ステップ Research Memo(2):プロ教師による質の高い学習指導に定評(1)
■会社概要
1. 事業内容
ステップ<9795>は1975年の創業以来、神奈川県内で小中学生、現役高校生を対象とした学習塾「STEP」を展開し、2016年3月からは新たに学童保育部門「STEPキッズ」(小学1~4年生)を開設している。2023年4月末時点で、小中学生部門142スクール(うち24スクールはハイレベルな指導を行う「Hi-STEP」)、高校生部門15校、個別指導部門1校、学童保育部門4校、ステップジュニアラボ1校の合計163校を展開している。生徒総数もスクールの新設とともに年々増加し、2023年4月末時点で3.1万人を超えた。売上高の約80%を小中学生部門で占め、県内の公立進学校トップ19校の合格者数では他塾を圧倒する実績を誇り、その学習指導力の高さと堅実経営に定評がある。
2. 同社の特徴と強み
同社の特徴と強みは、「教師のプロ化による質の高い学習指導」「ドミナント展開と口コミ情報による効率的なマーケティング戦略」「高い収益性・安定性」に集約することができる。
(1) 教師のプロ化による質の高い学習指導
同社は「教師は学習指導のプロでなければならない」という考え方のもと、教師を正社員化し、授業内容の専門化・高技術化に努め、その学習指導力によって高い進学実績を積み上げることを成長基盤としてきた。2023年4月末時点における全教師数731名のうち正社員教師は701名で、そのほか専任講師(フェロー・嘱託職員)23名、非常勤講師7名(うち3名は英語科ネイティブ講師)の構成となっており、正社員比率は95.9%とほぼ100%がプロの教師と呼べる指導体制となっている。また、教師が生徒獲得のための勧誘活動(電話勧誘やポスティングなど)を行うこともなく、学習指導に専念できる体制を整えていることも特徴となっている。
各教師においては「日々指導技術の研鑽を怠らず、一人ひとりの生徒と向き合い、学力向上に真摯に取り組んでいく」ことを基本方針として、研修会なども定期的に行いながらスキルアップに努めている。具体的には、新人・2年目研修をグループで隔週4時間、個人別に隔週2時間実施しているほか、地域別研修も隔週で金曜日に2時間半、必要に応じてフォローアップ研修や勉強会を隔週で火曜日に2時間実施し、教務力の向上に努めている。
こうした教師のプロ化による質の高い学習指導によって、2023年春の高校入試では神奈川県内の公立高校トップ19校で2,499名(前年比104名増)の合格者を輩出し、全塾中でトップの実績を残した。また、県内公立高校に合格したステップ生の42.8%(前年比横ばい)がトップ校に合格したことになる。トップ19校のうち17校(前年15校)で、塾別の合格者数でトップとなっており、県内最難関校の横浜翠嵐高校についても2年ぶりにトップに返り咲いている。また県内特有の試験制度となる特色検査※1(記述型)を実施した19校のうち17校(同15校)で塾別最多合格者数を出すなど、神奈川県内の公立トップ校を目指す学習塾としてのブランド力がさらに強固なものとなっている。学習指導の質の高さもさることながら、過去の入試問題の分析・対策能力や的確な進学指導力なども高い合格実績につながっている※2。県内の競合大手としては、臨海セミナー、湘南ゼミナールなどがある。いずれも公立トップ19校の合格者数では、同社の半分以下の水準となっており、年々その差も開いてきている。さらに、「STEP」生徒の通学圏内で男女共学校として最難関と位置付けられる東京学芸大学附属高校(国立)でも、188名(同5名増、帰国生と内部進学除く。正規合格者132名は同総数266名のうち49.6%を占める)の合格者を輩出し、同社によると15年連続で全塾中トップの合格者数になったと言う。
※1 特色検査:神奈川県公立高校入試において、共通試験や面接とは別に行う学力検査のこと。主に進学校が導入しており、問題を解決する粘り強い思考力等を把握するための科目横断型の試験。
※2 合格率も他を圧倒している。例えば、横浜翠嵐高校ではステップ生が74.2%だったのに対してその他受験者は48.7%と20%以上の開きがあった。
一方、現役高校生向けの高校生部門に関しても、2023年春の大学受験合格者数は国公立大学で324名(前年比17名増)、早慶上智大学で460名(同8名減)、MARCH及び東京理科大学で1,992名(同34名増)となり、延べ合計では2,776名(同43名増)と過去最高を更新した。最難関の東京大学合格者数も8名(同5名減)と減少したものの継続して現役高校生での合格者を輩出している。これら合格者の大半は公立高校生であり、公立高校から難関大学に現役合格できる塾としてのブランド力も年々高まっている。以前は高校1年生の入塾生は中学部門のステップ生が大半を占めたが、今ではステップ生以外の入塾希望者も増えており、1年生のクラスの大半が4月時点で早々に定員に達するほどの人気ぶりとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《AS》
提供:フィスコ