TOKAI Research Memo(6):2023年3月期業績は売上高、営業利益で会社計画を達成見込み
■今後の見通し
1. 2023年3月期の業績見通し
TOKAIホールディングス<3167>の2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比5.8%増の223,000百万円、営業利益で同8.2%減の14,500百万円、経常利益で同10.1%減の14,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同7.5%減の8,300百万円と期初計画を据え置いた。第2四半期までの進捗率は売上高で46.7%、営業利益で29.3%、経常利益で17.0%となっており、直近3年間の平均進捗率(売上高46.2%、営業利益35.8%、経常利益35.9%)と比較すると、売上高は順調に進捗している一方で、営業利益、経常利益はやや遅れ気味となっている。
下期についてはエネルギー価格の値上げが進むことから、売上高については計画を上振れする可能性が高く、営業利益も第2四半期まで計画を上回るペースで推移していることから、通期でも計画を確保できるものと予想される。一方、経常利益に関しては第2四半期に計上した持分法投資損失が響き、未達となる可能性が高い。なお、継続取引顧客件数については前期末比101千件増の3,295千件を計画しているが、情報通信事業やCATV事業の顧客件数が第2四半期まで想定を上回るペースで伸長していることから、3,300千件前後まで増加する可能性があると弊社では見ている。
なお、M&Aの取り組みとしてグループのCATV事業を担う(株)TOKAIケーブルネットワークが、2022年10月に沖縄ケーブルネットワーク(株)を子会社化した(出資比率70.0%)。顧客件数は約100千件で、収益規模は売上高で約16億円、営業利益で約1億円程度となるが、2022年3月期に光化投資を実施したことで減価償却費が増加しており、2023年3月期の営業利益は収支均衡水準が見込まれている。また、同年10月にTOKAIコミュニケーションズが物流倉庫の管理システムを開発する(株)ジェイ・サポートを子会社化した(出資比率100.0%)。今後、同社グループにおける物流業界の顧客企業に対して、ジェイ・サポートのシステムを導入提案していくほか、ジェイ・サポートの顧客企業に対してTOKAIグループのソリューションサービスの導入提案を進める予定である。ジェイ・サポートの売上規模は約4億円と小規模だが、グループ化し「ヒト・モノ・カネ」を支援することで事業規模の拡大を図る方針だ。
(1) エネルギー事業
エネルギー事業の売上高は前期比5.2%増、営業利益は同27.0%減と増収減益を見込む。顧客件数はLPガス事業が前期末比42千件増の757千件、都市ガス事業が同9千件増の79千件(T&Tエナジー契約分による増加)となり、LPガス事業の純増数は前期の34千件から拡大する計画となっている。2023年3月期第2四半期までの進捗は計画を1千件程度下回っているが、LPガス事業者にとって市場環境の厳しさが増すなかで、下期はM&A・アライアンス戦略を強化し、遅れを挽回する方針となっている。
営業利益の増減要因を見ると、減益要因としては仕入価格上昇の影響で51億円、人件費・経費の増加で9億円、世帯当たり消費量の減少で5億円(年間平均気温が前期比0.2度上昇する前提)となり、増益要因として販売価格の値上げで20億円、顧客件数の増加で8億円、顧客獲得維持コストの減少で9億円等としている。仕入価格の指標となるFOB価格※は2022年4月の940ドル/トンをピークに12月は650ドル/トンまで低下するなど沈静化しているものの、為替が円安に進んだこともあって、期初計画の想定レートよりも上回る水準となっているもようだ。そのため、仕入価格上の影響額は60億円程度に拡大する見通しとなっている。一方で、家庭用LPガスの料金も値上げが進みつつあることから、一部は値上げで相殺できると見られる。このため、売上高については会社計画を上回る公算が大きいが、営業利益では計画並みに落ち着くものと予想される。なお、仕入価格上昇の影響額が大きいのは、2022年3月期の仕入価格が実勢価格よりも低い水準で予約できていたためだ。2022年3月期のFOB価格は円建て換算で78千円/トンであったが、予約を進めていた2021年3月期の平均価格は44千円/トンの水準だった。2022年4月~10月の平均価格は98千円/トンだが、10月は85千円/トンまで低下している。2024年3月期のFOB価格が低下すれば、仕入及び販売価格のタイムラグにより、利益面では増益要因となる。
※FOB価格:サウジアラビアから輸入業者への販売価格。
(2) 情報通信事業
情報通信事業の売上高は前期比3.5%増、営業利益は同8.0%増を見込んでいる。このうち、コンシューマー向け事業については売上高で前期比微減、営業利益で同微増益を見込んでいる。顧客件数は従来型ISP等と光コラボの合計で前期末比横ばいの760千件、「LIBMO」で同14千件増の69千件を計画していたが、第2四半期までで従来型ISP等と光コラボの合計で772千件と計画を超過しており、「LIBMO」についても2022年12月21日から新たに全国のドコモショップで取り扱いを開始したことから、その動向次第で上積みできる可能性が出てきている。ドコモショップではエコノミーMVNOとしてエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)の「OCNモバイルONE」、フリービット<3843>の「トーンモバイル」を取り扱っているが、「LIBMO」が3つ目のサービスとして加わった。「Ahamo」よりもさらに低料金でスマートフォンを利用したいユーザー向けに訴求していく。以上から、売上高については当初計画を確保できる見通しだが、利益面では第2四半期までに膨らんだ顧客獲得費用を下期にどのようにコントロールするかによって変わってくるものと思われる。
一方、法人向け事業は前期比1ケタ台後半の増収増益となる見通し。第2四半期末時点でクラウドサービス等のストック型ビジネスの受注残高が前期末比で15億円増加しているほか、受託開発ビジネスについても同5億円増加するなど、豊富な受注残を抱えていることから通期も計画どおりの増収増益が見込まれる。
(3) CATV事業
CATV事業の売上高は前期比5.6%増、営業利益は同3.2%増と着実な増収増益を見込んでいる。顧客件数は沖縄ケーブルネットワークの子会社化による上積み分も含めて放送サービス、通信サービス合計で前期末比42千件増の1,273千件を計画していたが、足元の顧客件数は計画をやや上回るペースで推移しており、売上高については若干上振れする可能性がある。
(4) 建築設備不動産事業、アクア事業、その他
建築設備不動産事業の売上高は前期比13.4%増、営業利益は同3.2%増と増収増益を見込んでいたが、第2四半期までの状況を勘案すると計画の達成は厳しそうで、減収減益となる可能性もある。ただ、ここ数年M&Aで取得したグループ会社間のリソースを活用することで外注費の削減などに取り組んでおり、今後徐々にシナジーが顕在化してくるものと期待される。
アクア事業の売上高は前期比0.9%増、営業利益は同83.1%増と4期ぶりの増益に転じる見通し。顧客件数は前期末比1.5千件増の167千件と微増で計画していたが、第2四半期までに計画を達成しており、下期もさらに件数を上積みする方針である。商業施設での対面営業だけでなく、デジタルマーケティングを強化することで顧客獲得コストを引き下げ、収益性の改善も同時に進める方針だ。その他については、介護事業や婚礼催事事業を中心に前期比7.9%増と増収基調が続く見通し。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《NS》
提供:フィスコ