【特集】オプティム Research Memo(3):第4次産業革命の中心的存在を目指す注目ベンチャー企業
オプティム <日足> 「株探」多機能チャートより
■会社概要
1. 会社概要と沿革
オプティム<3694>は、現 代表取締役社長の菅谷氏が佐賀大学学生時代である2000年に友人らと起業したAI・IoT技術を得意とするベンチャー企業である。“ネットを空気に変える”がミッションであり、「OPTiM Cloud IoT OS」のデファクトスタンダード化を通じて、第4次産業革命の中心的役割を果たす企業を目指している。イノベーションの創造と実現こそ唯一の自社の存在意義と考え、創業当初から数多くの発明を行ってきたのも同社の特長で、特許出願数は1,125件、登録数は546件に達し(2023年2月時点)、菅谷氏は1993年~2020年「情報通信分野」特許資産個人ランキング1位を獲得している。従業員数は398名(2023年4月1日時点)で、開発系人材および企画・営業系人材が大半である。
当初はインターネット動画広告サービスを主体としていたが、2006年の東日本電信電話(株)(以下、NTT東日本)との技術ライセンス契約、AIを活用した自動インターネット接続ツールの提供を機にオプティマル事業(ネットを空気に変え、明日の世界を最適化することを目指す事業の造語)に転換した。2009年にはパソコン向け管理プラットフォーム「Optimal Biz」を提供開始する。なお、同社では、現在に至るまで様々な製品・サービスを展開しているが、“離れた端末をスマートに操作する”という提供価値は、対象分野や技術は変わっても一貫している。
2011年頃からは、世の中がPCからモバイルにシフトする流れに対応し、スマートフォン等を含むマルチデバイス対応の管理プラットフォームを開発した。そのプラットフォームを拡張・進化させた「OPTiM Cloud IoT OS」で、現在デファクトスタンダード化を推進する。2013年からはソフトウェアやコンテンツの使い放題サービスにも進出し、ビジネスモデルの幅を拡げている。
2015年には、ITを使って業界に変革を起こす取り組み「〇〇×IT」が本格化し、建設や農業などの分野でパートナー企業・団体とのプロジェクトがスタートした。建設業界では、2017年にはコマツなど4社共同で建設生産プロセスの新プラットフォーム「LANDLOG」がスタートした。2020年には世界初となる、iPad Proを使って誰でも簡単に高精度3次元測量ができるアプリ「OPTiM Land Scan」(現 「OPTiM Geo Scan」)の提供を開始している。農林水産業では、2016年に農業分野でドローンを活用した害虫駆除の実証実験に成功している。また、2018年には同社が主導する“スマート農業アライアンス”が全国規模で行われ、米や大豆をはじめとする作物が本格的に収穫された。医療分野でも進捗が著しく、メディカロイドが開発した国産初の手術支援ロボットシステム「hinotoriTM サージカルロボットシステム」のネットワークサポートシステムに、同社の、AI・IoTプラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」が使われている。
広い業界の大手企業が同社のパートナーであり、技術力やポテンシャルは内外からも高く評価されている。2020年には佐賀銀行<8395>と共同で、AI・IoTを活用したソリューションの企画・販売などを目的とした合弁会社「オプティム・バンクテクノロジーズ(株)」を設立、2021年にはNTT東日本等と国産ドローンサービスの利用を推進する(株)NTT e-Drone Technology設立に参画、また、KDDI<9433>とAI・IoT活用の商品企画で企業のDXを支援する合弁会社「DXGoGo(株)」を設立するなど、大手企業と連携した事業拡大の取り組みが加速している。
2014年に東証マザーズ上場、2015年には同市場1部にスピード昇格。2022年4月の同市場区分再編に伴いプライム市場へ移行した。
2. 事業内容
同社の主力事業は「IoTプラットフォームサービス」であり、全社売上高の87.0%(2023年3月期)を構成する。その内訳としては従来からの強みである「モバイルマネジメントサービス」と近年投資を積極化する「X-Techサービス」に分類される。「モバイルマネジメントサービス」では、スマートフォンやタブレットなどの様々なデバイスをクラウド上で管理し、組織内の運用管理、資産管理やセキュリティポリシーの設定などを行う「Optimal Biz」が主力サービスである。パートナー企業による代理販売、OEM提供などで流通し、端末数に応じたライセンス料を受領する。「X-Techサービス」では、AI・IoTプラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」を活用した業種別の取り組みや、「OPTiM AI Camera」をはじめとするパッケージサービス等を展開する。
「リモートマネジメントサービス」は全社売上高の7.5%(同)を構成する。その中の遠隔作業支援サービスである「Optimal Second Sight」は、現場での作業支援のみならず、災害時のスムーズな救援活動及び現場把握の災害対策の支援機器として採用されている。遠隔画面共有と遠隔操作がコア技術であり、導入企業の端末数に応じたライセンス料を受領する。
「サポートサービス」は全社売上高の1.2%(同)を構成する。PC市場の成長鈍化に伴い減少傾向にある。ネットワーク上のスマートフォンやタブレットなどのトラブルを自動で検知し修復する「Optimal Diagnosis & Repair」や、自動でルーターの設定を可能とする「Optimal Setup」を提供しており、導入の際の機能追加にかかるカスタマイズ料やライセンス料を受領する。
「その他サービス」は全社売上高の4.3%(同)を構成する。個人向けに「パソコンソフト使い放題」、法人向けに「ビジネスソフト使い放題」や人気雑誌読み放題サービス「タブレット使い放題(タブホ)」など「使い放題シリーズ」を提供しており、月額定額課金モデルがメインである。
売上高の構成はストック売上とフロー売上に分けると、その構成比はストック売上:フロー売上=約3:1となっている。同社の基本戦略として安定収入であるストック売上を最大化するために自社商品・サービスを確立することを優先している。そのために将来的にストック売上につながるカスタマイズ開発(フロー売上)は行うが、それ以外のカスタマイズ開発は優先度を下げている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
《SI》
提供:フィスコ