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シナネンHD Research Memo(8):主力事業は順調、減益要因は電力事業の価格転嫁による遅れ


■業績動向

1. 2023年3月期の業績動向
シナネンホールディングス<8132>の2023年3月期の業績は、売上高342,254百万円(前期比18.3%増)、営業利益895百万円(同63.9%減)、経常利益1,227百万円(同62.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益478百万円(同80.8%減)と増収減益となった。主力の石油類やLPガス、戦略分野の非エネルギー事業は総じて順調だったものの、電気の価格転嫁が遅れたことなどにより売上総利益は減益となった。また、韓国大型陸上風力発電事業に関連する特別損失の発生により親会社株主に帰属する当期純利益の減益幅は大きくなった。

日本経済は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響から持ち直しの動きが見られた一方、世界的な資源価格の高騰やウクライナ情勢を端緒とする地政学的リスクの顕在化、急激な円安など、引き続き予断を許さない状況が続いた。国内のエネルギー業界においては、主力の石油類やLPガスの仕入価格への影響が大きい原油価格・プロパンCPが、夏場以降の世界的インフレを背景とした景気後退懸念による需要減のためやや下落基調に転じたものの、ロシア産原油の供給を巡る不透明感が根強く、引き続き高値圏で推移した。また、電力の卸市場価格も、節電要請が夏季と冬季に発出される厳しい需給動向を背景に12月まで高値圏で推移したものの、年明け以降は需要期の暖冬で販売が伸び悩み、スポット価格が前年同期比で4割程度低下するなど、非常に見通しにくい状況が続いた。さらに長期的な観点でも、2023年3月に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)から「急速かつ大幅で、ほとんどの場合即時の温室効果ガスの排出削減が必要」とする第6次評価報告書が採択されるなど、同社を取り巻く環境は変化が激しくなっている。

このような環境のなか、2023年3月期に、2027年度の創業100周年での飛躍に向けた基盤整備の期間と位置付けた第二次中期経営計画の最終年度を迎えた。第二次中期経営計画の期間中は、既存事業の選択と集中、低効率資産の活用・売却による資本効率の改善を推進するとともに、シェアサイクル事業など新規事業への戦略投資やDX推進に向けたIT関連投資、人財関連投資などを計画に沿って実行した。この結果売上高は、原油価格・プロパンCPの高騰に伴う石油類やLPガスの販売単価の上昇により、前期比2ケタの増加となった。一方、石油類やLPガスでは価格転嫁が進んだものの、電力事業で、調達コストが高止まりするなか冬場の需要増加を見越して調達した相対電源価格の価格転嫁が遅れたことなどにより、売上総利益は減少することとなった。

営業利益と経常利益については、売上総利益の減少に加えて、経済の正常化に伴って戻りつつある旅費交通費や通信費、中長期成長を睨んで先行投資した人件費やIT関連投資など販管費が増加した影響で、前期比2ケタの減少となった。親会社株主に帰属する当期純利益については、2020年から取り組んできた韓国の2ヶ所の大型陸上風力発電事業において、子会社のDONG BOK ENERGY CO.,LTD.については、建設予定地の都市計画条例改訂により当初見込んでいた計画及び開発が著しく困難になったと判断したこと、関連会社のGoheung Wind Power Co., Ltd.については、開発許可が進まないことから株式売却の検討を開始したことにより、保有する固定資産の減損処理など2,762百万円の特別損失を計上、営業利益や経常利益を上回る幅の減少となった。なお、期初計画との比較では、売上高で32,254百万円の超過達成、営業利益で1,605百万円の未達となったが、売上超過達成は石油類やLPガスの販売単価上昇、営業利益の未達は電力の調達コスト高に対応した価格転嫁の遅れや販管費の増加が主因である。

各製品の差益の状況に関してだが、石油類は、2022年3月期から2023年3月期第2四半期にかけてコロナ禍やウクライナ情勢を反映して原油価格が大きく上昇し、それまでに低価格で調達していたスポット在庫の差益が大きくなったが、第3四半期以降は円安が進行するなかでスポット在庫を確保しづらくなったため、差益は例年の水準に戻ってきている。LPガスについては、プロパンCPの高騰に2022年4月に燃料費調整制度の廃止で対応したが、販売価格の改定が遅れたこと、円安によって改定幅が想定以上に広がったことから、価格改定を2022年8月と12月?1月の2回に分けざるを得ず、差益が悪化した。しかし、需要期の12月以降は価格改定がフル効いており、他社の値下げ次第ではあるが、2023年4月~11月は差益が広がる見込みとなっている。電気については、価格上昇を見込んでロングポジションをとったものの、夏冬の需要期の節電要請や暖冬により需要が抑制され、また、年契約のBtoB事業で価格改定が遅れがちとなったため、非常に差益を取りづらい状況が続いたが、2023年夏冬の需要期には適正に戻る見込みである。

なお、同社はニーズが強く比較的採算のよい脱炭素エネルギーへのシフトを進めているが、今般、グローブライド<7990>本社と東京工場向けに、オフサイトコーポレートPPA※の太陽光発電の供給を開始した。オフサイトコーポレートPPAで不足する分については再生可能エネルギー発電所由来の非化石証書を付与することで100%再生可能エネルギーの使用を実現する。

※オフサイトコーポレートPPA(Power Purchase Agreement):需要家が発電事業者から再生可能エネルギーの電力を長期に購入する契約。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《SI》

 提供:フィスコ

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