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【市況】トランプ政権の経済政策の鍵を握るベッセント財務長官【フィリップ証券】

 第2次トランプ政権の発足から200日が経過し、トランプ政権の経済政策についても全貌が見えつつある。そのキーパーソンであるベッセント財務長官が8/11付日本経済新聞を通じてその内容を日本人に向けてわかりやすく説明している。

 第1に、「トランプ政権の経済政策は税制、貿易、規制緩和の3本柱」と述べている。その中でも規制緩和については、新しい規制をつくる際には10の規制を撤廃するようにトランプ大統領が命じている。米国株投資においては、規制緩和の動向への感度を高め、恩恵を受けそうな銘柄に目を向けるのが得策だろう。8/7にも、米国の確定拠出年金(DC)で暗号資産、未公開株、不動産といったオルタナティブ(代替投資)資産への投資に関し、トランプ氏が関係省庁に規制を見直すよう指示する大統領令に署名。株式・債券で運用してきた米国のDCマネー約12兆ドルの運用対象が広がれば、ブラックストーン<BX>やアポロ・グローバル・マネジメント<APO>などオルタナティブ資産運用企業へ追い風だろう。

 第2に、貿易政策を関税政策へと転換した真の理由として、「重要なのは国際収支のリバランス(再均衡)にある」としている。「関税は角氷(アイスキューブ)のように溶けていくべき存在」とみなし、米国に生産拠点が戻れば輸入量も減って、国際不均衡の是正につながることを期待している。海外資金を証券投資だけでなく、製造業の米国回帰に繋がる直接投資に向けてもらう試みへの本気度は、日米関税合意で取り決められた対米投資基金5500億ドルからも窺われる。米国を主な生産拠点とする製造業、および製造工場を建設するためのインフラ関連企業などは、中長期的に見ても有望だろう。

 第3に、「強い基軸通貨ドル」を維持する政策は、他の通貨との相対的な市場レートを意味するのではなく、海外マネーの米国投資のための環境整備政策であり、製造業の国内回帰につながる直接投資に向けてもらうことが目的と述べている。基軸通貨に関する原則を明確に打ち出すことで、米ドルに対する市場の不信感を払拭する効果が見込まれる。米国債に関して米金融大手を対象とした厳格な自己資本比率規制の緩和に加え、国債を裏付けとする暗号資産「ステーブルコイン」の普及促進も、米ドルに対する信頼を後押しすると考えられる。

 最後に、2026年5月に任期が満了する米FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長の後任人事について、次期議長の選定プロセスを主導するとみられるベッセント氏は、「経済を円滑に機能させる金融政策の独立性が脅かされることを懸念する」と述べている。同氏が、FRBが環境問題や金融規制など、金利を動かす金融政策以外の分野に手を広げることが独立性を危うくすると見ている点は注目される。トランプ氏の度重なる圧力にもかかわらず、ベッセント氏がFRBの独立性を重視している点は市場にとって安心材料だろう。


■パランティア・テクノロジーズ~官民一体AI推進策、米商業の伸び加速

 データ解析ソフトの米パランティア・テクノロジーズ<PLTR>が8/4に発表した2025年4-6月期決算は売上高が前年同期比48%増の10.03億USD、純利益が2.4倍の3.26億USD。トランプ米政権に接近して米軍との契約を増やしているほか、民間企業向けのAI(人工知能)関連サービスが伸びたことを受け、全体の7割を占める米国売上高のうち政府向けが53%増、米民間企業向けが93%増と拡大している。

 同社は技術者を客先に派遣して顧客の課題解決に伴走する、密着型販売手法をとり、単価が高く解約されにくい。米陸軍は、同社と今後10年間で最大100億USDのソフトの調達契約を結んだ模様。これまで75に分かれていた契約を同社に一本化することでコスト削減と同時に米兵がデータを扱いやすくする効果を見込む。


【タイトル】


参考銘柄


アップラビン<APP> 市場:NASDAQ・・・2025/11/6に2025/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定

・2011年設立。アプリ開発者、モバイルゲーム開発者向けに、アプリのマーケティングと収益化を支援するソフトウェアプラットフォームとAI(人工知能)を活用したソリューションを提供する。

・8/6発表の2025/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比77.1%増の12.59億USD(会社予想11.95-12.15億USD)、非GAAPの調整後EBITDAが同99.2%増の10.18億USD(同9.70-9.90億USD)。フリーキャッシュフローが72%増の7.68億USDへ拡大したことを背景に、90万株(3.41億USD)の自社株買いを実施。

・2025/12期3Q(7-9月)会社計画は、売上高が前年同期比10-12%増の13.20-13.40億USD、調整後EBITDAが同48-51%増の10.70-10.90億USD。6月末にモバイルアプリ事業を4億USDで売却し広告事業に集中。同社の広告仲介はモバイルゲーム・アプリと広告ネットワーク間の広告インプレッションの約70%を仲介する強みに加え、コネクテッドTV向けに業界を問わず消費者直販ブランドをカバーする。


カミンズ<CMI> 市場:NYSE・・・2025/11/5に2025/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定

