明日の株式相場に向けて=「CPIショック」を待つロング筋
きょう(10日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比270円安の2万7446円と続落。前日の米国株市場ではNYダウが600ドルを超える下げをみせただけに、さすがに東京市場もリスクを積極的に取りにいく流れとはなりにくい。もっとも下値を売り叩くような動きも見られなかった。日経平均は朝方に350円近い下げをみせる場面もあったが、その後は下げ渋った。
米中間選挙は上院が想定以上に大接戦となった。スイング・ステートで民主党がうまく戦ったというよりは、共和党が勇み足で土俵の外に出てしまったような印象が強い。そのうちジョージア州では両陣営の候補者ともに過半数を確保できず、12月6日に決選投票を行うことになった。ここまで上院での多数党が決まらないというケースも考えられ、またひと悶着ありそうな気配も漂う。今回の選挙は、バイデン大統領の不人気を考えれば民主党が大健闘したようにも映るが、本質的に共和党が敵にしたのは、民主党ではなく「反トランプ層」ということだったようだ。とりわけ米メディアが反トランプの急先鋒であるために、スポットライトがバイデン氏ではなくトランプ氏に集中したことが民主党にはむしろ幸運だった。トランプ氏が15日に重大発表をすると宣言したことも、次期大統領選への出馬表明とほぼイコールであるため、眠っていた反トランプ票を呼び覚ます皮肉な作用をもたらした。
ただし、市場関係者からは「この中間選挙の結果は株式市場には、もはや大きな影響は及ぼさないだろう」という声が相次いでいる。下院を民主党が逆転勝利するというようなどんでん返しが起こらない限り、上院がどっちに転んでも“ねじれ現象”は生じる。バイデン政権の政策が通りにくくなることが、本当に株式市場にプラスなのかどうかは置くとして、現時点で選挙後の勢力変化は織り込まれている状態で、株価へのインパクトは少ない。
前日の米株市場の下落も中間選挙の結果を気にしたというよりは、日本時間今晩発表される10月の米CPIを気にして保有株のポジションを落とした、というのが本当のところであろう。今回のCPIはエネルギー価格が反映される総合指数の方は鈍化が確実視されるが、商品とサービス価格に特化したコア指数の方がピークアウトするかどうかに耳目が集まる。事前コンセンサスは前年比6.5%の上昇で、9月の6.6%からは若干減速する見通しだが、これが例えば6.7%と逆に加速したような場合は、NYダウはいったん大きく下押す公算が大きい。ところが、売り方ではなく買い方がこうしたケースを望んでいるという。11月以降にCPI伸び率は鈍化する可能性が高いため、今のうちに株価の安いところを拾う、いわゆる「夜明け前に買いたい」という潜在的ニーズが強い。日米株式が首尾よく年末高のシナリオで進むかどうかは神のみぞ知るだが、押し目買いを狙うという感覚が芽生えているのは、最近のマーケットでは久しぶりのことといえるかもしれない。
個別ではeスポーツ関連で脚光を浴びているカヤック<3904>が引き続き強い。きょうは上ヒゲをつけたが、全体相場に逆行し一時14%近い上昇をみせる場面もあった。このほか好決算銘柄では前日にも取り上げたオーナンバ<5816>がいい動きをみせている。
また、好決算を発表した鉄鋼株はマークしておきたい。今の相場の流れからは、なかなか食指の動きにくいセクターではあるものの、株価指標面で依然としてイレギュラーに安い水準に放置されている。これが海運であればコンテナ船運賃市況バブルの反動を警戒するという理屈もつくが、鉄鋼はバブル的に買われた形跡はない。中山製鋼所<5408>、東京鐵鋼<5445>、新日本電工<5563>辺りの押し目は買い場提供となっている可能性がある。
あすは、オプションSQ(株価指数オプション11月物の特別清算指数)算出日となる。このほか10月の企業物価指数が朝方取引開始前に日銀から開示され、前場取引時間中には3カ月物国庫短期証券の入札も行われる。海外では、中国は「独身の日」。また、マレーシアの7~9月期GDP、英国の7~9月期GDP、11月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)などが注目される。なお、ベテランズ・デーの祝日に伴い米債券市場・外国為替市場は休場となる。国内主要企業の決算発表では、大成建設<1801>、三越伊勢丹ホールディングス<3099>、楽天グループ<4755>、オリンパス<7733>、住友不動産<8830>、ソフトバンクグループ<9984>などが予定されている。(銀)
