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【特集】上場に必要な売上高や利益水準とは? IT人材マッチングPFで快進撃! ビズリンクの事例

村上茂久のスタートアップ投資術-新世代アップルの見つけ方-(5)

【タイトル】村上茂久
株式会社ファインディールズ代表取締役、GOB Incubation Partners株式会社フェロー、iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。大学院の経済学研究科を修了後、新生銀行で証券化、不良債権投資、不動産投資、プロジェクトファイナンス、ファンド投資業務等に従事。2018年より、GOB Incubation Partners株式会社のCFOとして新規事業開発、起業支援、スタートアップファイナンス支援業務等を手掛ける。2021年1月に財務コンサルティング等を行う株式会社ファインディールズを創業。著書に「決算書ナゾトキトレーニング 7つのストーリーで学ぶファイナンス入門」「一歩先の企業・株価分析ができる マンガでわかる 決算書ナゾトキトレーニング」(PHP研究所)がある。

 スタートアップ企業(ベンチャー企業)の市場は年々成長し、2021年に資金調達額が7801億円(1919社)を記録するなど、近年、日本でも盛り上がりを見せています。

 本連載では、株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームである「FUNDINNO」を通じて資金調達を行った企業を毎回取り上げ、スタートアップ企業のビジネスモデルや成長戦略について、これまで、数多くのスタートアップ企業の資金調達支援を行ってきた株式会社ファインディールズ代表取締役の村上茂久さんが考察します。

 村上さんは「スタートアップ企業は情報が少ないものの、調達にあたり、投資家に刺さるポイントがある程度、形式知化されていることも分かってきた」と話します。

 事業が成熟している上場企業とは異なるスタートアップ企業を分析する際、どのような視点が必要とされるのでしょうか。

 今回は、前期が約8.64億円の売上で、今期は17.9億円超の売上を目指し、上場に向け準備中の株式会社ビズリンクを取り上げるとともに、上場に必要となる売上高や利益の水準について解説します。

フリーランスや副業者が登録するマッチングプラットフォーム

 ビズリンクが提供するサービスである「Bizlink」は、フリーランスや副業者が登録するマッチングプラットフォームであり、登録者数は約5500人、累計顧客数は4000社超と勢いのあるスタートアップ企業です。

 サービスとしては、エンジニアやデザイナー等のITのプロ人材を、ITニーズのある顧客企業へマッチングさせる「ビズリンク フリーランス」と、CXOと言われるCFO、CTO、CMOクラスの経験やスキルを有するITプロ人材のスキルをシェアし、企業のデジタルシフト(DX)を支援する「ビズリンク プロシェアリング」の2つから構成されています。

図表1
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出所:【第4回】<前期:売上約8.64億円(前年比約1.84倍)>IPOに向け年々売上・実績を拡大中!約4,000社が利用したHRTechサービス「Bizlink」


 ビズリンクのホームページによると、提携先企業は812社以上であり、ガイアックス <3775> [名証N]、ビズリーチ(ビジョナル <4194> [東証G]子会社)、博報堂(博報堂DYホールディングス <2433> [東証P]子会社)、ウォンテッドリー <3991> [東証G]といった有名企業を顧客企業としていることがわかります。

図表2
【タイトル】

出所:ビズリンクホームページ


 5000人以上の登録者を有するとともに、多くの顧客企業を抱えていることもあり、売上も2020年3月期の1.91億円から、わずか2年で8.64億円まで増えています。さらに、今期2023年3月期は17.9億円の売上を予定しています(図表3)。

図表3 ビズリンク 売上高推移
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 過去数年は新型コロナウイルスや足元のインフレ等、経済状況は必ずしも良い状態とは言えない中、このような環境においても毎年、2倍前後で成長を続けているのは驚異であり、ビズリンクはまさに、スタートアップ的な成長を体現していると言えます。

