【市況】明日の株式相場に向けて=レーザーテクに見る需給相場の威力
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
古くから株式市場は「経済を映す鏡」と言われるが、そうしたアカデミックな形容とは裏腹に、相場は生き物、あるいは相場には魔物が棲むといったオカルトチックな言葉も時代を越えてリフレインされてきた。株式市場に映し出されているのは個別企業の株価の集大成であるとともに、投資家心理の集大成でもあって、そこには正体不明だが何か有機的な要素が土台となっているような感触がある。
しかし、近年はAIアルゴリズム売買の影響が大きくなり、以前とは異なり資金の流れや方向性からは理解できない無機質な値動きも頻繁に起こり得る。今週はメジャーSQ算出を週末に控え、先物主導の仕掛けが入りやすいタイミングであったが、案の定日経平均は週明けに軟調で始まったあと、昨日はインデックス売りで急勾配の下り斜面を転がるような下げに見舞われた。しかし、であるからこそ、きょうの日経平均の朝方取引開始後の戻り足はおよそ規格外の“鬼足”といってよく、前日までの流れで売り建てていた向きにとっては愕然とするよりない展開だったかもしれない。市場でも「SQ攻防ラインは3万3000円大台ラインから、まさかの3万3500円へと一気に500円切り上がった」(ネット証券マーケットアナリスト)と驚きの声が聞かれた。
前日の米国株市場では主要株価指数が高安まちまちの展開で方向感が見えにくく、米長期金利は大きく低下したものの、為替の動向なども今一つはっきりしない。そうしたなか、東京市場では前日までのマネーフローを念頭に置けば、きょうは日経平均が高くても3万3000円大台ラインを巡る攻防がせいぜいで、比較的狭いゾーンで強含む程度と見るのが妥当。買い手掛かり材料のないなかで、よもや前日の下げを帳消しにしてお釣りがくるようなリバウンドをするとは、誰も想定できなかったはずだ。きょうの日経平均の5分足チャートを見ると、先物のスライス買いを反映した定規で引いたような上値誘導が鮮明に見て取れる。SQ算出前などの需給思惑が錯綜する時間帯において、「上か下かどちらにするか」を決めるのは「天の神様の言う通り」ならぬ「AIアルゴの言う通り」というのが今のマーケットの実態であり、常識的な人間の思考(相場観)は楽々と凌駕されてしまう。
もっとも、個別株は至近距離の思惑のぶつかり合いであり、先物の空中戦による影響は受けながらも全体指数よりはよほど融通性がある。今最もホットな銘柄といえば日々4000億円を超える売買代金をこなし続け、株価も怒涛の新値街道を走るレーザーテック<6920>だろう。きょうは5.4%高という大立ち回りで年初来高値を大幅更新した。信用取組は直近信用倍率が0.4倍台と超タイト、更に日証金では貸借倍率が0.1倍を下回り逆日歩がついた状態だ。ネット証券大手の店内でも、ここにきて個人投資家の空売りが際立っているという。いわゆる踏み上げ相場の典型だが、売りを仕掛けたくなる気持ちは分かる。PERの高さに加えて、チャートを見ると一目瞭然で東京エレクトロン<8035>やアドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>などと比べ同社株だけ異形の波動を形成している。ただし、ここは「需給はすべての材料に優先する」という相場格言を噛み締める必要がある。
半導体関連 ではメモリー系の銘柄の戻りが強い。これは市況低迷をネタに空売りが溜まっていたことが背景にある。相対的に戻りが鈍いのが在庫調整の洗礼を受けていないパワー半導体関連。しかし、ここから先は出遅れ修正のターンが回ってきそうだ。主力どころでは富士電機<6504>やルネサスエレクトロニクス<6723>の押し目。また、中小型株ではβ型酸化ガリウム関連で最右翼に位置するタムラ製作所<6768>に着目したい。
あすのスケジュールでは11月上中旬の貿易統計、10月の景気動向指数速報値、消費活動指数、11月の都心オフィス空室率など。このほか、6カ月国庫短期証券や30年物国債の入札が行われる予定。海外では11月の中国貿易統計、7~9月期ユーロ圏GDP改定値のほか、米国では週間の新規失業保険申請件数、10月の卸売在庫・売上高、10月の消費者信用残高などが注目される。(銀)
出所:MINKABU PRESS