PCNET Research Memo(1):ITサブスクリプション事業の成長で、上期売上高の過去最高を3期連続で更新
■要約
パシフィックネット<3021>は、IT機器の導入・運用管理・クラウド・セキュリティを「サブスクリプション」モデルで提供し、適正処分に至るまでの包括的な企業の情報システムを支援するIT機器管理BPOサービスのオンリーワン企業である。使用済みIT機器の回収やリユースPC販売などのフロー収益に大きく依存するビジネスモデルから、IT機器やITサービスを「サブスクリプション」で提供するストック収益を柱としたビジネスモデルへの変革を目指し構造改革に果敢に取り組んだ結果、その成果が顕著に表れ、環境変化に強く持続的成長が可能な収益構造に転換している。
1. 2023年5月期第2四半期の連結業績
2023年5月期第2四半期の連結業績は、売上高が3,148百万円(前年同期比21.3%増)、営業利益が165百万円(同11.5%減)、経常利益が162百万円(同11.0%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益が100百万円(同8.6%減)となった。戦略投資によるコスト先行とコロナ禍によるITAD事業の収益減少で減益となったが、売上高の7割を占めるITサブスクリプション事業は順調に拡大し、連結業績で増収となった。国内のビジネス向け新規PC出荷台数は減少している中でも、同社のITサブスクリプション事業は順調に拡大し、同事業を中心としたストック収益は拡大している。ITサブスクリプション事業の2019年5月期から当四半期までの年平均成長率は34.1%となる。一方、ITAD事業は、新型コロナウイルスオミクロン株の感染再拡大や中国ゼロコロナ政策の影響により本格的な回復に至らなかったものの、高スペック品であるサブスクリプション終了品が増加し、優良リユース品として「PCNET Auction」を中心に販売を行い、売上に寄与した。コミュニケーション・デバイス事業は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)以前に主力であった海外旅行市場は本格的な回復に至っていないものの、国内の観光需要の開拓及び大規模工場見学など旅行分野以外への営業を進めた結果、業績は前年同期比で改善した。上期は保守・レンタル・小口販売が中心だったが、足元では大口販売の商談も増えており、下期には販売売上が増加すると同社では想定している。
2. トピックス
ITサブスクリプション事業は成長率が高く、市場規模も大きいほか、ストック収益化や持続的成長が可能であると言える。個人向けと異なり、法人向けPC市場はサブスクリプション(中長期レンタル)・リース・購入といった保有形態があるが、サブスクリプション型の比率が年々拡大している。同社のサブスクリプションは故障対応などのPC管理といった保守サービスを含んでいるほか、中途解約は月単位で可能、さらに経理処理はオフバランスで費用も平準化されるため、企業にとってはメリットが大きく、利用が拡大している。同事業はコロナ禍でも着実に成長していることに加え、今後はPC更新拡大期に入ることから、成長率は一段と上昇する可能性が高いと弊社では考えている。ITAD事業では、2022年11月に、使用済みIT機器処分に関する課題を解決する「排出管理BPOサービス」の提供を開始した。機器及びトレーサビリティ管理にかかる膨大な業務負荷・コスト負担、及び機器からのデータ漏洩等のリスクを解消する。いくつかの大企業との商談が進んでおり、期待は大きいと弊社では考えている。
3. 2023年5月期の連結業績予想
2023年5月期の連結業績予想については、売上高6,100百万円(前期比10.8%増)、営業利益400百万円(同17.0%増)、経常利益375百万円(同12.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益236百万円(同12.5%増)とする期初計画を据え置いている。2023年初めからPC更新期に入るため、サブスクリプションへのシフトを検討するケースが増えると考えられ、重要な成長機会を迎えることになる。
同社は法人利用PCに占めるサブスクリプション台数について、2022年度の300万台強から2025年度には700万台超を予想している。SaaS(クラウドサーバー上のソフトウェアを、インターネットを経由して利用)の普及やサブスクリプションサービスの拡大によって、PCサブスクリプションの認知度も向上しており、導入企業や商談が増加している。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)やセキュリティ対策などでIT人材は慢性的に不足しているため、IT部門の業務負担軽減ニーズが高まっていることから、2025年に向けて予想を大きく上回る可能性もあると考えられる。
■Key Points
・情報システム部門の業務負荷を軽減する「IT機器管理BPOサービス」のオンリーワン企業
・ITサブスクリプション事業は、4年間の年平均成長率34.1%、順調に拡大
・さらに、2023年初めからPC更新拡大期に入る重要な成長機会を迎える
・各事業がすべて直接的にESGにつながる特徴を有する
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
《NS》
提供:フィスコ