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【市況】三連休後に相場転換可能性、足元の消費は強いのか? 【フィリップ証券】

 11日の金曜日はミニ先物とオプション10月限の最終決済に係る特別清算値(SQ値)算出日だった。1・4・7月とともに10月第2金曜日は8月本決算のファーストリテイリング<9983>の四半期決算発表の翌日となることが多く、日経平均株価も、そのウェート(寄与度)が1銘柄で11.58%(10/11現在)に及ぶ同社株価に左右されやすい。11日は同社株が大幅高で推移したことで堅調に推移し、時価総額加重平均のTOPIX(東証株価指数)終値は前日比マイナスだった。

 歴史的な値下がりを記録した8/5からの戻り相場に係る今後の見通しは、自民党総裁選の日の高市候補への期待で買い上げられた9/27の3万9829円を手前にして、三連休後の推移に持ち越された形であるものの、その持続力は主に海外情勢によって減衰しつつあるように見受けられる。イスラエルのイランに対する報復攻撃が石油施設におよんでホルムズ海峡封鎖まで戦局が混迷するのかどうか、あるいは11/5の米大統領選の動向への不透明感などを背景に、米国株市場の心理を表す「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数が、楽観と悲観の境界のメドとされる20ポイントを超えてきた。

 9月の米雇用統計は強い数字だったものの、財政赤字拡大による政府職員の増加に支えられた面も大きい。週次の新規失業保険申請件数は市場予想を上回るなど雇用の弱さを示す動きもみられた。また、9月米消費者物価指数(CPI)の上昇率も市場予想を上回った。辛うじて政策金利0.25ポイント引下げへの市場の期待を繋ぎとめることで株価が維持されているのが実情だろう。

 小売・飲食チェーンなど消費関連銘柄の決算発表が10/15まで続く。10/9に中間期決算を発表したイオン<8267>は、「6月には実質賃金が2年3ヵ月ぶりにプラスに転じたものの全体的な経済の回復では足踏みしている。8月以降の政府による光熱費の緊急支援策は消費動向には好影響を与えうるものの、日常生活における節約志向と、高付加価値商品・サービスへの積極的な支出への個人消費の二極化傾向には変化がない。」と述べている。春闘による平均賃上げ率が約33年ぶりの高水準となったといっても日銀の利上げを正当化できるほどの改善は足元でみられないのが実情だろう。利上げへの市場の懸念は今後薄らぐと見込まれよう。

 コメ不足を背景に「農林水産物」が国内企業物価(9月が前年同期比2.8%上昇と8月から0.2ポイント拡大)を押し上げている。防災関連グッズを含めて総合ディスカウントストアや大型ホームセンターの売上拡大への追い風となりやすい一方、ご飯物を扱う飲食店チェーンには悪影響が拡がることもあり得よう。


■ゲーム&アニメ株の相対優位性~IP活用で飲食店とのコラボ集客増効果も

 日本のゲーム&アニメ株は海外投資家からの注目度が高く、サウジアラビアをはじめ新興国の中にはゲーム産業を新たな自国産業の柱に据え、日本企業との連携を探る動きも出始めている。吉野家による「星のカービィ」とのコラボ商品販売に見られるように、人気キャラクターIP(知的財産)活用による販促策を打ち出す動きも加速。業績が為替変動等外部環境に左右されにくい点も高評価だ。

 日本のゲーム&アニメ株を代表する指数として「ソラクティブ日本ゲーム&アニメーション指数」があり、その指数に連動するパフォーマンスを目指す「グローバルX日本ゲーム&アニメ日本株式ETF<2640>」もある。同指数のパフォーマンスは8/5以降、足元で日経平均株価を上回る。構成銘柄中の割安銘柄は投資好機の面もあろう。

【タイトル】

参考銘柄


王子ホールディングス<3861>
   
・1873年創立後、1949年に苫小牧製紙として発足。生活産業資材(段ボール・包装紙等)、機能材(特殊紙等)、資源環境ビジネス(パルプ等)、印刷情報メディア(新聞紙等)を主な事業とする。