出所:MINKABU PRESS
米中間選挙は上院が想定以上に大接戦となった。スイング・ステートで民主党がうまく戦ったというよりは、共和党が勇み足で土俵の外に出てしまったような印象が強い。そのうちジョージア州では両陣営の候補者ともに過半数を確保できず、12月6日に決選投票を行うことになった。ここまで上院での多数党が決まらないというケースも考えられ、またひと悶着ありそうな気配も漂う。今回の選挙は、バイデン大統領の不人気を考えれば民主党が大健闘したようにも映るが、本質的に共和党が敵にしたのは、民主党ではなく「反トランプ層」ということだったようだ。とりわけ米メディアが反トランプの急先鋒であるために、スポットライトがバイデン氏ではなくトランプ氏に集中したことが民主党にはむしろ幸運だった。トランプ氏が15日に重大発表をすると宣言したことも、次期大統領選への出馬表明とほぼイコールであるため、眠っていた反トランプ票を呼び覚ます皮肉な作用をもたらした。
ただし、市場関係者からは「この中間選挙の結果は株式市場には、もはや大きな影響は及ぼさないだろう」という声が相次いでいる。下院を民主党が逆転勝利するというようなどんでん返しが起こらない限り、上院がどっちに転んでも“ねじれ現象”は生じる。バイデン政権の政策が通りにくくなることが、本当に株式市場にプラスなのかどうかは置くとして、現時点で選挙後の勢力変化は織り込まれている状態で、株価へのインパクトは少ない。
前日の米株市場の下落も中間選挙の結果を気にしたというよりは、日本時間今晩発表される10月の米CPIを気にして保有株のポジションを落とした、というのが本当のところであろう。今回のCPIはエネルギー価格が反映される総合指数の方は鈍化が確実視されるが、商品とサービス価格に特化したコア指数の方がピークアウトするかどうかに耳目が集まる。事前コンセンサスは前年比6.5%の上昇で、9月の6.6%からは若干減速する見通しだが、これが例えば6.7%と逆に加速したような場合は、NYダウはいったん大きく下押す公算が大きい。ところが、売り方ではなく買い方がこうしたケースを望んでいるという。11月以降にCPI伸び率は鈍化する可能性が高いため、今のうちに株価の安いところを拾う、いわゆる「夜明け前に買いたい」という潜在的ニーズが強い。日米株式が首尾よく年末高のシナリオで進むかどうかは神のみぞ知るだが、押し目買いを狙うという感覚が芽生えているのは、最近のマーケットでは久しぶりのことといえるかもしれない。
個別ではeスポーツ関連で脚光を浴びているカヤック<3904>が引き続き強い。きょうは上ヒゲをつけたが、全体相場に逆行し一時14%近い上昇をみせる場面もあった。このほか好決算銘柄では前日にも取り上げたオーナンバ<5816>がいい動きをみせている。
また、好決算を発表した鉄鋼株はマークしておきたい。今の相場の流れからは、なかなか食指の動きにくいセクターではあるものの、株価指標面で依然としてイレギュラーに安い水準に放置されている。これが海運であればコンテナ船運賃市況バブルの反動を警戒するという理屈もつくが、鉄鋼はバブル的に買われた形跡はない。中山製鋼所<5408>、東京鐵鋼<5445>、新日本電工<5563>辺りの押し目は買い場提供となっている可能性がある。
あすは、オプションSQ(株価指数オプション11月物の特別清算指数)算出日となる。このほか10月の企業物価指数が朝方取引開始前に日銀から開示され、前場取引時間中には3カ月物国庫短期証券の入札も行われる。海外では、中国は「独身の日」。また、マレーシアの7~9月期GDP、英国の7~9月期GDP、11月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)などが注目される。なお、ベテランズ・デーの祝日に伴い米債券市場・外国為替市場は休場となる。国内主要企業の決算発表では、大成建設<1801>、三越伊勢丹ホールディングス<3099>、楽天グループ<4755>、オリンパス<7733>、住友不動産<8830>、ソフトバンクグループ<9984>などが予定されている。(銀)
出所:MINKABU PRESS