翻訳センター Research Memo(6):2023年3月期は主力の翻訳事業の業績貢献により、過去最高益を達成
■業績動向
1. 2023年3月期の業績
翻訳センター<2483>の2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比5.9%増の10,947百万円、営業利益が同14.4%増の928百万円、経常利益が同14.1%増の960百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同19.8%増の686百万円と堅調に増収増益を達成した。各利益に関しては、コロナ禍前のピークを上回り、過去最高益となった。
売上高に関しては、コアビジネスである翻訳事業及び通訳事業が増収をけん引した。翻訳事業では前期比628百万円増(前期比8.0%増)となった。特許分野は、主要顧客である特許事務所や企業の知的財産関連部署からの受注が好調に推移したこと等により同391百万円増(同16.9%増)となった。医薬分野では、メガファーマ各社との取り組みは順調に進捗しているものの、試験スケジュールの影響やCRO(医薬品開発受託機関)からの受注減少などにより同107百万円減(同3.7%減)となった。工業・ローカライゼーション分野では、製造業の顧客を中心に堅調に推移したことに加え、情報通信関連企業から大型案件を獲得したことから同348百万円増(同17.2%増)となった。金融・法務分野では、東証の市場再編に伴いIR関連文書の受注が増加した一方、前期に獲得した大型案件の反動減により、同4百万円減(同0.7%減)となった。
派遣事業においては、語学スキルの高い人材への新規受注は堅調に推移したものの、派遣期間終了者の増加に伴い常用雇用者数が前期を下回ったことから同93百万円減(同7.6%減)となった。通訳事業では、コロナ禍から回復し、主要顧客である医薬品関連会社や精密・通信機器メーカー等からの旺盛な受注、外資コンサルティング会社からの安定した受注に加え、複数の金融機関からの大型会議案件の獲得もあり、同198百万円増(同30.3%増)と大幅に伸ばした。コンベンション事業では、サービスのデジタル化に伴う案件の規模縮小と競合激化の影響により同66百万円減(同31.0%減)となった。
売上総利益は前期比3.6%増、売上総利益率は46.4%と同1.0ポイント低下したものの、高い水準を維持している。これは機械翻訳や翻訳支援ツールを積極的に活用し、翻訳制作の生産性向上に取り組んだ成果である。販管費は同1.5%増と、微増にとどまった。結果として、営業利益は、増収及び売上総利益増のインパクトが大きく同14.4%増の928百万円となり、過去最高益を達成した。セグメント利益では、翻訳事業が同173百万円増、通訳事業が同44百万円増となり増益に貢献した。
自己資本比率75%超。無借金経営を継続。短期及び中長期の安全性が極めて高い
2. 財務状況と経営指標
2023年3月期末の総資産は前期末比314百万円増加の7,486百万円となった。そのうち流動資産は299百万円増加となった。現金及び預金が234百万円、受取手形及び売掛金が62百万円それぞれ増加したことが主な要因である。固定資産は14百万円増加となった。投資その他の資産の増加が主な要因である。
負債合計は前期末比267百万円減少の1,813百万円となった。そのうち流動負債は273百万円減少となった。未払金及び未払法人税等が減少したことが主な要因である。固定負債には大きな変化はなかった。なお同社は無借金経営を継続しており、有利子負債はない。
経営指標では、流動比率で408.5%、自己資本比率で75.7%とともに高い水準にあり、短期及び中長期の財務の安全性は高いと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
《SI》
提供:フィスコ