・8/2発表の2025/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比4.2%増の4380億円、営業利益が同33.3%減の145億円。ニュージーランド傘下企業がサイクロンによる生産停止から一部復旧したこと、および円安が増収に貢献も、海外パルプ市況悪化が響き営業減益。海外売上比率が同3.8ポイント上昇。

・通期会社計画は、売上高が前期比15.0%増の1兆9500億円、営業利益が同30.9%増の950億円、年間配当が同8円増配の24円。同社は国内森林保有面積が18.8万ha(ヘクタール)で民間企業首位。世界で約63.5万haを誇る。自然資本会計時代に向けて「王子の森の経済価値化の取組み」の情報開示強化のほか、「マイクロプラ」対策で紙から人工芝を作る開発など、低PBR脱却に向けた動きを活発化。EU(欧州連合)による「EU森林破壊防止規則(EUDR)」の動向も、森林価値を高めたい同社へ中長期的に追い風だろう。


浜松ホトニクス<6965>
 
・1948年に堀内平八郎が静岡県浜松市で東海電子研究所を創業。主に電子管事業(光電子増倍管、イメージ機器及び光源)、光半導体事業、画像計測機器事業(画像処理・計測装置)を営む。

・8/8発表の2024/9期9M(昨10-今6月)は、売上高が前年同期比8.5%減の1505億円、営業利益が同41.1%減の253億円。電子管(売上比率:39%)は同5%減収、28%営業減益。光半導体(同:40%)は20%減収、41%営業減益。画像計測機器事業(同:16%)は同10%増収、6%営業減益。

・通期会社計画を下方修正。顧客の在庫調整を背景に、売上高を前期比7.1%減の2057億円(従来計画2111億円)、営業利益を同43.5%減の320億円(同:375億円)とした。年間配当は同横ばいの76円。NTT<9432>が8/29、日本と台湾間で次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を使った通信網の開通を発表。IWONが目指す高速大容量通信と低消費電力に浜松ホトニクスの光技術が必要とされよう。


スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>
      
・2003年にスクウェアとエニックスが合併。人気IP(知的資産)の「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」を軸にコンテンツを多面的に展開。アミューズメント施設運営のタイトーは連結子会社。

・8/9発表の2025/3期1Q(4-6月)は、売上高が前期比18.4%減の699億円、営業利益が同3.5倍の108億円。売上構成比63%のデジタルエンタテイメント事業は新作タイトル減少の反動で減収も開発費償却負担減で増益。他のアミューズメント、出版、ライツ・プロパティ等は3事業ともに営業増益。

・通期会社計画は、売上高が前期比13.0%減の3100億円、営業利益が同22.9%増の400億円、年間配当が同33円増配の71円。1Q事業別営業利益では出版事業が前年同期比17%増、ライツ・プロパティ事業が同26%増と、IP資産活用の権利ビジネスが成長。同業他社比では予想PERやPBRなど株価バリュエーション面から割安。資本政策は、成長投資と株主還元のバランス勘案に注力方針。


トライアルホールディングス<141A>
   
・1974年に福岡市で家電製品販売「あさひ屋」を創業。「TRIAL」ブランドのディスカウントストアを全国展開する「流通小売事業」とセルフレジ付きショッピングカートの「Skip Cart」ほか「リテールAI事業」を主に営む。

・8/13発表の2024/6通期は、売上高が前年同期比9.9%増の7179億円、営業利益が同37.2%増の191億円。既存店売上高成長率が同5.8%、期末店舗数が同33店増の318店、Skip Cart導入店舗数が同43店(内、外販3社・4店)増の223店、粗利益率、営業利益率ともに同0.6ポイント上昇と、好内容。

・2025/6通期会社計画は、売上高が前期比12.7%増の8088億円、営業利益が同20.0%増の229億円、年間配当が同1円増配の16円。10/9発表の中間決算で前年同期比6%増収も経費が嵩み同76%最終減益のイオンに対し、節約志向がディスカウントストア需要へ追い風のほかSkip Cartでレジ待ち時間減、「AIカメラ」導入で欠品減・価格自動引上げなど、同社の高い効率性が注目されよう。


 (執筆日:2024年10月11日)


フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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