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【特集】時価総額1兆ドル突破! Amazon事業の3本柱で躍進 アマゾン・ドット・コム⑦ Buy&Hold STORIES-4-

Buy and hold Stories

アマゾン・ドット・コム<AMZN>
第3章Part7


第3章 膨張するアマゾン帝国、「4本目の柱」は何か?


7. 時価総額1兆ドル突破! Amazon事業の3本柱で躍進



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※株価単位はドル。株式分割を考慮後の修正値

アマゾン成長をけん引する3つの事業

 「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の事業収支を公開し、世界最大のオンライン・ストアにとどまらず、インターネット・テクノロジーでも世界最先端の企業であることを証明したアマゾン・ドット・コム<AMZN>。この頃から米国の株式マーケットは、同社にグーグル(現・アルファベット)<GOOG>、フェイスブック(現・メタ・プラットフォームズ)<META>、ネットフリックス<NFLX>を加えた4社を「FANG」と称し、世界をリードするハイテク成長企業と位置付けるようになっていた。

 売上高は2015年12月期から19年12月期まで、1070億ドル(前期比20%増)、1359億ドル(同27%増)、1778億ドル(同31%増)、2328億ドル(同31%増)、2805億ドル(同20%増)と順調に拡大。営業利益は同期間に22億3300万ドルから145億4100万ドルと6.5倍に、最終利益は5億9600万ドルから115億8800万ドルと19.4倍にまで拡大した。この頃になるとアマゾンの利益率が低いからと言ってその成長性に疑いを持つ者はいなくなり、アマゾンが世界を代表するハイテク企業であるとの見方に異論を唱える者も姿を消していた。

 ベゾスが創業当初から訴えていたアマゾン流キャッシュフロー経営についても同様で、15年12月期末の現金・現金同等物の残高158億9000万ドルは、19年12月期には364億1000万ドルに、09年12月期に初めてプラス転換した利益剰余金も拡大の一途で、19年12月期には312億2000万ドルに達していた。キャッシュは事業を続けるとともに積み上がる状態となり、2000年代前半に債務超過が常態化していた時代が信じられないほどだった。

 「短期的な利益より、長期的な株主価値を優先する」。当初、投資家たちはベゾスが一貫して唱え続けるこうした経営方針を半信半疑で聞いていたが、それが実現した今となっては、もはや誰もが彼の先見の明を認めるしかなかった。

 この間、同社の成長を支えたのは、「アマゾン・マーケットプレイス」、「アマゾン・プライム」、そして「AWS」のアマゾン・ドット・コム事業"3本の柱"だ。マーケットプレイスは、ベゾスの肝いり事業として2000年に周囲の反対を押し切ってスタートした、外部事業者が「amazon.com」サイトに出品することができるサービスだが、ベゾスが予想した以上の急成長を見せていた。

 物流部門トップのジェフ・ウィルケが中心となって推し進めた「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」は弛まぬ物流改善により利便性が高まるとともに出品者が増え続けるという好循環を続けていた。2018年12月期の「株主への手紙(ベゾス・レター)」でベゾスは、「アマゾン・マーケットプレイス」を通した外部事業者(サード・パーティー)の取扱高が1600億ドルを超え、アマゾン直販(ファースト・パーティー)の売上高、1170億ドルを大きく上回ったと記した。さらに年平均では52%の成長が続き、直販部門の年平均25%、かつてのライバル、イーベイ<EBAY>の年平均20%を大きく凌駕していることを強調した。

 サード・パーティー部門は、販売手数料などのフィーを得るビジネスモデルのため、取扱高はアマゾンの売上高として計上されないにもかかわらず、全社売上高に占める割合は年々増加し、直販部門より高い成長率を叩き出していた。しかも、サード・パーティーの出品者が増えればFBAの利用も増え、「アマゾン・プライム」会員にとってもプライム特典を使える商品が増えるために、満足度が増す。「マーケットプレイス」の好調は、売上高が増加する以上に、アマゾンのEC事業全体にシナジー(相乗効果)をもたらしていた。

 相乗効果という点では、「アマゾン・プライム」も同様だ。コストコ・ホールセール<COST>創業者ジェ-ムス・シネガルとの会話をヒントに始まったこのサービスも成長を続け、「amazon.com」のヘビー・ユーザーを増やすことに貢献していた。さらにアメリカでは2011年、日本では15年に始まった「プライム・ビデオ」は、先行するネットフリックスとともに、世界の動画配信市場の拡大をリードし続けている。

 いま、日本で"アマプラ"と言えば動画配信サービスという認識が定着し、配送特典サービスを主とした「アマゾン・プライム」から派生したサービスだとは思っていない人も少なくない。アマゾンは国別の会員数を公表していないが、日本国内のプライム会員数は1460万人(2021年メディア・パートナーズ・アジア、インテージ調査)を超え、世界最大の動画配信サービス、ネットフリックスの600万人を大きく引き離し首位を独走しているという。

 「プライム・ビデオ」が充実するに従い、動画配信目的で会員になるユーザーも増えていった。会員は往々にして、各種の配送特典も利用しようとするので、結果的にアマゾンのEC売上高も増加する。この分野での最大のライバル、ネットフリックスにはない、アマゾンだからこそ生み出される事業シナジーだ。

3本柱を中心に各部門が成長(事業別売上高、2016年~)
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 そして、AWSである。ハイテク界の大御所であるグーグルのエリック・シュミットやマイクロソフト<MSFT>のスティーブ・バルマーを出し抜いた、このアマゾンとベゾスにとっての秘密兵器は、全社売り上げの中でのシェアは現在(2024年6月末時点)でも17%前後に過ぎない。だが、前章でも記した通り、営業利益率は群を抜いており、AWSの好収益があるからこそ、アマゾンは様々なことに挑戦する余裕が生まれている。

 AWSが生み出したと言っていいクラウド・コンピューティングの世界市場は、その後にグーグルやマイクロソフトも猛烈に追い上げ、現在では"3強"と言われる状態に突入した。23年から始まった「生成AI」ブームによって、その主戦場と見込まれるこの分野の競争は激しさを増している。直近では、ブームの仕掛け人でもあるマイクロソフトのシェアが急速に高まってきているが、先駆者として市場をリードし続けるアマゾンは、現時点でも30%超のトップ・シェアを持ち、AI開発でも他社と比べたアドバンテージを保っている。

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「プライム・ビデオ」でハリウッド進出、ベゾスが世界一のセレブに

 "事業の3本柱"を推進力として、名実ともに世界を代表する企業となったアマゾン・ドット・コム。2010年代の後半、業績は順調に拡大、キャッシュフローも潤沢になり、株価も上昇し続けると、富と名声と世界中の注目がアマゾンと創業者、ベゾスに集まるようになっていた。
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