TOKAI Research Memo(3):エネルギー事業は減益となるも、そのほかの主力事業は増益を確保(1)
■TOKAIホールディングス<3167>の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) エネルギー事業
エネルギー事業の売上高は前年同期比21.0%増の71,069百万円、営業利益(間接費用等配賦前営業利益となり、決算短信とは算出方法が異なる。以下、同様)は同17.7%減の3,552百万円と増収減益となった。計画比ではエネルギー価格高騰の影響により、売上高で約58億円、営業利益で約8億円の上振れになったと見られる。
主力のLPガス事業の売上高は前年同期比15.1%増の57,516百万円となった。総販売量は前年同期比3.1%減となったものの平均販売単価が同17.6%上昇したほか、2022年3月期に低調だった機器販売等が増加したことも増収要因となった。販売量の内訳を見ると、家庭用・業務用は前年同期比0.5%増と堅調に推移したが、産業用が同5.8%減と落ち込んだ。特定顧客向けの販売契約が2022年3月で終了したことが要因だが、利幅は薄く利益への影響は軽微である。平均販売単価の上昇は、仕入価格に連動した産業用や卸販売用の価格上昇が主因だが、家庭用についても9.3%の上昇となった。
第3四半期末の顧客件数は前期末比で22千件の増加の737千件となった。増減の内訳を見ると、新規契約獲得で26千件、M&A及びアライアンスによる獲得で14千件となり、中止・解約が18千件であった。また、既存エリア(静岡県及び首都圏)で10千件増、新規エリア(その他地域)で12千件増といずれのエリアにおいても顧客件数が増加した。
都市ガス事業の売上高は前年同期比54.9%増の13,552百万円となり、顧客件数は同4千件増の73千件となった。顧客増加分の大半は持分法適用関連会社であるT&Tエナジー(株)※の契約分となっている。増収要因の大部分は、原料費調整制度による販売単価の上昇によるもので、そのほか機器販売等も回復した。
※2019年に東京電力エナジーパートナー(株)と(株)TOKAIの合弁会社として設立。東海3県にて都市ガスの小売事業等を展開している。
エネルギー事業の営業利益は前年同期比で765百万円の減益となった。増減要因の内訳を見ると、増益要因として顧客件数の増加で6億円、顧客獲得コストの減少で0.2億円、業務用機器販売・その他の増加で6.8億円となり、減益要因として仕入コスト高騰の影響で15.3億円(価格転嫁分20.4億円を控除後)、平均気温の上昇(前年同期比0.2℃上昇)による販売量減少の影響で5.5億円となった。また、計画比での上振れ要因としては、家庭用LPガスの仕入コストが想定を下回ったことや小売料金の価格改定効果に加えて、機器販売の増加などが挙げられる。
(2) 情報通信事業
情報通信事業の売上高は前年同期比3.8%増の39,662百万円、営業利益は同2.0%増の3,563百万円とおおむね計画どおりの進捗となった。
コンシューマー向け事業は売上高で同0.6%減の18,194百万円となり、EBITDA(営業利益+減価償却費)も顧客獲得コストの増加(前年同期比5.3億円増)により、同31.8%減の817百万円となった。ただ、第3四半期だけで見ると売上高は同1.7%増の6,168百万円、EBITDAは同27.2%増の421百万円と増収増益に転じた。第3四半期末の顧客件数は、従来型ISP等が前期末比4千件減の411千件、光コラボが同16千件増の362千件、「LIBMO」(格安SIMサービス)が同9千件増の65千件となった。従来型ISP等が緩やかに減少した一方で、光コラボについては提携先の大手携帯キャリア経由での顧客獲得が増加となったほか、従来の家電量販店経由での顧客獲得も進んだ。また、「LIBMO」についてもデジタルマーケティング施策が奏功したほか、2022年12月より(株)NTTドコモの格安モバイルサービスの1つに採用※されたことも増加要因となった。
※2022年12月21日から全国ドコモショップでエコノミーMVNOのサービスメニューの1つとして取り扱いを開始した。エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)の「OCNモバイルONE」、フリービット<3843>の「トーンモバイル」に続く3つ目のサービスとして「LIBMO」の取り扱いを開始した。
顧客件数が増加した一方で売上高が伸びていないのは、光コラボの1件当たり平均売上高が低下しているためだ。大手携帯キャリアとの提携契約分については光通信サービス部分の売上を除外して計上しているからである(売上総利益への影響はない)。ただ、こうしたマイナス影響も一巡しつつあり、第2四半期以降は前年同期比で若干ながらも増収に転じている点は注目される。
法人向け事業は売上高で前年同期比7.9%増の21,468百万円、EBITDAで同6.4%増の5,182百万円と増収増益基調が続いた。ストック型のクラウドサービスが順調に拡大したほか、受託開発案件の旺盛な受注を背景に増収となった。
営業利益の増減要因を見ると、法人向け事業が増収効果で3.5億円の増益となり、コンシューマー事業では顧客件数の増加で2.5億円の増益、顧客獲得コストの増加で5.3億円の減益要因となった。「LIBMO」については収益化に至っていないものの、顧客獲得コストを除けば増収効果により0.5億円の損益改善要因になったと見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
提供:フィスコ