【特集】KeyH Research Memo(1):乃木坂46やSKE48など多様なIPの管理運営を行うエンターテインメント企業
■要約
1. 独創性と誠実さを通じて幸せで豊かな未来をつくるエンターテインメント企業
KeyHolder<4712>は、持株会社である同社を中心にエンターテインメントを中心とした企業グループを形成しており、関連会社がIP※の管理・運営や地上波向けバラエティ番組や映画、ドラマのほか、海外との共同制作案件等の映像制作、Youtube等のSNS媒体向けの動画広告の制作・管理・運用などを行っている。同社は、「世の中の常識にとらわれない独創性と誠実さを通じて幸せで豊かな未来をつくります」というグループ企業理念を有し、グループ全体が発展していくことで社会に貢献することを目指している。同時に、「新たな独自IPコンテンツの創出」「グローバル基準の映像コンテンツの創出」「広告分野における新規販路開拓・デジタル領域の拡充」を推進するとともに、エンターテインメントに係る多様なマネタイズポイントを同一のグループ傘下で展開できる企業グループを目指しており、特に近年は新たな事業領域に積極的に進出している。
※ IP(Intellectual Property):知的財産。人間の知的活動によって創造された財産的価値のある情報。エンターテインメント分野では楽曲やアニメ、映像作品、アーティスト、タレント、ゲーム、キャラクターなどを指す。
2. IPの管理・運営、バラエティ番組等の映像制作、Youtube等のSNS系媒体動画広告などの事業を展開
同社の事業は3つに大別され、総合エンターテインメント事業では乃木坂46※1やSKE48などの多様なIPの管理・運営からイベント開催までを手掛けている。映像制作事業では「千鳥の鬼レンチャン」など地上波向けバラエティ番組やドラマの制作、映画製作委員会への参画などを行っている。広告代理店事業ではタレントのキャスティングからYoutube等のSNS系媒体向けの動画広告の制作・管理・運用までを行っている。同社の強みは、子会社がそれぞれに培ってきた取引先とのリレーションやノウハウをグループ全体に還元することで生まれるグループシナジーと、多様なマネタイズポイント※2を活かす柔軟性と拡張性に富んだ活動にあり、水モノとされがちな業界で、確かな収益体質を構築している。なお、2024年10月に、(株)トポスエンタープライズを子会社化し、新たに倉庫・運送事業に進出する計画である。
※1 乃木坂46:乃木坂46(乃木坂46合同会社)はKeyHolderの持分法適用会社である。
※2 マネタイズポイント:提供するサービスなどの対価を得るタイミング。タイミングよく対価を得る仕組みを持たないとサービスを維持できなくなることもある。
3. 2024年12月期第2四半期は乃木坂46の収益平常化などで微減収2ケタ減益
2024年12月期第2四半期の業績(IFRS)は、売上収益が14,150百万円(前年同期比0.3%減)、営業利益が561百万円(同64.7%減)となった。売上面では、(株)10ANTZが子会社となった効果はあったが、海外の映像制作案件の先送りやデジタル広告において、取引先の事業分野における業界動向の影響等により微減収となった。利益面では、原価の上昇などにより売上総利益率が低下、売上収益の減少及び先行費用により販管費率が上昇、加えて乃木坂46(同)において、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の各種補助金の減少及び大きなイベントが連続した前年同期から平常化したことで持分法による投資利益が減少し、営業利益は前年同期比で大幅なマイナスとなった。また、営業利益の進捗率も23.4%と低くなったが、10ANTZの売上未達や持分法による投資利益の減少の影響が大きかった。
4. 独自IPの新規開発やデジタル領域の強化などで中期的に再成長トレンドへ
2024年12月期の業績予想について、同社は売上収益32,000百万円(前期比16.3%増)、営業利益2,400百万円(同22.1%増)と見込んでいる。第2四半期の利益進捗率は低かったが、通期業績予想を期初から変更していない。子会社化するトポスエンタープライズの影響が未確定であることを理由としているが、前年同期好調であった乃木坂46に係る興行との差異と子会社を通じた先行投資は当初から分かっていたと思われることから、期初の業績予想がやや強気に過ぎたかもしれない。ある意味踊り場と言えようが、下期に実施する予定の施策によって、業績予想にキャッチアップする考えである。2025年12月期以降中期的には、既存IPの強化をはじめ、独自IPの新規開発やデジタル領域の強化、10ANTZの回復などによって踊り場を抜け、再成長トレンドへ回帰していくと予想される。
■Key Points
・総合エンターテインメント事業、映像制作事業、広告代理店事業を展開
・同社及び関連会社15社で総合エンターテインメントグループを形成
・独自IPの新規開発などによって踊り場を抜け、再成長トレンドへ
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
《HN》
提供:フィスコ