ジェイ・エス・ビー Research Memo(1):学生マンションの先駆者。長期ビジョン・中期経営計画を推進
■要約
1. 学生マンションのトップ企業で高齢者住宅事業にも注力
ジェイ・エス・ビー<3480>は、Japan Students Bureau(日本学生公社)の頭文字であり、主に学生を対象としたマンション(以下、学生マンション)の企画・賃貸・管理を行い、全国に展開する学生マンション物件管理戸数80,000戸超を誇る業界トップ企業である。年々物件管理戸数を増やしながら、100%近い高い入居率を維持し、不動産賃貸管理事業が売上高の9割強を占めている。また、長年学生マンション事業に従事してきた経験とノウハウを生かして高齢者住宅事業にも参入し、関西地区を中心にドミナント戦略を推進する。同社は「豊かな生活空間の創造」を経営理念に成長を続け、2017年7月には東京証券取引所(以下、東証)2部へ上場し、2018年7月には同1部へ指定変更、2022年4月にはプライム市場に移行した。現在は、「意欲的な」中期経営計画(2021年10月期~2023年10月期)を推進中で、2030年長期ビジョンの達成に向けてさらなる成長を目指している。
2. 2022年10月期は、期初予想を上回る大幅な増収増益決算で増配を実施
2022年10月期の業績は、売上高57,922百万円(前期比9.7%増)、営業利益6,312百万円(同18.3%増)の大幅な増収増益を達成した。営業利益は期初予想を7.3%上回る好決算であった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の厳しい状況が緩和されつつある一方、ウクライナ情勢を背景に先行きが不透明であるなか、セグメント別では、主力事業の不動産賃貸管理事業は、物件管理戸数の増加やオンラインによる非対面営業活動により100%に近い入居率を確保し大幅な増収増益を続けた。一方、高齢者住宅事業では、1拠点新規オープンに伴う増収はあったものの、派遣社員利用の増加に伴うコスト高により減益に終わった。しかし自己資本比率は45.4%と引き続き業界平均以上の高い財務安全性を確保しているうえ、ROA11.3%、ROE17.2%と、こちらも業界平均を大きく上回っている。好決算を反映して、年間配当金については普通配当39円、創業45周年記念配当5円の合計44円(前期比9円増)とし、また自己株式の取得も実施している。毎期、配当と自己株式取得とを合わせた連結総還元性向20%以上を目標としており、株主還元にも前向きと言える。順調な業績と株主還元策により、投資家の評価は高まるものと弊社では見ている。
3. 2023年10月期も、増収増益を継続する予想
同社では2023年10月期業績について、売上高63,181百万円(前期比9.1%増)、営業利益6,783百万円(同7.5%増)と、引き続き増収増益を予想している。2023年10月期は対面・非対面双方を活用した営業戦略を推進するとともに、原材料価格等の高騰を背景に一定のコスト高を想定している。ただ、同社の期初の業績予想は保守的であり、予想を達成する可能性が高いと弊社では見ている。セグメント別には、主力の不動産賃貸管理事業では、物件管理戸数の増加、高い入居率の維持、対面・非対面双方を活用した営業戦略を引き続き推進する。また、高齢者住宅事業では、新規オープン施設の単月黒字化・損益安定化を図るとともに、各高齢者施設の収益改善を計画する。普通配当については年間40円を予想し、引き続き自己株式取得と合わせた連結総還元性向20%以上を目標としている。
4. 中期経営計画ではDXの推進を中核に、上方修正した中計目標の超過達成を目指す
同社は、2030年長期ビジョン「Grow Together 2030」実現の第1ステージとして中期経営計画「GT01」(2021年10月期~2023年10月期)を推進中である。2021年10月期及び2022年10月期の好決算を反映して、2023年10月期の目標値を2度上方修正し、過去最高となる売上高63,181百万円、営業利益6,783百万円を掲げたが、業績は順調に推移しており超過達成を目指している。また、ROE15%以上、自己資本比率40%以上、物件管理戸数85,000戸、自社物件への投資250億円などを目標とする。こうした目標達成のために、不動産賃貸管理事業ではDXの推進やバリューチェーンの強化など、高齢者住宅事業では公民館化(オンライン含む)の推進など、新規事業では新たな若者成長支援サービス開始などを計画する。中期経営計画の達成に向けて、事業環境の変化を見据えた新たな成長戦略を着実に実現している。
■Key Points
・学生マンションのトップ企業。全国展開により年々物件管理戸数を増やしながら、100%近い高入居率を維持
・高齢者住宅事業にも注力し、関西を中心にドミナント戦略を展開
・2022年10月期は、期初予想を上回る大幅な増収増益を達成
・高い自己資本比率を維持し、安全性は高い。ROAやROEも高く収益性も高い
・増配と自己株式取得により連結総還元性向20%超を確保。順調な業績と株主還元策により、投資家の評価は高まると見る
・2023年10月期は、不動産賃貸管理事業を中心に増収増益を予想するが、引き続き保守的な予想
・中期経営計画は初年度及び翌年度の好決算を反映して目標数値を2度上方修正。長期ビジョンの第1ステージとして、2023年10月期には過去最高となる売上高631億円、営業利益67億円などを目指し、目標の超過達成に向けて成長戦略を着実に実現
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《YI》
提供:フィスコ