明日の株式相場に向けて=FRBパウエル「ハト派傾斜」の真意
きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比79円安の2万7606円と続落。続落といっても、この2日間は株価が下を向いている感じがしない。きょうは前日発表の決算を嫌気されソフトバンクグループ<9984>と任天堂<7974>が急落したほか、ファーストリテイリング<9983>もインデックス売りを浴び下値を探った。だが、この3銘柄で日経平均を110円あまり押し下げたことを考慮すれば、79円安は実質プラス圏で着地したに等しい。プライム市場の値上がり銘柄数も値下がりを250程度上回った。
前日の米国株市場はパウエルFRB議長へのインタビューの最中に乱高下した。パウエル氏は1月の雇用統計については想定外に強い内容であったとの認識を示し、これが金融引き締め長期化の思惑を呼んでいったんは売りを誘ったが、一方で「今年はディスインフレの年」との見解を改めて示した。これを拠りどころに取引終盤にかけて買い直された。市場関係者によると、FRBはバランスシートの縮小を最優先することを決め、毎月950億ドル規模の量的引き締め(QT)を額面通り推進するために、利上げ圧力はあまりマーケットに意識させないように努める方針を固めたという。QTを進めるうえで、株式市場が波乱含みとなってはいろいろと支障をきたすため、それを回避する目的のリップサービスというわけだ。つまり、パウエル氏は見せかけのハト派を演じているということになる。このFRBの政策方針が事実であるなら、売り方にすれば流動性縮小が担保されることにもなり、どこかでマーケットに揺さぶりをかけてくることが予想される。
東京市場では、企業の決算発表が佳境入りとなるなか、発表された内容に応じ個別株は明暗を分ける展開で、決算跨(また)ぎの短期売買も引き続き活発だ。しかし、好調な決算を発表しても市場コンセンサスに届かなければ売られるようなケースも依然として目立つ。それならば何もしないで傍観している方が賢明ということにもなる。
決算発表済みの銘柄で、目先の値動きを追求せず内容が良いものを焦らず拾っておくのは王道といえる。動きは地味だが、好業績割安でなおかつ株価位置が中長期でみて大底圏にある東邦ガス<9533>はその有力対象。同社は都市ガス3位に位置するが、脱炭素を商機と捉え、ガスと水素の混焼設備の供給に乗り出す構え。NFKホールディングス<6494>の100%子会社である日本ファーネス(横浜市神奈川区)と協業で技術を磨くなど、材料性も内包している。また、中小企業を主要顧客に光回線サービスを展開する東名<4439>も好決算発表後に急動意したが、その後も株価はジリジリと右肩上がりのチャートを維持している。電力小売り事業への展開が功を奏し23年8月期営業利益は前期比4.1倍の13億6000万円を見込んでいる。これは過去最高益大幅更新となる。
一方、業績に絡まない独自の材料でボラティリティを高めているのがバイオ関連 の一角。当欄では1月下旬にも触れたが、新興系のバイオ株は先行投資型ゆえ足もとの業績は不問とされるケースも多く、その分だけ材料主導の相場に乗りやすい面がある。免疫生物研究所<4570>やDNAチップ研究所<2397>などは人気化したが、こればかりは材料が発現しないと相場にはなりにくく、銘柄観を駆使して先回りして買うという手段が利きにくい。
ただし、いったん買い材料に反応して激しく動意すると、その後も波状的に人気を集める“確変モード”突入のパターンも少なくない。バイオ関連は割り切りでの対処が条件となるが、この時期マーケットの関心は高く目を配っておきたいセクターではある。例えばセルシード<7776>の300円台半ばやナノキャリア<4571>の200円絡みの水準はマークしておく価値がありそうだ。また、「幹細胞リプログラミング」など先端バイオ分野に光が当たるなか、細胞ゲノム関連のベンチャーには思惑が波及しやすい。クリングルファーマ<4884>は決算発表が目前で目先は手が出しにくいものの、異色の強調展開を続けており、今後の株価動向に興味が湧く。
