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【市況】明日の株式相場に向けて=決算発表通過で勇躍する好業績株に照準

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(15日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比284円高の3万6726円と4日続伸。8月に入るやいなや全体相場は歴史的な大波乱に見舞われた。5日は4451円安という歴代1位の暴落をみせたのだが、その直前2営業日(8月1日と2日)の下げも強烈であり、3営業日合計で7640円あまりの下落、率にして19.5%というとんでもないものだった。たった3日間で東証時価総額の2割を吹っ飛ばしたことになる。

 しかし、相場はある意味サディスティックで、そこからは意外なほど素直に戻り歩調をみせている。信用買い残に目を向けると、8月初旬の波乱相場に遭遇し金額ベースで一気に1兆円近くも減少した。まさに年初から積み上げた分を一気に吐き出した格好だ。ネット証券大手の店内データでも信用評価損益率が全体でマイナス11.9%と1ケタ台のマイナスまであと一歩で改善色が強い。だがこれはあくまで相場の現状を定点観測したもの。5日の暴落によって半強制的に信用取引で投げさせられた人は、既に資金を引いてしまっている関係上、その直後に相場が踵(きびす)を返した局面でリベンジできなかった現実がある。

 では、相場の調整局面に備え待機資金を確保していた人は足もとのリバウンドに上手く乗れたかというと、「(5日の急落に)全力で買い向かうことができた投資家は極めて稀少な存在」(中堅証券ストラテジスト)と指摘する。バッターボックスに立ってもバットを振ることができず、ど真ん中のストレートを見逃すというケースが多かった。暴落のトリガーを引いたのはタイミング的には日銀だが、追加利上げのカードを切ること自体は寝耳に水ということではないし、何が変わったかと言えば、何も変わらないそれまでの日常の延長である。そうした中で3日続けての大幅安、しかも下げが急加速している異常な状況では、蛮勇を振るうことなど本能的にできない。人間であればそうなる。しかしながら、今の相場を牛耳っているのはAIアルゴリズムである。

 前日は、現地時間朝方の7月の米消費者物価指数(CPI)に耳目が集まった。結果は前年同月比2.9%の上昇で事前予想の3.0%を下回り、伸び率は21年3月以来となる3%割れで約3年5カ月ぶりの低い水準となった。一方、エネルギーと食品を除くコア指数の方も同3.2%の上昇と鈍化傾向を示し、市場予想とも合致、これにより9月のFOMCでの利下げの可能性を一段と高めている。

 ただし、今はFRBによる利下げ期待よりも米景気失速への懸念が先に立つ。端的には個人消費の動向が気になるわけで、その観点では日本時間今晩9時半、米国では前日同様に朝方取引開始前に発表される7月の米小売売上高の方がCPIよりも注目度は高い。更に、それを上回る視線を集めそうなハードデータが週間の新規失業保険申請件数だ。小売売上高が想定を上回る一方で、失業保険申請件数が想定を下回れば米株市場には強力な追い風となるが果たしてどうか。いずれにしても大きなヤマ場といえそうだ。

 東京市場では企業の決算発表を通過し、全体論としては評価の分かれるところではあるが、個別には好決算発表組にスポットライトが当たっている。大型株では三菱重工業<7011>の切り返しが鮮烈で既に1900円台を回復。仮に2000円台まで上値を伸ばせば、上場来高値2087円も視界に入る。この背景には、株式需給面では信用買い残の急減、そしてファンダメンタルズ面では4~6月期決算(純利益2ケタ成長で過去最高を更新)の好実態評価がある。また、中小型株でも好業績株への注目度は高い。発表された第1四半期の営業利益の伸びが際立つものでは、日本化学工業<4092>、ヤマシンフィルタ<6240>、新田ゼラチン<4977>、日本高純度化学<4973>、太平電業<1968>などが挙げられる。また、6月決算企業では前期に続き25年6月期も好決算が期待されるArent<5254>、日本情報クリエイト<4054>などをマークしておきたい。

 あすのスケジュールでは、対外・対内証券売買契約が朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札、10年物物価連動国債の入札が予定される。午後取引時間中には6月の第3次産業活動指数が発表される。海外では7月の英小売売上高、6月のユーロ圏貿易収支、7月の米住宅着工・許可件数、8月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)などに耳目が集まる。このほか、APECエネルギー担当相会合がペルーで開催される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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