となるかどうかに着目したい。
また、一方で低PBR銘柄のテーマ買いも継続中だ。超低PBRの銘柄群といえば地銀株が際立った存在だが、財務状況や再編の絡みがあって個別にはなかなか選別が難しい面もある。一方、地銀セクター以外で良質な低PBR銘柄を探すと、共通項として挙げられるのは“自動車周辺”ということになる。自動車は半導体不足の解消で徐々に生産回復の方向にあり、自動車部品メーカーなどの周辺企業にとって収益環境が良化していることもポイントである。業界一丸となって取り組む電気自動車(EV)シフトに対応した動きも手掛かり材料として機能しやすく、相次いで人気株が輩出されている。
自動車周辺の低PBR銘柄でチェックしておきたいのは、まず自動車業界を需要先に電子計測機器を手掛ける小野測器<6858>が挙げられる。EV向けで同社の技術力に耳目が集まっており、ここ動意含みだが400円台の株価は値ごろ感十分だ。また、日産向け主力の駆動系自動車部品会社のユニバンス<7254>や、トヨタグループ向けで高い実績を持つ自動車用防振ゴム大手の住友理工<5191>などにも目を配っておきたい。
あすのスケジュールでは、6月のマネーストックが朝方取引開始前に日銀から発表される。このほか、午前中に5年物国債の入札が予定されている。また、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が12日までの日程で開催され、岸田文雄首相が訪欧する。海外では6月の英失業率のほか、7月の欧州経済研究センター(ZEW)の独景気予測指数などに、マーケットの関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年07月10日 18時28分
前週末の米国株市場では朝方発表の6月の米雇用統計が注目されたが、やや残念な内容だったといえる。非農業部門の雇用者数の増加ペースはコンセンサスを下回ったものの、失業率は想定通りで再び低下。更に平均時給についてはコンセンサスを上回る強い内容であり、総括すると7月25~26日のFOMCでの利上げはほぼ確実視される状況となった。7月の利上げは既に織り込み済みの感が強いが、年内はFOMCが7月を含めてあと4回残されている。このうち2回利上げがあるのかどうか、ここが今後の相場を左右する焦点となる。一時は年内利下げの可能性まで織り込んでいた米株市場だったが、現実とはだいぶ遊離した勝手解釈であったことがはっきりした。注意しなければならないのは今週12日発表の6月の米消費者物価指数(CPI)。現状はコア指数で前年同月比5.0%の伸び率がコンセンサス。これは前月の5.3%から減速する見通しだが、それでも7月FOMCでの利上げは避けられないとみられている。仮に上振れした場合は、相場の波乱要因となりやすい。これまで日本株は確変モードの外国人買いで上値を伸ばしていたが、現状は海外マネーの流入も一服場面にあるだけに、米株安の影響は以前より受けやすくなっている。
ただ、きょうも指数は安かったが、プライム市場ベースで値上がり銘柄数が値下がり数を上回った。個別株物色の波は途絶えていない。
オンリーワン企業や世界的なニッチトップ銘柄を物色する動きが足もと強まっている。前週末8日配信のトップ特集10銘柄では1銘柄を除き全面高。この強い資金の流れは同じ範疇にある他の銘柄にも及んでいる。ここで紹介されていないオンリーワン企業では、きょうは量子ドットレーザーを手掛けるQDレーザ<6613>が大幅高に買われた。4月20日以来となる年初来高値を更新するなど派手な上昇パフォーマンスを演じている。このほか、マイクロ波活用の製造プロセス開発やエンジニアリングで脚光を浴びたマイクロ波化学<9227>。今月4日に戻り高値形成後に下押ししているが、25日移動平均線への接近で押し目買いを誘導。ここは正念場だが、日足一目均衡表の雲の上空で踏ん張れれば、再び上値トライが期待できる。更にポリウレタンレザー専業で海外売上高96%という異色の合皮メーカー、ウルトラファブリックス・ホールディングス<4235>もニッチトップの一角。2200~2300円近辺のもみ合いは上放れの踊り場となるかどうかに着目したい。
また、一方で低PBR銘柄のテーマ買いも継続中だ。超低PBRの銘柄群といえば地銀株が際立った存在だが、財務状況や再編の絡みがあって個別にはなかなか選別が難しい面もある。一方、地銀セクター以外で良質な低PBR銘柄を探すと、共通項として挙げられるのは“自動車周辺”ということになる。自動車は半導体不足の解消で徐々に生産回復の方向にあり、自動車部品メーカーなどの周辺企業にとって収益環境が良化していることもポイントである。業界一丸となって取り組む電気自動車(EV)シフトに対応した動きも手掛かり材料として機能しやすく、相次いで人気株が輩出されている。
自動車周辺の低PBR銘柄でチェックしておきたいのは、まず自動車業界を需要先に電子計測機器を手掛ける小野測器<6858>が挙げられる。EV向けで同社の技術力に耳目が集まっており、ここ動意含みだが400円台の株価は値ごろ感十分だ。また、日産向け主力の駆動系自動車部品会社のユニバンス<7254>や、トヨタグループ向けで高い実績を持つ自動車用防振ゴム大手の住友理工<5191>などにも目を配っておきたい。
あすのスケジュールでは、6月のマネーストックが朝方取引開始前に日銀から発表される。このほか、午前中に5年物国債の入札が予定されている。また、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が12日までの日程で開催され、岸田文雄首相が訪欧する。海外では6月の英失業率のほか、7月の欧州経済研究センター(ZEW)の独景気予測指数などに、マーケットの関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2023年07月10日 18時28分