【市況】S&P500 月例レポート ― 利上げ停止の支持広がるなかレンジを上放れ (2) ―
●主なポイント
○銀行を巡る問題が過去のものとなり、市場は債務上限問題と、それに伴う歳出見直しに注目しています。企業の決算や業績見通しにおいても、政府支出が不透明なときの典型として、一部の消費関連銘柄へと関心が移っています。市場は引き続き、FRBが6月13-14日のFOMC会合で利上げを停止するとみており、2023年第4四半期には利下げが開始されるとの見方がなお優勢です。
⇒5月のS&P500指数は0.25%の上昇となりました。4月は1.46%上昇、3月は3.51%上昇し、2月は2.61%の下落でした。年初来では8.86%上昇しています(2022年の年間騰落率は19.44%下落、2021年は26.89%上昇、2020年は16.26%上昇)。
⇒5月の市場は、11セクターのうち3セクターが上昇しました。4月は8セクターが上昇、3月は7セクターが上昇しました。5月に騰落率が最高となったのは情報技術で9.29%上昇しました(年初来では33.33%上昇)。最低となったのはエネルギーで10.61%下落しました(同12.89%下落)。
⇒5月は値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました。値上がり銘柄数は124銘柄となり、4月の266銘柄や3月の263銘柄から減少しました。10%以上上昇した銘柄は32銘柄(4月は22銘柄、3月は32銘柄)、20%以上上昇した銘柄は7銘柄(同1銘柄、同7銘柄)でした。月間の値下がり銘柄数は379銘柄(同235銘柄、同240銘柄)で、そのうち10%以上下落した銘柄は91銘柄(同28銘柄、同53銘柄)、20%以上下落した銘柄は11銘柄(同4銘柄、同14銘柄)でした。年初来でも値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回り、値上がりしている223銘柄(4月時点では291銘柄)のうち、10%以上上昇は111銘柄、20%以上上昇は52銘柄となりました。年初来で値下がりしているのは280銘柄(同212銘柄)で、10%以上下落は145銘柄、20%以上下落は52銘柄となっています。
○市場全体で見ると、S&P500指数の時価総額は5月に1090億ドル増加し(年初来では5030億ドル増)、34兆9530億ドル(2022年に時価総額は8兆2240億ドル減少)となりました。コロナ危機前の2020年2月19日との比較では6兆9800億ドル増加しています。
○488社が2023年第1四半期の決算発表を終え、そのうち375銘柄(76.8%)で営業利益が予想を上回り、486銘柄中361銘柄(74.3%)で売上高が予想を上回りました。
⇒2023年第1四半期の営業利益は前期比4.8%増、前年同期比7.0%増が見込まれていますが、2022年末時点での予想と比較すると1.0%低下しています。売上高は過去最高を記録した前期(2022年第4四半期)から2.2%の減少が見込まれています。消費者が買い控えの姿勢を強め、企業がコストの増加分の全てを消費者に転嫁できていない状況にあります。
⇒2023年第1四半期の営業利益率は、2022年第4四半期の10.92%から上昇して11.70%となる見通しです(1993年以降の平均は8.29%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
●利回り、金利、コモディティ
○米国10年国債利回りは4月末の3.43%から3.64%に上昇して月末を迎えました(2022年末は3.88%、2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は 2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは4月末の3.67%から3.85%に上昇して取引を終えました(同3.97%、同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。
○英ポンドは4月末の1ポンド=1.2567ドルから1.2440ドルに下落し(同1.2099ドル、同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは4月末の1ユーロ=1.1017ドルから1.0693ドルに下落しました(同1.0703ドル、同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は4月末の1ドル=136.30円から139.36円に下落し(同132.21円、同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は4月末の1ドル=6.9122元から7.1118元に下落しました(同6.9683元、同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。
○5月末の原油価格は11.3%下落し、4月末の1バレル=76.73ドルから同68.04ドルとなりました(2022年末は同79.35ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は5月に2.2%下落しました(5月末は1ガロン=3.684ドル、4月末は同3.765ドル、2022年末は同3.203ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は40.5%上昇し(2020年末は1バレル=48.42ドル)、ガソリン価格は58.1%上昇しました(2020年末は1ガロン=2.330ドル)。
⇒2023年4月時点のEIAの報告によると、ガソリン価格の内訳は、51%が原油(3月は50%、2月は53%、1月は55%)、14%が連邦税および州税(同15%、同15%、同15%)、12%が販売・マーケティング費(同11%、同13%、同10%)、そして23%が精製コストおよび利益(同24%、同20%、同20%)となっています。
○金価格は4月末の1トロイオンス=1997.90ドルから下落し1981.50ドルで5月の取引を終えました(2021年末は1829.80ドル、2020年末は1901.60ドル、2019年末は1520.00ドル、2018年末は1284.70ドル、2017年末は1305.00ドル)。
○VIX恐怖指数は4月末の15.78から17.94に上昇して5月を終えました。月中の最高は21.33、最低は15.53でした(2022年末は21.67、2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12)。
⇒同指数の2022年の最高は38.89、最低は16.34でした。
⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。
⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。
※「利上げ停止の支持広がるなかレンジを上放れ (3)」へ続く
株探ニュース