明日の株式相場に向けて=「チャットGPT」CEO来日でAI新潮流
きょう(11日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比289円高の2万7923円と3日続伸。一時は400円以上高い場面もあった。前日の米国株市場ではNYダウが朝方こそ売りに押されたが、その後は押し目買いが優勢となり、午後の取引ではおおむねプラス圏での推移を続けた。これを受けて東京市場もリスクを取る動きが強まったが、終盤に上げ幅を縮小し、終値での2万8000円台乗せはお預けとなっている。
前週末に発表された3月の米雇用統計は総じて景気の強さを示す内容で、5月3日までの日程で行われるFOMCでは25ベーシスの政策金利引き上げが濃厚となった。週明けの米国株市場ではこれがいったんは嫌気されてNYダウは安く始まったのだが、その後は思い直したように買いが入り始め、結局取引終了時には100ドルあまりの上昇となった。ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数のほうは、金利上昇が足かせとなってわずかにマイナス圏で引けたが、午後の取引では一貫して押し目買いを誘導した。ちなみに米債券市場では長・短期債ともに売られる展開となり、米10年債をはじめすべての年限で利回りが上昇した。逆イールドの象徴となっている2年債は再び4%台に乗せている。少し前なら、「グッドニュースはバッドニュース」で米雇用統計の内容はFRBの利上げ長期化を警戒するというロジックで嫌気されるところだが、今はリセッションが最も懸念されているため、景気が強ければ株式市場にとっても好材料となる。そうしたなかも、インフレ圧力は弱めであることを暗示する内容であったことが結果として幸いした。
東京市場でも、きょうはこの流れを受けてリスク選好ムードのなか始まったが、もっとも、こちらの方は前日の米国株の動きよりももっとポジティブに作用する“材料”があった。それは前日の夜に行われた植田和男・日銀新総裁の就任会見である。植田氏は当面は黒田前総裁の政策路線を踏襲する方針を示し、イールドカーブ・コントロール(YCC)の継続性を肯定、マイナス金利についても「強力な金融緩和のベース」という位置付けで、否定的なニュアンスを一切含まなかった。近い将来の政策変更に向けた動きに身構えるマーケット関係者にとって、拍子抜けするほどハト派色の強い会見であったことが、この日の株式市場の強い地合いを演出した。
まず、リスクオンの流れを映したのが外国為替市場で、日米金利差拡大の思惑から一時1ドル=133円台後半まで円安が進行、きょうに日付が変わって若干ドルが買い戻される動きとなったものの、133円台をキープし前日と比較すれば1円以上の円安となった。これが、ハイテク株のほかインバウンド関連に追い風材料として作用した。
そして強気優勢を更に後押ししたのが、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が大手メディアのインタビューに応える形で日本株への追加投資を検討していると伝わったこと。日経平均は一時2万8000円大台ラインを突破したが、この“バフェット効果”がなければ最後まで2万7000円台後半でのもみ合いに終始したはずだ。特に総合商社株は、AIアルゴ取引の作動も影響して突発的に株価水準を切り上げる銘柄が相次いでいる。
AIといえば、チャットGPTを開発した米オープンAIのサム・アルトマンCEOの来日も株式市場にインパクトを与えた。アルトマン氏は前日に岸田首相と面会したほか、自民党会合にも出席した。研究開発の拠点を日本に設立する意向を示したもようで、これは株式市場にとっても大きなニュースといってよい。AIが学習に活用するデータが英語圏に偏ることは、日本で展開するうえでカルチャーの理解などAIの精度を落とす。それを克服するため、研究協力を日本政府に求めたもようで、この動きは徐々に日本の関連企業にも波及しそうだ。個別にはAIチャットボット周辺企業に商機が生まれやすい。3月にも取り上げたユーザーローカル<3984>やWACUL<4173>、インフォネット<4444>、ソフトフロントホールディングス<2321>などを改めてマークしてみたい。
