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【特集】ハークスレイ Research Memo(5):投資対象の4分野は合計で6兆円を超える潜在市場規模

ハークスレイ <日足> 「株探」多機能チャートより

■投資領域の市場分析

ハークスレイ<7561>は、成長戦略のなかで成長投資に178億円(M&A120億円、設備投資58億円)を費やすことを発表している。その対象領域は、既存事業セグメントである物流・食品加工事業である。M&Aは食品製造、冷凍食品製造、菓子製造、農産物・水産物・畜産物の生産・加工業など、同社とのシナジーによる事業基盤の強化・拡充に寄与する企業・業界を対象としている。弊社では、主な対象市場の市場規模/成長性/プレーヤーなどを調査・分析した。対象4分野を合計すると6兆円を超える潜在市場規模がある。

1. 中食ベンダー、PB食品市場
投資対象領域の最有力となるのは、物流・食品加工事業のカミッサリー事業である。食品スーパーやドラッグストアから唐揚げなどの総菜を受託生産する外販の事業モデルは成長が著しく、同社では交替勤務によるフル稼働が続いている。小売業の現場では、深刻な人手不足により自前で総菜を作ることが困難になりつつあるため、食材の調達から製造・物流までを手掛ける子会社のアサヒL&Cへの引き合いが増加すると見込まれる。アサヒL&Cのカミッサリー工場は関西にのみ所在しているため、関東をはじめ東海や九州で加工機能を持つ企業がM&Aの対象となるだろう。

(一社)日本惣菜協会「2024年版 惣菜白書 拡大編集版-ダイジェスト版-」によると、業態別の総菜の2023年の市場規模は、食料品スーパーが3.2兆円であり、コンビニエンスストアの3.4兆円に次いで2位である。成長性(2023年の市場数値÷2019年の市場数値)では、食料品スーパーが18.9%と業態のなかで最も高い。

視点を変えると大手小売業のPB商品も標的市場となる。インフレ傾向が続くなか価格への感度の高い消費者からのニーズは高く、大手小売業は開発・販売に力を入れている。経済産業省「商業動態統計」によると2022年度の食品スーパーの年間市場規模は約15兆円であり、加工食品や総菜の構成比を仮に50%と仮定(生鮮3品、非食品を除く)すると、約7.5兆円となる。そのうち、PB食品の市場規模は約1兆円(PB比率16.8%と仮定)と試算できる。

業界のプレーヤーとしては、わらべや日洋ホールディングス<2918>、(株)武蔵野などのコンビニエンスストア向けの製造・納入会社をはじめ、大手小売業の資本系列会社や大手食品メーカーの系列会社など全国の多数の食品メーカーが役割を担っている。

2. 冷凍食品市場
子会社アサヒL&Cでは、阪神カミッサリー工場にて冷凍食品の加工も手掛けており、冷凍食品業界と親和性が高い分野である。例えばグラタンなど多くの総菜は、品質維持ができる冷凍物流が適している。(一社)日本冷凍食品協会の「令和5年(1~12月)冷凍食品の生産・消費について(速報)」によると、冷凍食品の2023年国内生産額は約7,800億円と、前期比で2.1%増となった。近年はスーパーの冷凍食品売り場の拡大に加えてドラッグストアでの取り扱いも増えており、共働き世帯・単身・シニア層の増加に伴い時短や簡便ニーズの高まりにより需要は堅調である。

業界のプレーヤーとしては、ニチレイ<2871>、味の素<2802>、日本たばこ産業(JT)<2914>、ニッスイ<1332>など大手メーカーの存在感が大きいが、中堅中小企業の数も多い。なお、日本冷凍食品協会の正会員企業は109社である。

3. 菓子市場
同社は2022年に稲葉ピーナツをグループ化し、菓子業界に参入した。一般的にはチョコレート/飴菓子/チューインガム/ビスケット類/スナック菓子/米菓などと分類でき、和・洋/常温・チルド・冷凍/地域性など、多様な商品分類が存在するのが特徴である。全日本菓子協会「令和5年菓子の生産数量・生産金額等(推定)」によると、菓子の2023年国内生産金額は約2兆6,700億円と、前期比で5.6%増となった。市場規模の大きなカテゴリーはチョコレートや和生菓子であり、前年からの増加率が高かったのは飴菓子やスナック菓子であった。なお、同社は現状では菓子市場の中で豆菓子、ナッツ類の分野に参入している。

業界のプレーヤーとしては、明治ホールディングス<2269>、森永製菓<2201>、江崎グリコ<2206>、カルビー<2229>、ブルボン<2208>、亀田製菓<2220>など大手企業のほか、専門分野を絞り、地域を限定して活躍する中堅・中小企業も多い業界である。

4. 農産物・水産物・畜産物の生産・加工市場
農産物・水産物・畜産物の生産・加工市場は、現在の同社の事業領域から見ると川上に該当し、これまでは仕入れ・調達で関係してきた分野である。同社ではサプライチェーンの川下(小売り)から製造・物流までを所有しているため、農産物・水産物・畜産物の生産・加工企業がグループ化すればより長いサプライチェーンを最適化できる。例えば、近年は気候変動による農作物の出来や旬の時期への影響が大きくなっているが、同社のように川下の機能を有していれば、川上での調達量の加減や適切な加工法や保存法の選択による調達コストの削減や品質維持などが可能になる。農林水産省「令和4年度6次産業化総合調査結果」によると、2022年の農産物・水産物加工の年間販売金額は約1兆1,900億円(農産加工約1兆100億円、水産加工約1,800億円)であり、前期比6.3%増となった。

業界のプレーヤーとしては、ホクト<1379>、東京NSフーズ(株)、マルハニチロ<1333>、ニッスイ<1332>、日本ハム<2282>、伊藤ハム米久ホールディングス<2296>などの多様な企業が存在する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

《SO》

 提供:フィスコ

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