高島 Research Memo(4):2023年3月期は増収増益、当期純利益は過去最高を更新
■業績動向
1. 2023年3月期の業績概要
高島<8007>の2023年3月期の連結業績は、売上高で前年同期比7.6%増の79,683百万円、営業利益で同14.0%増の1,764百万円、経常利益で同5.4%増の1,939百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同22.3%増の1,585百万円となった。電子・デバイスセグメントが想定を上回る好業績を残したこと、建材セグメントが堅調に業績を伸ばしたことなどを受けて、前期比で大幅な増収増益となった。両事業が好調だったことに加えて、適合計画書で推進する政策保有株式の縮減によって投資有価証券売却益が発生したこと、(株)信防エディックスの買収に伴い、負ののれん発生益が発生したことを受けて、当期純利益は過去最高を更新した。
セグメント別の業績は以下のとおりである。
(1) 建材セグメント
売上高は前年同期比5.9%増の44,511百万円、セグメント利益は同2.2%増の611百万円となった。地盤改良工事等に関しては低調だったものの、建築資材に関しては、マーケットニーズが好調だったことを受け、堅調に推移した。太陽エネルギー関連分野に関しては、半導体不足を受けて太陽光パネル及び周辺機器の供給遅延の影響を受けたものの、下期には供給遅延も回復し、前年同期比で増収となった。断熱資材関連分野、住宅資材関連分野は総じて堅調だった。利益面に関しては、コロナ禍から営業活動が再開してきたこと、システム投資を実施したこと、新エネルギー流通システムのM&Aに伴う費用が発生したことを受け、販管費が増加したものの、増収で吸収した。
(2) 産業資材セグメント
売上高は前年同期比2.4%減の17,677百万円、セグメント利益は同91.4%減の23百万円となった。樹脂資材関連分野に関しては、半導体不足の影響を受け、顧客である自動車市場の回復が遅れたことにより、低調に推移したものの、成型加工品の受注拡大により売上高は前年を上回った。繊維資材関連分野は値上げの影響によって市場のニーズが停滞したことにより、低調に推移した。こうしたなか、業績拡大に向けた営業活動の増加、システム投資の増加、信防エディックスのM&A実施に伴う費用の発生により販売費及び一般管理費が増加したことにより、減益となった。
(3) 電子・デバイスセグメント
売上高は前年同期比26.1%増の17,301百万円、セグメント利益は同77.4%増の1,014百万円と大幅な増収増益を達成した。電子機器関連分野は、主力市場である国内民生電子機器市場が前年比で3年連続マイナスとなるなど厳しい状況だった。一方で、国内白物家電市場は2年ぶりに前年比でプラスに転じるなど、好調に推移し、業績拡大に寄与した。市場が好調ななか、新規受注を確実に増加させたこと及び円安による業績の嵩上げもあり、業績を押し上げた。
2. 財務状況
2023年3月期末時点の資産合計は、前期末比7,884百万円増の53,060百万円となった。このうち流動資産は同6,017百万円増の41,440百万円となった。主に、売掛金が2,592百万円、電子記録債権が1,127百万円、商品及び製品が1,071百万円それぞれ増加した。固定資産は同1,866百万円増の11,619百万円となった。主に有形固定資産の機械装置及び運搬具が302百万円、のれんが1,069百万円それぞれ増加した。
負債合計は前期末比6,821百万円増の33,520百万円となった。このうち流動負債は、同6,561百万円増の27,585百万円となった。主に短期借入金が2,524百万円、支払手形及び買掛金が1,153百万円、電子記録債務が1,870百万円それぞれ増加した。固定負債は、固定負債のその他が291百万円増加したこと等により、同260百万円増の5,935百万円となった。純資産合計は同1,062百万円増の19,539百万円となった。主に配当金の支払いにより利益剰余金が895百万円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が1,585百万円増加した。
安全性については、自己資本比率が36.8%(前期末は40.9%)、流動比率が150.2%(同168.5%)、固定比率が59.5%(同52.8%)となった。自己資本比率は前期末比4.1ポイント低下したが、新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書に基づき、外部資金を活用した投資を実行していることによる。有利子負債を含めた外部資金を有効に活用した投資により、ROEが高まるものと弊社では見ている。なお、流動比率及び固定比率は健全で、将来の成長に向けた投資を積極的に行いつつ、財務の健全性を維持していると言える。
2023年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは700百万円の収入となった。主に、税金等調整前当期純利益の計上、仕入債務の増加により増加し、一方で売上債権及び契約資産の増加により減少したこと等によるものである。投資活動によるキャッシュ・フローは1,448百万円の支出となった。主に、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得により減少したこと等によるものである。財務活動によるキャッシュ・フローは1,059百万円の収入となった。主に短期借入金の増加等によるものである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
《SI》
提供:フィスコ