ARM Research Memo(6):2024年3月期も2ケタ成長の増収増益を予想(1)
■今後の見通し
1. 2024年3月期の連結業績見通し
アドバンテッジリスクマネジメント<8769>の2024年3月期の連結業績は、売上高が前期比13.6%増の7,280百万円、営業利益が同53.6%増の850百万円、経常利益が同59.0%増の850百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同48.3%増の560百万円の見込みであり、2ケタ成長の増収増益を予想している。2023年5月にバージョンアップした「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」をきっかけにした顧客への複数サービス提供の総合提案営業を引き続き推進する予定である。企業の人的資本経営推進や健康経営への対応ニーズが高まっているため、引き続き堅調に推移していくものと同社は見ている。
2. 中期経営計画
同社は、2021年5月に2022年3月期から2024年3月期を対象期間とした「中期経営計画2023」を策定した。「ウェルビーイング領域におけるNo.1プラットフォーマーへ」を骨子とし、「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」を基軸に顧客へ複数サービスの提案を推進し、ウェルビーイングの事業領域を拡大することを目標としてきた。
(1) 中期経営計画での取り組み
ウェルビーイング領域における課題解決をSaaSで展開し、既存事業の深化と主力事業の拡大を進めることで、ソリューション提供のリーディングカンパニーを目指す。同社は顧客の生産性向上のため、「人々が安心して働ける環境」と企業の「活力ある個と組織」を創り出すことを経営ビジョンにした事業活動を進めてきた。
具体的には、DXプラットフォームの展開、BtoBtoE領域への進出、資本提携・オープンイノベーションの加速、人材育成強化・健康経営推進、ITケイパビリティの強化を重点施策とした。
(a) DXプラットフォームの展開
同社は、同計画のコアとなるDXプラットフォームとして2021年7月に「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」を開発し提供を開始している。それにより、従来のサーベイ(ストレスチェックやエンゲージメントを測定する診断ツール)だけではなく、その先の多様化する企業ニーズの可視化から課題解決・効果検証まで活用できる統合プラットフォームの構築を実現し、単価向上及び新規契約の拡大を進めてきた。
今後は、「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」のアップデート版であるフェーズ3.0をリリースする予定で、同商品を導入することで、他社のストレスチェックデータも直接取り込むことができるようになるため、新規顧客の開拓が推進される。また従業員画面の拡充により、従業員へのダイレクトなアプローチが可能になり、個人に合わせたソリューションを提示する自動レコメンド機能が搭載された。加えて、2023年3月期に大手企業をターゲットにした「エンタープライズ営業部門」を新設し、個別商材のニーズを発掘した際のクロージング営業やプロダクト営業の総合提案を強化する。同部門に顧客獲得のためのマーケティング投資を集中させ、同営業部門から各プロダクトの営業部門へつなぐことで最適化した営業を行う。
(b) BtoBtoE領域への進出
BtoBtoEは、同社(=Business)が企業(=Business)にサービスを提供することで、同時に従業員(=Employee)にもサービスを提供するビジネスモデルである。従業員のエンゲージメントを向上させるため、ウェルビーイング領域の福利厚生サービスの提供を軸に事業拡大を目指してきた。
2022年4月にリソルライフサポートと新時代の福利厚生の新サービスとして「アドバンテッジWellGage」の提供を開始した。「エンプロイーエンゲージメント」と「ワークエンゲージメント」の両方に向上効果がある。まずは、ストレスチェックの「アドバンテッジ タフネス」・「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」・福利厚生サービス・GLTDを一つのパッケージにした「福利厚生制度充実パッケージ」をリリースした後、2023年4月には「アドバンテッジ タフネス」・「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」・福利厚生をまとめた「コアパッケージ」、「アドバンテッジ タフネス」・「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」・福利厚生・eラーニングをまとめた「改善強化パッケージ」の提供も追加した。
(c) 資本提携・オープンイノベーションの加速
同社は、協業・オープンイノベーション・既存事業の成長と新規事業の創出の目的により、経営企画部にCVC※1機能・管理機能を設置し、投資先の発掘・評価、投資後の評価・モニタリング、バリューアップの加速を推進してきた。有望なスタートアップ企業とのシナジーにより、社会貢献度の高い事業を創出することを目的としている。同社の投資検討の領域は、「健康経営」「両立支援」「HRテック※2」「システム開発」の方針で、投資対象は、アーリーステージからミドルステージまでのベンチャー企業である。マインドフルネス、健康増進、エンゲージメント、育児・介護分野で時価総額100~2,000百万円規模を想定しており、想定投資額は、1社当たり数千万から100百万円程度のマイナー投資である。
※1 投資目的ではない同社のような事業会社が、ベンチャー企業に投資することを指す。
※2 人事領域の業務における課題をITによって解決するサービス領域のこと。
2021年3月にはリソルライフサポートと資本・業務提携を締結し、BtoBtoEやBtoC領域の進出に向けた基礎づくりを行い、「アドバンテッジWellGage」のリリースにつなげた。2021年10月には、ウェルネス・コミュニケーションズ(株)と資本・業務提携を締結し、ウェルネス・コミュニケーションズが開発した健康管理クラウドシステム「Growbase」のOEM提供を受けている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
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提供:フィスコ