【市況】米国株式市場見通し:主要企業決算に注目
来週は小売りを含めた主要企業決算が相場を左右するだろう。さらに、利下げペースを睨みながらの取引が続きそうだ。全米のサービス業動向を示すISM非製造業景況指数やサービス業購買担当者景気指数(PMI)の1月分で経済の7割を占める消費動向を見極めたい。1月雇用統計やミシガン大消費者信頼感指数では労働市場の強さや消費の底堅さが再表明され利下げ期待が大きく後退したものの、成長期待に支えられた。
米連邦準備制度理事会(FRB)は今週開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で市場の予想通り政策金利を4会合連続で据え置くことを決定した。インフレ目標達成のため追加引き締めの可能性があるとの文言を声明から削除し、「目標達成へのリスクは一段と良いバランスに移行しつつある」と利上げの必要性が後退したことが示された。同時に、利下げにはインフレが2%に近づく一段の確信が必要と慎重姿勢を見せたため市場の3月利下げ開始の思惑も後退。経済データや見通し、リスクバランス次第で金利を巡りいかなる修正も検討すると、中立姿勢に移行しており、中銀の金融政策では今後の経済データが重要になるだろう。ISM非製造業景況指数は12月分から上昇が見込まれている。結果で消費の底堅さが証明される結果となった場合、FRBの利下げ先送り観測が一段と強まる一方で、ソフトランディング期待が引き続き下支えになりそうだ。
同時に、地銀ニューヨーク・コミュニティー・バンコープの決算が予想外に悪化。商業不動産リスクが露呈し、昨年3月以来となる地銀の健全性への不安が再燃していることもリスクとして注視したい。イエレン財務長官は来週、上院銀行委で金融安定監督評議会(FSOC)年次報告に関する公聴会に参加予定で、対応に注目だ。さらに、FRBは銀行融資担当者調査の結果を発表する。中・大規模銀行の商業・産業向け貸出態度(基準)厳格化が示された場合、FRBの金融市場への懸念を強め、堅調な経済にもかかわらず利下げの必要性が強まる可能性もありそうだ。FRBは最新のFOMC声明で「国内の金融システムは健全で柔軟性がある」との文言を削除した。金融市場のリスクと利下げ期待が再燃すると、もみ合いとなりそうだ。
経済指標では、1月ISM非製造業景況指数、1月サービス業PMI改定値(5日)、12月貿易収支(7日)、前週分新規失業保険申請件数、12月卸売売上高(8日)、などが予定されている。
主要企業決算では、肉食品メーカーのタイソン・フーズ、重機メーカーのキャタピラー、ファーストフードチェーン運営するマクドナルド、化粧品メーカーのエスティ・ローダー(5日)、自動車メーカーのフォード、製薬会社のイーライリリー・アンド・カンパニー、バイオのアムジェン、メキシコ料理レストラン運営のチポトレ・メキシカン・グリル、航空機構造の設計・製造を手掛けるスピリット・エアロシステムズ、アパレルのVF、写真・動画共有アプリのスナップ(6日)、配車サービスのウーバーテクノロジーズ、エンターテインメントのウォルト・ディズニー、格安航空会社のスピリット、総合ヘルスケアのCVSヘルス、オンライン決算のペイパル(7日)、後払い決済サービスを提供するアファーム、スポーツ用品メーカーのアンダーアーマー、アパレルのラルフローレンやタペストリー、エネルギー会社のコノコ・フィリップスやデューク・エナジー、オンライン旅行サービス会社のエクスペディア(8日)、飲料メーカーのペプシコ(9日)、などが予定されている。
キャタピラーでは世界マクロ状況を判断することになるだろう。エスティ・ローダーは、引き続き中国経済の回復低迷が響く可能性に警戒だ。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》
提供:フィスコ