キャリアリンク Research Memo(4):地方自治体向け案件の増加により事務系人材サービス事業が大幅増収増益に
■キャリアリンク<6070>の業績動向
2. 事業セグメント別の動向
(1) 事務系人材サービス事業
事務系人材サービス事業の業績は、前期(13カ月決算、以下同様)と比較して売上高で23.0%増の45,666百万円、営業利益で同73.6%増の7,381百万円と大幅増収増益となった。営業利益率もBPO請負案件の業務効率化が進んだことにより前期の11.5%から16.2%と大きく上昇した。
事業部門別の動向を見ると、BPO関連事業部門の売上高は前期比31.6%増の35,718百万円となった。地方自治体及び大手BPO事業者等からのマイナンバー・マイナポイント関連や臨時給付金関連、福利厚生関連案件を中心に、スポット案件を含むBPO請負案件の受注が好調に推移したことが要因だ。また、未取引であった地方自治体の開拓に積極的に取り組んだ結果、取引地方自治体数が拡大したことも増収に寄与した。増収要因の大半はこれら地方自治体案件の増加によるもので、事務系人材サービス事業のうち地方自治体向け(BPO事業者経由含む)の売上構成比は6割を超えたものと見られる。
BPO案件の受注拡大の背景には、同社の安定した運用力が官公庁やBPO事業者から高く評価されたことに加えて、BPO案件の設計・構築や営業開発、システム開発等を行う中核人材の採用が順調に進んだことが挙げられる。中核人材の在籍者数は期中平均で前期の204名から288名に増加し、期末時点では338名と期初計画の300名を超過した。これら中核人材の増員が進んだことにより、BPO案件数も前期の107件から141件に増加した。また、協業先やJV等取引先数についても前期比50%増の36社と順調に増加した。
取引先地方自治体数については、新規に33の地方自治体と取引を開始したことにより、2023年3月期は112※1まで増加し、取引先地方自治体数のリピート率も77%と高水準を維持した。また、5年平均NRR※2も112.8%と前期の110.8%からさらに上昇し、既存取引先における売上高も業務量拡大または新規業務の獲得によって増加した。BPO関連事業におけるスポット案件の売上比率は27%と前期よりもやや上昇した。BPOの運用実績が評価されたことで引き合いが増加したほか、2022年夏以降に福利厚生関連案件を中心とした大型スポット案件を複数の地方自治体から受注したことが要因だ。
※1 2020年2月期から2023年3月期の間で取引実績のあった地方自治体数(派遣先も含む)。2019年2月期から2022年3月期は79地方自治体だった。政令指定都市では20のうち16の政令指定都市と取引実績があった。
※2 NRR(Net Revenue Retention)=前年度に取引のあった顧客からの当年度売上高合計÷前年度の同顧客からの売上高合計。
同社はBPO関連の業容拡大に向けて、営業拠点やBPOセンターの開設についても積極的に進めてきた。営業拠点としては、2022年6月に名古屋、同年11月に青森、秋田、盛岡、山形、同年12月に奈良、2023年1月に滋賀、同年2月に富山、金沢、静岡、同年3月に堺東に分室を設置した。また、BPOセンターは2022年12月に仙台、2023年1月に福島、同年3月に千葉に新設した。BPOセンターについては受注案件が確定してから設置するため、稼働ロスが生じて収益が悪化するリスクは無い。同社は2023年4月以降も中核都市とその周辺での受注拡大を目的に、拠点整備を進めていく計画となっている。
CRM関連事業部門の売上高は前期比5.8%増の4,457百万円と増収基調が続いた。前年同期間との比較だと2ケタ増収だったと見られる。札幌、福岡でテレマーケティング事業者から福利厚生関連、通信販売、金融関連案件等の受注が増加した。また、首都圏や関西圏では既存取引先である大手テレマーケティング事業者などから既存業務に加えて、官公庁を事業主とする新規業務の受注が順調に推移した。
一般事務事業部門の売上高は前期比4.7%減の5,490百万円となったが前年同期間比では増収だったと見られる。地方自治体向けの総務関連及び住民サービス関連業務など幅広い分野で新規派遣案件を受注した。
(2) 製造系人材サービス事業
製造系人材サービス事業の売上高は前期比19.4%増の5,483百万円、営業利益は同29.0%増の202百万円と増収増益となり、過去最高を連続更新した。既存拠点及び2022年3月期に開設した6拠点において既存取引先からの受注が拡大したほか、新規取引先の開拓も進んだ。食品加工部門、製造加工部門ともに好調で、食品加工部門では惣菜・冷凍食品製造等、製造加工部門では機械、電機、輸送機製造等の受注が拡大した。増収効果により営業利益率も前期の3.4%から3.7%と若干上昇した。
(3) 営業系人材サービス事業
営業系人材サービス事業の売上高は前期比2.6%増の1,092百万円、営業損失は2百万円(前期は8百万円の損失)となった。コロナ禍による行動制限がほぼ撤廃されたことにより、新規取引先の開拓と既存取引先でのシェア拡大に取り組んだ。四半期ベースで見ると、売上高はずっと右肩上がりであり、利益段階でも第4四半期より黒字化するなど回復基調となっている。現状では、訪問勧誘業務に「電話及びWEB等による勧誘のコールセンター業務」を併用した複合業務案件で受注することが多くなってきたことから、2024年3月期よりBPO関連事業部門に統合している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
提供:フィスコ