・1919年設立のエンジンメーカー。主にディーゼルおよび天然ガスエンジン、関連部品、発電機の設計、生産、販売を行う。2019年に水素発電・貯蔵・燃料電池のハイドロジェニックス社を買収。

・8/5発表の2025/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比1.7%減の86.43億USD、EPSが同22.2%増の6.43USD、営業キャッシュフローが前年同期の赤字から7.82億USDへ黒字転換。部品、エンジン、Accelera(水素発電・燃料電池関連)が減収・減益の一方、流通、発電システムが増収・増益。

・経済環境の不確実性が続いていることから通期会社計画を引き続き未公表としている。同社は製品販売に加え、アフターサービスやメンテナンス、部品供給などの収益源により安定したキャッシュフローを確保している。主要生産拠点を米国に置き、国内製造に注力していることからトランプ関税による輸入コストの上昇は同社の競争力を高め、国内市場シェア拡大を後押しする可能性がある。


コーニング<GLW> 市場:NYSE・・・2025/10/29に2025/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定

・1851年創業。世界最大級のガラス製品メーカーであり、液晶ディスプレイ用ガラスパネル、光通信の光ファイバー、ガソリン車排出微粒子制御用のセラミック基板・フィルター製品などが主力製品。

・4/29発表の2025/12期1Q(1-3月)は、非GAAPのコア売上高が前年同期比12.2%増の40.45億USD(会社予想38.5億USD)、コアEPSが同27.7%増の0.60USD(同0.55-0.59USD)。光通信事業の大企業向けネットワークは、データセンターで活用される生成AI向け新製品への需要増により81%増収。

・2025/12期3Q(7-9月)会社計画は、コア売上高が前年同期比13%増の42億USD、コアEPSが同17-24%増の0.63-0.67USD。アップル<AAPL>は8/7、iPhoneとApple Watch用のカバーガラスの製造を100%米国内に移管する計画の一環で同社との提携拡大に伴う25億USD規模の投資を発表。ケンタッキー州にある同社工場の大規模拡張に向けられる見通し。アップル関連としても注目される。


MPマテリアルズ<MP> 市場:NYSE

・2017年設立の鉱山企業。北米最大のレアアース(希土類)鉱山のカリフォルニア州マウンテンパス鉱山を所有・運営するほか、周辺地域の鉱業権、希土類鉱物処理・開発に伴う知的財産権を保有。

・8/7発表の2025/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比83.6%増の57百万USD、非GAAPの調整後EBITDAが▲12百万USDへ赤字幅縮小。マテリアル事業(売上比率65%)は増収、調整後EBITDAの赤字幅縮小。磁石事業は新たに19百万USDの売上、調整後EBITDAが8百万USDへ黒字転換。

・2025/12期会社計画は未公表。同社所有のマウンテンパス鉱山は世界のレアアース年間消費量の約15%を生産。米国防総省は、米国が中国に依存するレアアース供給量を減らし、国内供給網を強化する戦略の一環として同社と重要なパートナーシップを締結。さらに、7/15に同社はアップルとの間でもレアアース磁石を供給するための5億USD規模の契約を発表すると報道された。


ショッピファイ<SHOP> 市場:NASDAQ・・・2025/10/30に2025/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定

・2004年にカナダで設立。フェイスブックやインスタグラム上で商品の販売が可能となるネットショップ、およびEコマースサイト構築用のクラウド型ECプラットフォームを運営。越境ECにも事業を展開。

・8/6発表の2025/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比31.1%増の26.80億USD(会社予想10%台半ばの増収率)、出資株式の影響を除く非GAAPの調整後純利益が同16.2%増の3.38億USD。AI活用もあり、流通総額(GMV)が全体で31%増加。うち欧州が為替の影響を除くベースで42%増加。

・2025/12期3Q(7-9月)会社計画は、売上高伸び率が前年同期比20%台半ば~後半、フリーキャッシュフロー・マージンが10%台半ば~後半(2Q実績16%)。2023年にロジスティクス事業を売却し、Eコマースインフラの強化に注力。AI活用の深化による利益率向上、中小企業向けから大企業向け市場への進出、広告ビジネスの拡大、およびグローバル展開の強化などを通じた成長が見込まれる。


サウンドハウンドAI<SOUN> 市場:NASDAQ・・・2025/11/12に2025/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定

・2005年設立。自動音声認識、自動コンテンツ認識、テキスト読み上げ、文字起こしなどの機能を有する音声AIソリューションを提供。OpenAIのChatGPT言語モデルと連携したデータ取得アプリも扱う。

・8/7発表の2025/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比217%増の42百万USD、非GAAPの調整後EPSが前年同期▲0.04USDから▲0.03USDへ赤字幅縮小。調整後粗利益率は8.1ポイント低下し58.4%。6月末時点における現金および現金同等物の残高は14%増の2.30億USD、負債はゼロ。

・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比89-110%増の160-178百万USD(従来計画157-177百万USD)とした。同社は音声を即座に意味として理解することをコア技術とする。この技術は従来の音声認識システムと異なり、高精度かつ低遅延で自然な対話を可能にする。さらに、深層学習や大規模言語モデルの活用により、文脈や多言語対応を強化し、様々な分野での応用が広がっている。


執筆日:2025年8月12日


フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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