あすのスケジュールでは、1月のマネーストック、1月のオフィス空室率、22年12月の特定サービス産業動態統計、1月の工作機械受注、6カ月物国庫短期証券及び10年物物価連動国債の入札など。なお、国内主要企業の決算発表ではINPEX<1605>、明治ホールディングス<2269>、日本製鉄<5401>、トヨタ自動車<7203>、東京エレクトロン<8035>、三菱地所<8802>、NTT<9432>、セコム<9735>など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
前日の米国株市場はパウエルFRB議長へのインタビューの最中に乱高下した。パウエル氏は1月の雇用統計については想定外に強い内容であったとの認識を示し、これが金融引き締め長期化の思惑を呼んでいったんは売りを誘ったが、一方で「今年はディスインフレの年」との見解を改めて示した。これを拠りどころに取引終盤にかけて買い直された。市場関係者によると、FRBはバランスシートの縮小を最優先することを決め、毎月950億ドル規模の量的引き締め(QT)を額面通り推進するために、利上げ圧力はあまりマーケットに意識させないように努める方針を固めたという。QTを進めるうえで、株式市場が波乱含みとなってはいろいろと支障をきたすため、それを回避する目的のリップサービスというわけだ。つまり、パウエル氏は見せかけのハト派を演じているということになる。このFRBの政策方針が事実であるなら、売り方にすれば流動性縮小が担保されることにもなり、どこかでマーケットに揺さぶりをかけてくることが予想される。
東京市場では、企業の決算発表が佳境入りとなるなか、発表された内容に応じ個別株は明暗を分ける展開で、決算跨(また)ぎの短期売買も引き続き活発だ。しかし、好調な決算を発表しても市場コンセンサスに届かなければ売られるようなケースも依然として目立つ。それならば何もしないで傍観している方が賢明ということにもなる。
決算発表済みの銘柄で、目先の値動きを追求せず内容が良いものを焦らず拾っておくのは王道といえる。動きは地味だが、好業績割安でなおかつ株価位置が中長期でみて大底圏にある東邦ガス<9533>はその有力対象。同社は都市ガス3位に位置するが、脱炭素を商機と捉え、ガスと水素の混焼設備の供給に乗り出す構え。NFKホールディングス<6494>の100%子会社である日本ファーネス(横浜市神奈川区)と協業で技術を磨くなど、材料性も内包している。また、中小企業を主要顧客に光回線サービスを展開する東名<4439>も好決算発表後に急動意したが、その後も株価はジリジリと右肩上がりのチャートを維持している。電力小売り事業への展開が功を奏し23年8月期営業利益は前期比4.1倍の13億6000万円を見込んでいる。これは過去最高益大幅更新となる。
一方、業績に絡まない独自の材料でボラティリティを高めているのがバイオ関連 の一角。当欄では1月下旬にも触れたが、新興系のバイオ株は先行投資型ゆえ足もとの業績は不問とされるケースも多く、その分だけ材料主導の相場に乗りやすい面がある。免疫生物研究所<4570>やDNAチップ研究所<2397>などは人気化したが、こればかりは材料が発現しないと相場にはなりにくく、銘柄観を駆使して先回りして買うという手段が利きにくい。
ただし、いったん買い材料に反応して激しく動意すると、その後も波状的に人気を集める“確変モード”突入のパターンも少なくない。バイオ関連は割り切りでの対処が条件となるが、この時期マーケットの関心は高く目を配っておきたいセクターではある。例えばセルシード<7776>の300円台半ばやナノキャリア<4571>の200円絡みの水準はマークしておく価値がありそうだ。また、「幹細胞リプログラミング」など先端バイオ分野に光が当たるなか、細胞ゲノム関連のベンチャーには思惑が波及しやすい。クリングルファーマ<4884>は決算発表が目前で目先は手が出しにくいものの、異色の強調展開を続けており、今後の株価動向に興味が湧く。
あすのスケジュールでは、1月のマネーストック、1月のオフィス空室率、22年12月の特定サービス産業動態統計、1月の工作機械受注、6カ月物国庫短期証券及び10年物物価連動国債の入札など。なお、国内主要企業の決算発表ではINPEX<1605>、明治ホールディングス<2269>、日本製鉄<5401>、トヨタ自動車<7203>、東京エレクトロン<8035>、三菱地所<8802>、NTT<9432>、セコム<9735>など。(銀)
出所:MINKABU PRESS