Jトラスト Research Memo(4):2022年12月期は大幅な増収増益決算で、上方修正後の業績予想を達成(2)
■Jトラスト<8508>の業績動向
(2) 日本金融事業
2022年12月期の営業収益は11,774百万円(前期比20.4%増)、営業利益は3,931百万円(同14.3%減)となった。営業収益は、実効金利法に基づく簿価修正益の減少により買取債権における利息収益が減少した一方で、JTG証券及びNexus Cardが連結対象となったことにより増収となった。営業利益は、JTG証券及びNexus Cardが連結対象となったことに伴う販管費の増加などにより減益となったものの、計画の3,739百万円(2022年8月12日修正予想値)を上回って着地した。営業利益率は33.4%と引き続き高水準であることから、同社グループの業績を下支えする主力事業であることに変わりはない。
2022年12月末の保証残高合計は2,095億円と、2022年から緩やかながら増加傾向に転じている。保証残高の8割を占めるアパートローン保証のうち、2020年11月から開始した中古アパートローンの保証残高は205億円と、計画の145億円を上回るペースで増加し、保証残高全体を押し上げた。マーケットは活況で、競合する中古アパートローンの保証会社が少ないことが好調の理由のようだ。
不動産関連保証業務における同社グループの強みは、市場ニーズに合わせたオーダーメイド型商品の開発力と、独自の不動産ローン審査力である。同社グループが不動産の評価・審査と信用保証を担い、銀行が融資を行っているが、地域金融機関と提携することで賃貸住宅ローン(アパートローン)保証を中心に保証残高は右肩上がりで増加を続けてきた。しかし、一部銀行の不正融資問題をきっかけに、アパートローン保証は以前のような勢いを失った状況が続いている。ただし、アパートローンの期間は20年~30年超と長期のため、その間は保証料収入が安定的に入ってくる。また、同社が保証する物件は、東名阪の都市部、徒歩10分以内の駅近物件に集中しており、債務保証を行っている賃貸住宅の入居率は95%以上を維持している。保証料が高いその他の保証(個人事業主への融資保証等)は近年競争が激化していることから取り扱いを抑え、保証料が低いものの貸倒リスクが小さいアパートローンへの有担保保証を増やし、ボリュームでカバーすることにより利益を確保してきた。
同社グループでは、保証残高の大幅な拡大を目指して、様々な取り組みに着手している。アパートローン保証だけでなく、中古アパートローン、不動産担保ローン、クラウドファンディング(融資型/不動産投資型)の保証、不動産買取保証など、保証商品の多角化を推進してきたが、徐々にその成果が現れていると言える。特に、傘下のJグランド(株)(旧 日本ファンディング(株))が注力している富裕層向け投資用高級一棟マンションの販売事業は、保証残高の積み上げにつながると期待される。さらに、Nexus Cardでは男性脱毛業界最大手のメンズクリアをはじめとした提携先を通じた割賦取り扱いが100億円を超えると計画している。この割賦売掛金残高の増大が日本保証の保証残高を押し上げる見込みである。
サービサー(債権回収)業務全体の請求債権残高は約9,060億円(2022年12月末)と横ばいで、依然として高水準を維持している。このうち、日本保証がTFK(株)(旧 (株)武富士)より継承した簿外債権(請求可能債権)に大きな動きはないが、パルティール債権回収(株)が取り扱う債権については、回収が好調ななか買取も順調に進んだ。
債権回収における同社グループの強みは、多様な債権回収事業会社出身者のノウハウを結集した国内トップクラスの回収力にある。金融機関やカード会社などから債権を買い取る際の入札競争においても優位となり、その結果、事業拡大という好循環につながる。今後もこの強みを生かし事業拡大を進めていく方針だ。また、国内事業での債権回収力の強さは、海外事業でも生かされていると言える。
(3) 韓国及びモンゴル金融事業
2022年12月期の営業収益は38,451百万円(前期比159.7%増)、営業利益は14,437百万円(同349.9%増)と大幅な増収増益となった。同社とNexus Bankの株式交換によるJTCSBの連結子会社化に加え、貯蓄銀行業務における貸出残高増加に伴う利息増加から、営業収益は増収となった。また、事業成長に加え、株式交換による負ののれん発生益9,719百万円の計上もあり、営業利益は大幅増益となった。負ののれん発生益を除いた営業利益も4,718百万円(同1,510百万円増)となっており、韓国及びモンゴル金融事業の実力ベースの利益は着実に増加している。今後も同社グループの利益拡大に大きく貢献する見通しだ。
韓国の貯蓄銀行であるJTCSBは、2022年に不良債権が増加し、期末のNPL比率が5.62%に上昇したことに対応して貸出を戦略的に抑制した結果、2022年12月末の貸出残高は2,700億円に減少した。JTCSBは個人向け貸出の比率が高いことから、中小企業との取引に強いJTSBに比べてNPL比率はやや高くなっている。一方、JTSBは、BIS規制遵守のため貸出を戦略的にコントロールした結果、2022年12月末の貸出残高は1,938億円に減少しNPL比率は4.96%に上昇した。ただ、2022年12月時点の預貸スプレッドはJTCSBが6.7%、JTSBが5.4%と、BJIの4.0%やJTRBの4.2%に比べて高水準であることから、今後もグループの業績に貢献する見通しである。
(4) 投資事業
投資事業では、シンガポールを拠点に、事業のシナジー性や商品力などを総合的に判断し、投資先を選定する。特に、金融事業や金融事業とシナジー効果が見込める事業に投資している。2022年12月期の営業収益は226百万円(前期比64.8%減)、営業損益は前期にシンガポールでの勝訴判決に係る受領額を計上した反動により、2,205百万円の損失(前期は5,445百万円の利益)となった。ただ同社では、裁判継続中の貸出に対して既に十分な貸倒引当金を引き当てたことで、将来の回収金は利益計上されることになるため、今後も回収に尽力することで同社グループの業績に貢献する計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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提供:フィスコ