Jトラスト Research Memo(7):新たな3か年計画を発表。2024年12月期からは増益基調を目指す(1)
■Jトラスト<8508>の成長戦略
同社グループは2021年12月期に黒字化を実現し、成長フェーズに転換したことを踏まえ、2022年12月期~2024年12月期までの3ヶ年の中期業績予想を発表し、大幅な増収増益を計画した。ただ、コロナ禍、ウクライナ戦争に起因する原油・天然ガスの価格高騰などによる市中金利の高騰など、当初想定していなかった事業環境の悪化によって、2023年12月期以降の営業利益は計画を下回る見通しとなった。このため、2023年12月期~2025年12月期までの3か年計画を新たに発表した。営業収益は順調に拡大し、最終年度となる2025年12月期に1,587億円(2022年12月期比1.9倍)と、過去最高の更新継続を目指す。営業利益は2023年12月期は減益となるものの、2024年12月期から増益基調に転じ、2025年12月期に191億円(同1.3倍)と過去最高の更新を計画している。なお、この3か年計画は正式な中期経営計画ではないが、同社が達成可能と考える保守的な業績予想としている。会社として投資家に中期的な利益目標を示すことは、会社の将来業績に基づいて投資を検討する投資家にとって非常に重要であると弊社では考えている。
今後の成長戦略は以下のとおり。
(1) 日本金融事業
信用保証業務の拡充と債権回収業務の強化によってさらなる収益の拡大を図り、同社グループ全体の業績を下支えする計画である。
子会社の日本保証では、保証期間の長いアパートローンの占める割合が大きいこともあり、保証残高は安定推移している。なかでも中古アパートローンは計画を上回るペースで順調に推移している。信用保証業務では、既存の保証残高からの安定的な保証料収入をベースとして、アパートローン保証を中心とした収益構造に変わりはないが、不動産担保ローンやリバースモーゲージ型商品に対する保証業務、不動産買取保証等、保証商品の多角化を推進する計画だ。
2022年11月には、JTG証券、提携銀行、日本保証の協業により富裕層向けに新たな金融商品の提供を開始した。JTG証券の顧客の株式や外債を担保として、提携銀行がローンを提供し、日本保証が保証することで保証残高の拡大を目指す。JTG証券は3年後を目標に、預り資産残高1兆円(2022年12月期末比約3倍)を目指している。体制を強化し、JTG証券と同社グループ各社及び提携銀行の協業による新商品の開発など、新たな富裕層向けビジネスの拡大を目指す。
不動産事業を行うJグランド(株)も富裕層向けビジネスを展開することで、2023年12月期売上を前期比約3.7倍の108億円に拡大する見込みだ。このJグランドの売上のほぼ全額が日本保証の保証残高に直結する。また、同社は事業規模拡大に伴いIPOを計画している。
ミライノベートとの合併効果としては、不動産事業の拡大を目指している。2022年3月期のミライノベートの不動産事業売上高は7,333百万円、営業利益は1,056百万円であったことから、2023年12月期より不動産セグメントを新設する予定だ。不動産事業のさらなる拡大により、日本保証の保証残高の積み上げを目指す。
男性脱毛業界最大手の「メンズクリア」((株)クリアが展開)をはじめとした提携先とのエステ脱毛、ジム、ゴルフレッスン、クリニックを通じたNexus Cardの割賦事業は好調で、2023年12月期には100億円超の割賦取扱いを計画している。提携先の割賦をNexus Cardが担い、割賦売掛金残高の増大が日本保証の保証残高に直結することから、同社グループの業績への貢献が期待される。
(2) 韓国及びモンゴル金融事業
足元では市中金利の高騰による預金利率(調達金利)の上昇、韓国全体での延滞増加、個人回生(個人再生)・信用回復の増加傾向により引当金の積み増しが懸念されるなか、引き続き緩やかな成長を目標に掲げる。「量の成長」から「質の成長」を目指し、バランスの取れたRisk-Returnを目標に一定の資産規模を維持し、資産内容の質的な向上を追及する。また、調達金利削減のために、他社動向及び満期構造など様々な状況を考慮して受信利率を検討する。貸出金利は最大限引き上げを図るものの、NPL比率を鑑みた収益性で判断して貸出金利を算定する。徹底した延滞管理を実行し、貸倒償却費の抑制に向けて最大限努力する計画だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《YI》
提供:フィスコ