【市況】国内株式市場見通し:手掛かり材料難のなか堅調地合い続こう
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■インフレ鈍化や中銀イベント無難消化で上伸
今週の日経平均は1440.91円高の33706.08円で終え、10週続伸。週初から株高基調が続き、12、13、14日の3日間に日経平均は1200円超も上昇した。消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)で米国のインフレ鈍化基調が確認されたことや、米連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に消化したことが株高に弾みをつけた。また、国内で衆議院解散を巡る思惑が強まったことも上昇に拍車をかけた。一方、週後半15日は後場寄り間もなくして高値を更新した後に失速し、5日ぶりに反落。週末は、岸田文雄首相が今国会会期中の衆議院解散を見送る考えを表明したことが失望感を誘い、続落して始まったが、昼頃に日銀金融政策決定会合の現状維持の結果が伝わると一転して買い優勢へと切り替わり、日経平均は反発した。
■堅調ながら上昇一服感も
来週の東京株式市場は一進一退か。週初は米国市場が祝日で休場、週後半22日からは端午節の関係で中国(~23日)・香港市場も休場となる。経済指標の発表も少なく、全体的に手掛かり材料難のなか、主要中央銀行の金融政策決定会合を無難に消化した安心感から、堅調な地合いが続きそうだ。月後半にかけては株主総会が集中しており、株主還元の強化策などへの思惑が強まることも相場をサポートしよう。
日本取引所グループ(JPX)が公表する投資部門別売買状況によると、海外投資家は6月第1週(6月5-6月9日)に現物・先物合算で1兆5691億円と10週連続の買い越し、現物だけでは9864億円と11週連続の買い越しを見せた。連続記録も驚異的だが、ここにきて再び現物での買い越し金額が1兆円規模にまで膨れ上がったことには脱帽だ。今回の海外勢による日本株買いはアベノミクス以来、10年に一度あるかないかレベルの大規模なものといえる。ビッグトレンドとも呼べる今回の上昇相場については、急激な外的ショックの発生や、もしくは米国株の大幅下落でもない限り、簡単には崩れそうにないと思われ、中長期目線では押し目買いスタンスが奏功しそうだ。
一方、岸田文雄首相が今国会会期中の衆議院解散を見送る考えを表明したことが失望感を誘い、日経平均は今週末に一時下落。また、その前日15日には午後に高値を更新しながらも引けにかけて失速するなど、日経平均は34000円を手前にやや買い疲れ感も見られた。需給面では、東京証券取引所が公表する裁定取引に係る現物ポジションによると、6月9日時点の裁定残高はネットベースで1兆1570.58億円の買い越しで、前週(1兆1828.55億円の買い越し)から小幅に減少、積み上がった裁定買い残の解消売り圧力が始まっているようで、下値は堅くとも、短期的には上昇一服で上値の重さが意識される頃合いと考えられる。
来週の注目イベントは21日に予定されているパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の米下院での議会証言だろう。今週開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では年内残り2回の利上げが示唆され、パウエル議長からは「利下げは2、3年先になるかもしれない」などとタカ派な発言が見られた。これに対し、市場は実際のところ結局は経済データ次第で、FRB自身も本当に利上げに固執したいとは考えていないと見透かしており、タカ派な姿勢をそのまま真に受けていない。ただし、議会証言でパウエル議長が改めて必要以上にタカ派な姿勢を見せると、市場が期待する米経済のソフトランディング期待が後退し、ハードランディングへの懸念が高まる可能性もあるため、この点は注意しておきたい。
ほか、米国市場は今週末にトリプルウィッチング(株価指数先物取引、株価指数オプション取引、個別株オプション取引の3つのデリバティブ取引の取引期限満了日が重なる日)、すなわち米国版のメジャーSQ(特別清算指数)を迎えた。米株式市場は好調が続いているが、バリュエーションの割高感が指摘されているなか、SQ通過後の来週からは需給の転換も意識されやすいため、米国株の動向には注意を払いたい。
■依然として出遅れ感のある中小型株に妙味
5月第5週からは出遅れ感の強い中小型株や新興株にも買いが入り始めている。上昇相場前半の値がさハイテク株の一極集中から次第に大型株、そして中小型株・新興株へと良い形で物色が循環してきている。この形が続くようであれば足元の上昇相場は息の長いものになっていきそうだ。この先は、月末にかけて株主総会シーズンの終了に伴う材料出尽くし感や、四半期末に伴う年金基金によるリバランス(資産配分の調整)目的の利益確定売りが想定されるため、4月以降の上昇率が大きい値がさ株や大型株よりも、依然として出遅れ感の強い中小型株・新興株に投資機会を見出していきたい。
■米パウエル議長議会証言、5月CPI、米6月製造業PMIなど
来週は19日に5月首都圏新規マンション販売、米6月NAHB住宅市場指数、20日に米5月住宅着工件数、21日に日銀金融政策決定会合の議事要旨(4月27-28日開催)、米パウエル議長の下院議会証言、22日に米5月中古住宅販売件数、23日に5月消費者物価指数(CPI)、米6月製造業購買担当者景気指数(PMI)、などが予定されている。
《FA》
提供:フィスコ