“究極の半導体”に夢膨らむ、「ダイヤモンド半導体」で浮上する銘柄群 <株探トップ特集>
―EV・宇宙・量子コンピューター分野で活躍へ、省エネや耐久性に優れ開発進む―
「ダイヤモンド半導体」の実用化に向けた期待がにわかに高まってきた。加速するデジタル化の流れに加え、米中対立を背景とした経済安全保障の観点から 半導体の重要性が一段と増すなか、株式市場でも半導体関連株は継続的に高い注目を浴びている。関連銘柄のすそ野が広く、その注目度の高さから物色の動きは周辺、更にそのまた周辺へと広がっている状況だ。こうしたなか、いわゆる次世代材料を用いた化合物半導体に関心が向かう場面も折に触れみられる。性能を左右する材料として使う素材ごとにさまざまなものがあり、その一つにダイヤモンド半導体がある。
●早大ベンチャーが資金調達、企業・研究機関の取り組み続々
ダイヤモンド半導体とは、合成ダイヤモンドを基板に使用した半導体のこと。既存のシリコンはもちろん、次世代材料といわれる炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を使った半導体と比べ省エネルギー効果や耐久性に優れており、その性能の高さから「究極の半導体」とも呼ばれている。いまだ開発段階にあるものの、実用化されれば当然さまざまな産業分野に組み込まれていくことになり、なかでも普及が進む電気自動車(EV)、開発競争がますます激しさを増す人工衛星など宇宙分野、加えて直近関心が高まっている量子コンピューター分野での活躍が期待されている。
実用化に向けて企業や大学による研究開発が進んでおり、直近話題が出てきたものではPower Diamond Systems(パワーダイヤモンドシステムズ、東京都新宿区)が挙げられる。同社は昨年創業したダイヤモンド半導体デバイスの開発を行う早稲田大学発ベンチャーで、今年3月に西日本フィナンシャルホールディングス <7189> [東証P]の傘下にある西日本シティ銀行系の投資ファンド、早大が運営するベンチャーキャピタルから3億円の資金調達を行っている。
タムラ製作所 <6768> [東証P]系のノベルクリスタルテクノロジー(埼玉県狭山市)と共同研究を行ったことでも知られる佐賀大学は昨年、工業用宝石部品のOrbray(オーブレー、旧アダマンド並木精密宝石、東京都足立区)と共同でダイヤモンドウエハーの量産技術を確立している。研究機関ではこのほか、大阪大学や近畿大学、産業技術総合研究所(産総研)などが開発に取り組んでいる。
●EDP、Jテック・Cに注目
イーディーピー <7794> [東証G]は、人工的に作り出す合成ダイヤモンドの元となる「単結晶ダイヤモンド」を製造販売する産総研発ベンチャーだ。天然物と変わらない輝きがありながら、比較的安価な人工宝石のマーケットは拡大傾向にあり、これが同社業績の追い風として意識される。人工宝石向けが主力だが、それ以外でダイヤモンド半導体の基板や工具用素材などに向けても展開している。23年3月期も増収増益トレンドを継続する見通しだ。
ジェイテックコーポレーション <3446> [東証P]は研究施設向けの実験装置メーカー。レーザー核融合関連の製品のほか、半導体向け加工装置を手掛けており、同社には投資家の熱い視線が注がれている。なかでも、半導体向け装置で「プラズマ援用研磨(PAP)装置」が関心を集めている。SiCやGaN基板、単結晶ダイヤモンド基板を高速、高精度に平坦化できるというもので、昨年末に受注を獲得した実績がある。
●思惑向かう銘柄群も要マーク
ダイヤモンド半導体が過去話題となった際に、事業面や技術面で近い範囲にある銘柄に思惑的な物色が入る場面もあった。ダイヤモンド工具最大手の旭ダイヤモンド工業 <6140> [東証P]は半導体材料の加工に使う各種製品を手掛け、化合物半導体向けにも展開しているとあって思惑が向かいやすい。直近、新たな株主還元方針を明らかにしている。足もと業績は好調で、株価は上昇トレンドを継続している。
ダイヤモンドは炭素で構成された物質であり、同じく炭素からできている 石炭を扱う銘柄に目が向けられることもある。石炭大手の住石ホールディングス <1514> [東証S]もその一つで、グループ傘下に工業用人工ダイヤモンドの製造販売を行う子会社ダイヤマテリアルを持つ。
このほか、合成ダイヤモンド単結晶「スミクリスタル」を製造する住友電気工業 <5802> [東証P]、独自の研磨技術を強みにダイヤモンドにエッジトリートメント加工(面取り加工、ミラー処理など)を施せる工法を確立した実績があるMipox <5381> [東証S]。また、工業用ダイヤモンドの輸入販売も手掛ける包装機械メーカーのミューチュアルを昨年買収した投資ファンドのマーキュリアホールディングス <7347> [東証P]などもマークしておきたい。
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