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9474 ゼンリン

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脱炭素で再脚光「EV充電器」、集合住宅・マンション向けで成長新ステージへ <株探トップ特集>


―国も後押し、EV充電サービスを展開する企業のビジネスチャンス拡大へ―

 世界的な脱炭素の流れを受けて電気自動車(EV)市場が拡大している。ただ、日本の新車販売台数におけるEV(含むPHV)の比率は3%台と、20%を超える国のある欧州や、10%を超える中国に比べてはもちろん、6%台の米国に比べてもその比率はまだまだ低い。日本でEVが普及しない要因として充電インフラの遅れが問題視されることも多く、需要は拡大しているものの充電器の設置は伸び悩みもみられる。ただ、政府は2021年6月に策定した「グリーン成長戦略」で30年までに EV充電器を15万基(うち急速充電器3万基)とする目標を掲げており、政策的な後押しも整いつつある。EV充電器は再拡大期を迎えそうだ。

●EV充電器の設置台数は頭打ち傾向

 次世代自動車振興センターのまとめた充電設備補助金交付台数によると、EV充電スポット数(補助金交付台数)は10年度には724台だったが、国の大型補助金制度による後押しが実質的にスタートした15年度には1万9464台に拡大した。ただ、これをピークに減少し18年度以降は3ケタ台で推移している。累計台数も10年度の865台から21年度には3万9667台に拡大し、大型補助金制度がスタートする前年の14年度に比べると3.3倍に急増したが、15年度と比較すると26%程度しか伸びていない。

 ゼンリン <9474> [東証P]の調査によると、全国のEV充電器の設置台数はここ数年3万台前後で推移している。10年代前半に設置した充電器が、耐用年数を超えて老朽化したことや、設備を更新しても採算が合わないと判断され撤去された例が多いようで、こうした各地で起こるEV充電器の撤去が問題視されるようになってきた。

●集合住宅などへの設置に対する支援が拡充

 ただ、22年度には新たな動きも見え始めた。補助金交付台数は3077台となり、累計台数も4万2744台に増加した。国の集合住宅などに対する充電設備や工事費を補助する制度の対象の上限が撤廃された効果や、6月に日産自動車 <7201> [東証P]が三菱自動車工業 <7211> [東証P]と共同開発した初の軽EV「サクラ」や三菱自の「eKクロスEV」などの投入効果があるとされている。

 政府は更に、高出力充電器の設置や取り扱いに関して適用している規制を年内をメドに大きく緩和する方針だ。EV充電器は今後、地域の特性や需要動向を考慮した機種選びや、適材適所に小型充電器や高出力充電器を設置することにより、普及が加速するとみられている。こうした動きがEV充電器関連企業のビジネスチャンス拡大につながりそうだ。

●集合住宅向けEV充電器拡大へ

 特にEV充電器の設置が進みそうな分野として注目されているのが、マンションなどへの導入だ。既存のマンションの場合、新たに導入されるEV充電器は共有設備となるため、管理組合の総会で住民の合意を取り付ける必要がある。ただ、現在はまだEVを所有する人が少ないため、ほとんどの住民にとっては、EV充電器の導入は自分には何のメリットもない設備投資でしかなく、設置にこぎつけるまでのハードルが高い。

 しかし、前述の国の集合住宅へのEV充電器導入促進策を受けて、足もとではEV充電器の既存マンションへの導入が徐々に増加している。また、東京都では30年までに集合住宅に6万基の充電器を設置することを目指しており、25年度からは新築マンションに設置を義務化する方針でもある。そのため、今後の普及拡大余地が大きい分野といえそうだ。

●マンション向けEV充電サービスの関連銘柄

 ENECHANGE <4169> [東証G]は、管理組合との交渉から、充電設備の設置工事や補助金申請、導入後のサポートなどをワンストップで提案する「EV充電エネチェンジ」を提供している。3月に行われた東京都のマンションへのEV充電設備設置に関する相談会でも、充電サービス事業者の1社として参加。更にマンションオーナーや居住者をターゲットとした広告宣伝により受注促進を図っている。同社に関しては、USEN-NEXT HOLDINGS <9418> [東証P]が、EV充電器の設置拡大で協業しており、こちらも注目したい。

 エクシオグループ <1951> [東証P]は、子会社のエクシオテックが「EV STATION SHARING」事業としてマンション・集合住宅へのEV充電器の設置を進めており、エネチェンジも参加した東京都の相談会にも事業者の1社として参加した。同社もマンション理事会などへの参加から補助金申請、設置工事や運用までをワンストップでサポートしており、マンションからの受注拡大を目指している。

 ブイキューブ <3681> [東証P]は、昨年7月にEV充電サービス関連事業を行うシンガポールの「CHARGE+(チャージプラス)」へ出資。9月には商業施設などへEV充電サービスを提供するプラゴ(東京都品川区)と、国内でのEV充電分野のソリューション連携を目的として資本・業務提携した。特にCHARGE+はマンションなどへのEV充電器設置に強みがあり、日本での同様の展開に注目が集まる。昨年11月には新会社「CHARGE+ Japan」設立も発表した。

 このほか、アルファグループ <3322> [東証S]は子会社アルファチャージが事前調査から設置工事、補助金・助成金の申請サポート、課金システムによる運営サポートなどをワンストップで提供。エコモット <3987> [東証G]も北海道電力 <9509> [東証P]と提携して、集合住宅向けEV充電器の導入から運用までをワンストップでカバーする「ユアスタンド」を提供している。両社ともに今後期待されるマンションへのEV充電器導入拡大による恩恵を受けそうだ。

●充電器メーカーにも注目

 もちろん、EV充電器メーカーもビジネスチャンスが広がりそうだ。充放電装置を展開し、公共施設などの導入が多い椿本チエイン <6371> [東証P]や、急速充電器が高速道路のSA・PAなどに設置が進む東光高岳 <6617> [東証P]、前述のエネチェンジのEV充電サービスと提携する日東工業 <6651> [東証P]、世界最小クラスの充電器を展開するニチコン <6996> [東証P]などにも引き続き注目したい。

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