あすのスケジュールでは、3月の企業物価指数、3月の貸出・預金動向が朝方取引開始前に日銀から開示されるほか、2月の機械受注を内閣府が発表する。また、東証グロース市場にispace<9348>が新規上場する。海外では3月の米消費者物価指数(CPI)に対するマーケットの関心が高い。このほか3月の米財政収支、FOMCの議事要旨(3月21~22日開催分)などが開示される。また、カナダ中銀が政策金利を発表する。(銀)
出所:MINKABU PRESS
前週末に発表された3月の米雇用統計は総じて景気の強さを示す内容で、5月3日までの日程で行われるFOMCでは25ベーシスの政策金利引き上げが濃厚となった。週明けの米国株市場ではこれがいったんは嫌気されてNYダウは安く始まったのだが、その後は思い直したように買いが入り始め、結局取引終了時には100ドルあまりの上昇となった。ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数のほうは、金利上昇が足かせとなってわずかにマイナス圏で引けたが、午後の取引では一貫して押し目買いを誘導した。ちなみに米債券市場では長・短期債ともに売られる展開となり、米10年債をはじめすべての年限で利回りが上昇した。逆イールドの象徴となっている2年債は再び4%台に乗せている。少し前なら、「グッドニュースはバッドニュース」で米雇用統計の内容はFRBの利上げ長期化を警戒するというロジックで嫌気されるところだが、今はリセッションが最も懸念されているため、景気が強ければ株式市場にとっても好材料となる。そうしたなかも、インフレ圧力は弱めであることを暗示する内容であったことが結果として幸いした。
東京市場でも、きょうはこの流れを受けてリスク選好ムードのなか始まったが、もっとも、こちらの方は前日の米国株の動きよりももっとポジティブに作用する“材料”があった。それは前日の夜に行われた植田和男・日銀新総裁の就任会見である。植田氏は当面は黒田前総裁の政策路線を踏襲する方針を示し、イールドカーブ・コントロール(YCC)の継続性を肯定、マイナス金利についても「強力な金融緩和のベース」という位置付けで、否定的なニュアンスを一切含まなかった。近い将来の政策変更に向けた動きに身構えるマーケット関係者にとって、拍子抜けするほどハト派色の強い会見であったことが、この日の株式市場の強い地合いを演出した。
まず、リスクオンの流れを映したのが外国為替市場で、日米金利差拡大の思惑から一時1ドル=133円台後半まで円安が進行、きょうに日付が変わって若干ドルが買い戻される動きとなったものの、133円台をキープし前日と比較すれば1円以上の円安となった。これが、ハイテク株のほかインバウンド関連に追い風材料として作用した。
そして強気優勢を更に後押ししたのが、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が大手メディアのインタビューに応える形で日本株への追加投資を検討していると伝わったこと。日経平均は一時2万8000円大台ラインを突破したが、この“バフェット効果”がなければ最後まで2万7000円台後半でのもみ合いに終始したはずだ。特に総合商社株は、AIアルゴ取引の作動も影響して突発的に株価水準を切り上げる銘柄が相次いでいる。
AIといえば、チャットGPTを開発した米オープンAIのサム・アルトマンCEOの来日も株式市場にインパクトを与えた。アルトマン氏は前日に岸田首相と面会したほか、自民党会合にも出席した。研究開発の拠点を日本に設立する意向を示したもようで、これは株式市場にとっても大きなニュースといってよい。AIが学習に活用するデータが英語圏に偏ることは、日本で展開するうえでカルチャーの理解などAIの精度を落とす。それを克服するため、研究協力を日本政府に求めたもようで、この動きは徐々に日本の関連企業にも波及しそうだ。個別にはAIチャットボット周辺企業に商機が生まれやすい。3月にも取り上げたユーザーローカル<3984>やWACUL<4173>、インフォネット<4444>、ソフトフロントホールディングス<2321>などを改めてマークしてみたい。
あすのスケジュールでは、3月の企業物価指数、3月の貸出・預金動向が朝方取引開始前に日銀から開示されるほか、2月の機械受注を内閣府が発表する。また、東証グロース市場にispace<9348>が新規上場する。海外では3月の米消費者物価指数(CPI)に対するマーケットの関心が高い。このほか3月の米財政収支、FOMCの議事要旨(3月21~22日開催分)などが開示される。また、カナダ中銀が政策金利を発表する。(銀)
出所:MINKABU PRESS