【特集】パレスチナ人追放を巡り原油相場は緊迫化へ、次はイランが火種に <コモディティ特集>
minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司パレスチナ人の強制移住計画は常軌を逸している。特定の地域を蹂躙し生き残りを追い出した後、領土を一方的に奪うのは現代ではあり得ない。この米国の計画を全面的に受け入れているのは、イスラエルだけである。世界全体がほぼ反対していると言って差し支えないが、トランプ米大統領は米国の影響力を最大限に行使して、この計画を成し遂げようとする可能性が高い。トランプ米大統領は米国の立て直しと、同盟国であるイスラエルの未来を最優先しようとしている。パレスチナ自治区ガザを巡り衝突が再び発生するのは時間の問題であり、原油市場はまた緊迫化するだろう。
●欧米中心の世界秩序の終わり
ガザ再建計画を巡り、トランプ米大統領は同盟国に対して賛同を要求しておらず、欧州各国や日本など、従来の同盟国はこの傍若無人な計画をただ傍観しているだけである。トランプ米大統領が批判に耳を貸す様子もない。人権侵害が甚だしいガザ再建計画は西側の秩序に沿っておらず、対話や協調、結束が礎にあった世界秩序は過去のものとなったのではないか。主要7ヵ国(G7)であれ、国連であれ、各国が主張を繰り広げる国際的な場や枠組みは、米国にとって意味を失った可能性がある。
ウクライナの停戦協議を見ていても、欧米中心の世界秩序が終わったと感じる。トランプ米大統領はロシアのみとウクライナ停戦を協議しており、英国やドイツ、フランス、カナダ、日本など西側各国は口を挟む余地もない。米国はウクライナに兵器や資金を供給した見返りを要求しており、米国のカネを回収することが最優先である。ウクライナの復興や再建はほとんど話題にすらならない。西側や東側、BRICSといった枠組みに縛られることなく、トランプ米大統領はウクライナに要求を突きつけている。
●イランはトランプ氏との対話を拒否
トランプ米大統領はグリーンランドやパナマ運河、カナダなどを手に入れると豪語したものの、実際のところあまり興味はなさそうだ。米国の目下の関心はウクライナ停戦や、ウクライナの鉱物資源に向いており、この問題が片付けばガザ再建に注力する可能性が高い。ただ、米国がウクライナの資源を手に入れるのは容易かもしれないが、ガザからパレスチナ人を追い出すためには、イランを継続的に黙らせることがどうしても必要である。イランは約束を守らないトランプ米大統領との対話を拒否しているため、米国やイスラエルが望むガザ再建が穏便に実現する可能性はほぼない。
大言壮語を繰り返すトランプ米大統領は、国際的な枠組みに無関心で、黙々と自国の利益を追求する攻撃的な人物である。覇権国である米国は世界的な枠組みによって自らを規定し、協調性を維持するために行動を縛ってきたが、この価値観にとらわれることをやめたのならば、イスラエルの望みを叶えるよう行動を開始するだろう。ウクライナに資源をよこせと迫る米国は、イスラエルにだけは決して見返りを求めない。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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