ワコム---17/3期は減収、赤字計上。中期的な利益成長回復に向けた過渡期となる今期は販管費のコントロールが主要課題に
ワコム<6727>は10日、17年3月期(16年4月-17年3月)連結決算を発表。売上高が前期比8.1%減の713.14億円、利益面では、グローバルIT基盤整備に関わる販管費増により営業損失が11.71億円(前年同期は36.64億円の利益)、経常損失が8.70億円(同37.77億円の利益)となり、さらに、3月に決定したそのITシステムに関わる無形固定資産の一部減損処理 42.24億円に伴って親会社株主に帰属する当期純損失が55.34億円(同23.10億円の利益)となった。
ブランド製品事業は、クリエイティブ市場におけるプロ向け次世代製品ラインの開発と市場投入をおこない、一般コンシューマー向けにもクラウドを活用した製品ラインを拡充した。一方、円高の影響、競争関係の変化、製品サイクルの移行期の影響による需要の減少及び一部新製品の市場投入遅れなどにより大幅減収となった。
テクノロジーソリューション事業は、サムスン社のGalaxy Note7が品質問題により10月に生産中止となったことの影響を受けた。一方で、タブレット端末向けデジタルペンの量産拡大を進めるとともに、新規顧客の拡大に取り組んだ。さらに、マイクロソフト社のウィンドウズ 10 OS搭載のタブレット端末向けや、グーグル社のクローム(Chrome)OS対応のノートPC向けにそれぞれ共通で使用できる標準ペンの開発なども進めた。しかし、スマートフォン向けでの販売の減少及び円高の影響を受けて、売上高は微減となった。
18年3月期通期については、17年3月期に投入した新製品の拡販などにより、売上高が前期比7.7%増の768.00億円、営業利益が18.00億円、経常利益が17.40億円、親会社株主に帰属する当期純利益が11.30億円を見込んでいる。17年3月期に40.3%まで悪化した販管費の対売上高比率も約37%への改善を見込むが、成長戦略とコスト構造のバランスを見直すことにより、中期的には更なる改善が求められる。19年3月期からの新経営体制移行を控えて、その道筋を描く時期にあたる今期の大きな経営課題とみられる。なお、期末配当は引き続き6円を予定している。
《TN》
提供:フィスコ