オーケストラ Research Memo(4):2022年12月期の売上高(グロス)及び売上総利益は過去最高を更新
■業績動向
1. 2022年12月期の業績概要
Orchestra Holdings<6533>の2022年12月期の連結業績は、売上高が10,377百万円、営業利益が前期比7.0%増の1,350百万円、EBITDAが同5.4%増の1,597百万円、経常利益が同8.8%増の1,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同12.7%増の853百万円となった。「収益認識に関する会計基準」等の適用により、デジタルマーケティング事業の売上高及び売上原価が10,842百万円減少しているが、利益への影響はない。なお、「収益認識に関する会計基準」等適用前のグロス表示での売上高は同27.5%増の21,220百万円と過去最高値であった。
デジタルトランスフォーメーション事業のうちクラウドインテグレーション事業で構造改革を実施し減益となったほか、新規事業のHR SaaS「スキルナビ」への投資を継続したことによりその他(新規事業)で損失幅が拡大したものの、デジタルマーケティング事業が第4四半期に最高益を更新するなど好調に推移し、全体をけん引した。売上総利益は前期比31.4%増の5,104百万円と過去最高益を更新し、積極的な人材投資による販管費の増加(同43.2%増)を吸収した。なお、2022年12月期末の役職員数は同200名増の790名となった。また、「収益認識に関する会計基準」等適用前のグロス表示での売上総利益率は同0.8ポイント上昇の24.1%、販管費率は同2.0ポイント上昇の17.7%、EBITDAマージンは同1.6ポイント低下の7.5%であった。
セグメント別動向は以下のとおり。
(1) デジタルトランスフォーメーション事業
売上高は前期比17.1%増の4,805百万円、セグメント利益(営業利益)は同30.9%減の319百万円となった。システムソリューション事業は順調に売上が伸長した一方、クラウドインテグレーション事業の売上は計画を下回った。利益面では、新卒(72名)を中心とする人員投資を計画どおり実行し、損益が悪化した。同社は、これらの原因は営業や中堅エンジニアのリソース不足にあると考え、営業の体制強化、Salesforceとの関係性強化、中堅エンジニア層強化による品質向上など、事業の構造を改革している。四半期別のセグメント損益は第1四半期(2022年1~3月)が204百万円の利益、第2四半期(4~6月)が67百万円の利益、第3四半期(7~9月)が1百万円の損失、第4四半期(10~12月)が48百万円の利益であった。新卒採用により第2四半期から損益が悪化したが、構造改革の効果により第3四半期をボトムに回復傾向にあると弊社では見ている。
(2) デジタルマーケティング事業
売上高は4,695百万円、グロス表示での売上高は前期比30.3%増の15,537百万円、セグメント利益(営業利益)は同24.0%増の2,123百万円となった。インターネット広告市場が堅調に伸長する環境の下、主力サービスの運用型広告を中心に既存取引先からの受注額の増額や新規取引先の獲得が順調に推移した。四半期別のセグメント利益は第1四半期が572百万円、第2四半期が483百万円、第3四半期が508百万円、第4四半期が559百万円となり、第4四半期は四半期ベースで過去最高益を更新した。
(3) その他事業
売上高は前期比46.8%増の1,022百万円、セグメント損失(営業損失)は69百万円(前期は21百万円の損失)となった。2021年11月にM&Aしたアールストーン(IT人材事業)が通期で寄与し、増収となった。一方、「スキルナビ」などの新規事業への先行投資により、セグメント損益は損失幅が拡大した。なお、「スキルナビ」への戦略投資額は約2.6億円であった。
2. 財務状況
2022年12月期末の資産合計はのれんが824百万円増加したことなどにより、前期末比849百万円増加の11,410百万円となった。負債合計は同59百万円増加の5,674百万円となった。主に未払法人税が827百万円減少した一方、買掛金が521百万円、短期借入金が388百万円それぞれ増加した。純資産合計は利益剰余金が775百万円増加したことなどにより、同789百万円増加の5,735百万円となった。有利子負債(長短借入金)は同174百万円増加し1,708百万円となった。この結果、自己資本比率は同4.5ポイント上昇して45.4%となった。有利子負債がやや増加したものの特に懸念材料とは言えず、成長投資を継続しながらも自己資本比率が上昇していることから、財務の健全性が高まったと評価している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《YI》
提供:フィスコ