テラスカイ Research Memo(7):ソリューション事業は2ケタ増収増益、製品事業は先行投資で赤字継続
■テラスカイ<3915>の業績動向
2. 事業セグメント別の動向
(1) ソリューション事業
ソリューション事業の売上高は前期比26.2%増の14,088百万円、セグメント利益(営業利益)は同14.3%増の1,945百万円と過去最高を更新した。売上高は、Salesforceを中心としたクラウドサービスの導入開発案件や、BeeXが手掛けるSAPのクラウド移行案件の需要が旺盛だったこと、またテラスカイ・テクノロジーズの派遣事業も未経験者の採用・育成が進み、人員が前期末の75名から200名弱まで増加し売上が増加した。利益面では、新設子会社の損失や人件費及び採用費、広告宣伝費の増加を増収効果で吸収し2ケタ増益となった。なお、収益認識会計基準等の適用による影響額は、従来基準と比較して売上高で116百万円の減少、セグメント利益で35百万円の増加要因となっている。
Salesforce関連については、首都圏の大企業向け(従業員数で2千名以上)の初期導入がここ数年でほぼ一巡したと見られるが、導入顧客先での追加開発案件の需要が続いているほか、地方企業からの新規案件も増え始めており、旺盛な需要が続いているとの状況に変わりない。Salesforceの認定資格取得企業も増加し、比較的難易度が低い分野において受注競争が激化している可能性もあるが、同社が主戦場とする大企業向けに関しては、顧客の多様な要望に応えられるだけの豊富な知見やノウハウが必要とされるため、同社を含めて対応できる企業は限られ、受注環境も良好な状況が続いていると見られる。なお、テラスカイ・テクノロジーズでは未経験者の採用を積極的に行っており、教育・研修により認定資格を取得した段階で現場に派遣しているが、旺盛な需要を背景にフル稼働の状況が続いている。
量子コンピュータ関連の研究開発を行うQuemixでは、ライセンスビジネスで収益化を図るため、アルゴリズムの開発を進めており(特許も取得)、これらの研究成果を世界的な物理学会等でも発表するなど業界内での認知度も着実に向上している。開発したアルゴリズムを古典コンピュータでも利用できる材料計算ソフト「Quloud-RSDFT」のクラウドサービスの提供も開始し、企業やアカデミーなど複数のユーザーが利用している。同社の業績が本格的に収益貢献し始めるのは量子コンピュータの実用化が進んでからとなりそうだが、潜在的なポテンシャルは大きく今後の動向に注目したい。
リベルスカイはGCPの構築やビッグデータ分析・AIコンサルティングサービスなどを展開している。規模はまだ小さいものの2023年2月期は若干ながらも黒字化した。また、SalesforceのMAツールとなるPardotやMarketing Cloudの導入・運用・定着化支援を行うDiceWorksについては人材採用も含めて先行投資段階となっている。
タイの子会社については2019年に設立以降、コロナ禍で休眠状態であったが、2022年夏から事業活動を開始し、現在はエンジニア数名体制で、Salesforceの現地子会社と協業して営業活動を進めている段階にある。2024年2月期は10人以上の採用を計画しており、現地での需要開拓並びにオフショア拠点としても活用していく考えだ。
(2) 製品事業
製品事業の売上高は前期比3.5%減の1,524百万円、セグメント損失(営業損失)は138百万円(前期はセグメント損失103百万円)を計上した。収益認識会計基準等の適用による影響で、従来基準と比較して売上高で137百万円、セグメント損失で5百万円それぞれ減少している。従来基準で見ると、売上高は同5.2%増の1,662百万円と増収だったことになる。
売上高のうちフロー売上(導入時の一時売上)は前期の188百万円から136百万円に減少し、ストック売上も同1,393百万円から1,388百万円と若干減少したが、ストック売上については会計基準の変更による目減り分と「OMLINE」をソリューション事業へ移管した影響により、合わせて178百万円の減額要因となっており、これら影響を除けば10%台の増収だったと見られる。特に「mitoco」については導入社数が順調に拡大しており、前期比35%増の3.7億円となった。経費清算や勤怠管理など2021年以降リリースした新機能については、競合品と比べて機能面での差は殆ど無いものの、割安な料金で利用できることから徐々に導入が進んでいるもようだ。
利益面では、「mitoco」の開発費用やマーケティング人材の採用増、「TerraSkyDay2022」の3年ぶりのリアル開催実施によるイベント費用の増加により損失が拡大する格好となった。なお、子会社のエノキについては売上高で数千万円とまだ小さいものの、人員も少ないため若干の営業利益を計上した。
自己資本比率は60%以上、ネットキャッシュも潤沢で財務内容は良好
3. 財務状況と経営指標
2023年2月期末の総資産は前期末比1,689百万円増加の15,523百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産は現金及び預金が221百万円増加したほか、売掛金及び契約資産が608百万円増加した。固定資産ではのれんの償却により無形固定資産が72百万円減少した一方で、投資有価証券が1,076百万円増加した。
負債合計は前期末比603百万円増加の4,591百万円となった。主な変動要因を見ると、有利子負債が306百万円減少した一方で、買掛金及び契約負債が536百万円、未払法人税等が110百万円、繰延税金負債が146百万円それぞれ増加した。また、純資産は前期末比1,085百万円増加の10,932百万円となった。利益剰余金が328百万円、その他の包括利益累計額が383百万円、非支配株主持分が290百万円それぞれ増加した。
経営指標を見ると、自己資本比率が前期末の63.5%から61.7%に低下したものの、有利子負債比率は6.8%から3.0%に低下した。ネットキャッシュ(現金及び預金-有利子負債)も56億円強と過去最高水準に積み上がるなど財務基盤の強化が進んでおり、財務内容は良好な状態にあると判断される。また、収益性についてはROAで4.2%、ROEで3.8%、売上高営業利益率で3.3%といずれも低水準が続いているが、今後の成長に向けた先行投資を実施していることが主因であり、2024年2月期以降にこれら先行投資の効果が顕在化し、収益性も向上するものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
提供:フィスコ