東京通信 Research Memo(5):電話占い「カリス」及び新規ヘルステックサービスが増収に寄与(1)
■業績動向
1. 2022年12月期の連結業績概要
東京通信<7359>の2022年12月期の連結業績は、売上高5,071百万円(前期比7.2%※増)、営業損失54百万円(前期は465百万円の利益)、経常損失45百万円(同424百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失265百万円(同202百万円の利益)、EBITDAが318百万円(同55.1%減)となった。売上高に関しては、世界的なヒットを記録したハイパーカジュアルゲームアプリ「Save them all」に続くヒット作を創出できなかったものの、電話占い「カリス」が年間を通して安定的に収益貢献したことにより、前期を上回って着地した。加えて、新規事業であるヘルステックサービス「OWN.」のリリースも売上の拡大に寄与した。一方で利益面に関しては、「Save them all」に続くヒット作を創出できたなかったことに加えて、東アジアに向けたアプリ提供の本格化、Play-to-Earn)領域のインセンティブゲームのプロモーションの強化、自社コンテンツのマルチプラットフォーム展開、知名度のある外部IPを活用したゲームの開発など、将来の事業拡大に向けた積極投資により、減益となった。また、積極的な人材採用とオフィス環境統合による効率化を目的とした本社移転により、一時的にコストが発生したことも響いた。
2. 事業セグメント別動向
(1) インターネットメディア事業
インターネットメディア事業は、売上高3,011百万円(前期比8.2%減)、セグメント利益は334百万円(同50.7%減)となった。ハイパーカジュアルゲームアプリでは、10月より本格運用を開始した「draw flights」がApp Store(国内・無料ゲーム)ランキングにて第1位を獲得したほか、「stop the flow!」などのタイトルも好調だった。新たな取り組みでは、外部IPを活用したゲームコンテンツ「救え!邪神ちゃんドロップキック」など2タイトルをリリースしたほか、Play-to-Earn領域では、インセンティブゲーム「ポイ活ソリティア」が既存ユーザーの継続と新規ユーザーの拡大により、順調に収益を伸ばした。また、自社コンテンツのマルチプラットフォーム展開戦略として、家庭用ゲーム機向けにダウンロードコンテンツの提供を開始し、販売が好調に推移した。一方で、世界的なヒットを記録した「Save them all」に次ぐヒット作が創出できなかったことにより、売上は減少した。利益面では、売上の減少に加えて、東アジアに向けたアプリ提供の本格化、Play-to-Earn領域のインセンティブゲームのプロモーションの強化、自社コンテンツのマルチプラットフォーム展開、知名度のある外部IPを活用したゲームの開発などによって費用が増加し、減益となった。ただ、重要指標(KPI)である運用本数※は345本(同30.2%増)と好調に推移した。
※広告出稿による運用を伴う国内及び海外のスマートフォン向けアプリの1月当たりの平均本数。
(2) プラットフォーム事業
プラットフォーム事業は、売上高1,778百万円(前期比38.9%増)、セグメント利益は156百万円(同17.3%増)となった。主力事業である電話占い「カリス」が引き続き堅調に推移した。鑑定師の雑誌企画やTVへの積極的な出演、新たな広告媒体への広告出稿等、「カリス」の認知度向上のためのプロモーションに注力するなか、新規会員獲得のためのCPA(顧客獲得単価)の改善と、SEO対策による自然流入会員の獲得を行うことで収益性の向上につなげた。重要指標である電話占いの鑑定回数は261千回だった。会社計画の277千回と比べて若干下回ったものの、鑑定回数は安定して推移してきている。
また、精力的に複数の新規サービス開発を継続した。4月にサービスを開始したヘルステックアプリ「OWN.App」は、既存ユーザーの高い継続率と新規ユーザーの流入により、順調にアクティブユーザーが増加した。11月にはヘルスケア領域における包括的なサービス提供を目的に、ECサイト「OWN.Shop」を開設した。「OWN.App」の課金ユーザーを中心に自社開発のプロテインやマルチビタミンサプリの販売が好調に推移した。11月には、Fortniteを活用したメタバース×ゲーム上でのメタバース広告を活用した「OWN.」ブランドのプロモーションを行うなど、プロモーションの強化も実施した。今後も継続的なプロモーションによるユーザーの拡大を図る方針だ。「OWN.」に関しては、2023年1月時点の累計ダウンロード数が10万ダウンロードを突破した。トレーニンググッズやプロテインの販売などサービスの幅を広げており、ユーザーが増えるなかで、今後の業績も順調に推移していくと弊社は見ている。
(3) インターネット広告事業
インターネット広告事業は、売上高263百万円(前期比63.5%増)、セグメント損失14百万円(前期は51百万円の利益)となった。新規広告商品開発の取り組みとして進めていたSEOメディアによる売上高が増加したものの、開発費やメディアの広告費の増加、またVOD※サービスへの広告運用において、主要クライアントからの受注状況の変動の影響もあり、営業損失となった。
※VOD:ユーザーが観たい時にいつでも様々なコンテンツを視聴することができるインターネット動画配信サービス。
(4) その他の事業
その他の事業(投資事業、ソリューションセールス事業、メタバース事業、デジタルサイネージ事業及び新規事業開発等)は、売上高21百万円(前期比90.9%増)、セグメント損失は97百万円(前期はセグメント損失63百万円)となった。デジタルサイネージ事業においては、看板広告をデジタルサイネージへリプレースすることを狙い、引き続き多店舗展開する企業への積極的な営業活動を推進した。また、街づくりプラットフォーム構築プロジェクトである「AMIZA」も開発が順調に進捗した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
《SI》
提供:フィスコ