 これだけ売上が伸びている理由としては、ビズリンクがターゲットにしている業界の課題が大きく、提供しているサービスに対してニーズがあるからだと考えられます。ビズリンクでは、上述したようにIT人材のマッチングのプラットフォームを提供していますが、このように売上が伸びているのは、以下の課題の解決に取り組んでいるからです。

① IT業界の多重マージン構造により、非効率な働き方やミスマッチを強いられるエンジニアが多い
② 国内約350万社の企業のうち約8%しか業務のDXが進んでいない
③ フリーランスが最大限活躍するための仕組みや社会保障が欠如している

 このようなIT人材における業界課題を、フリーランスや副業者と上手にマッチングさせることで、ビズリンクは売上を伸ばしていると言えます。

グロース市場には、どれくらいの売上と利益で上場できるのか

 上述したように、ビズリンクは2023年3月期、17.9億円の売上を計画しており、上場の準備もしているとのことです。では、通常、上場するにはどれくらいの売上や利益が必要とされるのでしょうか。

 東京証券取引所では、2022年4月に株式市場の区分見直しが行われ、現在は以下の3つの市場が存在します(※1)。

・プライム市場:グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場
・スタンダード市場:公開された市場における投資対象として十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業向けの市場
・グロース市場:高い成長可能性を有する企業向けの市場

 これら3つの市場において、スタートアップ企業が目指す市場は多くの場合、グロース市場となります。上記市場区分の見直しが行われた2022年4月以降では、VtuberのマネジメントをしているANYCOLOR <5032> [東証G]、月額制ファッションレンタルサービスを提供するエアークローゼット <9557> [東証G]、英語コーチングのプログリット <9560> [東証G]、完全栄養主食のベースフード <2936> [東証G]、インフルエンサーマーケティングのトリドリ <9337> [東証G]、CtoCメディアプラットフォームを提供するnote <5243> [東証G]、月面開発事業を行うispace <9348> [東証G]といった有名スタートアップ企業がグロース市場に上場しています。

 このグロース市場における2022年の売上高、経常利益、純資産の額等の最大値、中央値、最小値をまとめたものが図表4になります。

図表4 グロース市場におけるIPO企業の規模比較
【タイトル】

出所:最近のIPO企業の規模比較(2022年<市場区分再編後>のIPO企業)より作成


 ここからわかることは、グロース市場における売上高の中央値はざっくり20億円前後、経常利益の中央値は1億円前後、そして、初値の時価総額の中央値は100億円前後ということです。もちろん、市場の状況によってこれらの数値は変わってきますが、中央値としてはおおよそ、これらの水準の範囲になることが多いです。

 このことを踏まえると、ビズリンクは売上高だけで見ると、すでに上場の射程圏内にいることがわかります。実際、プライム市場もスタンダード市場も、経営成績や財政状態について具体的な数値の基準が定められているものの、グロース市場では特段、経営成績において数値目標は定められていません(図表5)。

図表5
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出所:日本取引所グループ「市場区分見直しの概要」より作成


 では、グロース市場の上場の基準はどうなっているのでしょうか。主に事業計画、流動性、ガバナンス等が論点になりますが、その中でも事業計画は次のようになっています。

● 次の要件のいずれにも該当していること
 ・ 事業計画が合理的に算定されていること
 ・ 高い事業成長可能性を有しているとの判断根拠に関する主幹事証券会社の見解が提出されていること
 ・ 事業計画及び成長可能性に関する事項(ビジネスモデル、市場規模、競争力の源泉、事業上のリスク等)が適切に開示され、上場後も継続的に進捗状況が開示される見込みがあること

 これらを踏まえると、グロース市場の上場の要件としては、グロースの名が示す通り、高い成長の可能性と合理的な事業計画が重要になっていることがわかります。この点、ビズリンクで言えば、2023年3月期において計画通り、売上高17.9億円が達成できていたとして、翌年にどれだけの成長が見込めるかが重要になってくると言えます。

他の人材マッチングプラットフォームにおける上場時の売上と利益水準

 ビズリンクは主にIT人材のマッチングプラットフォームを提供していますが、労働市場におけるマッチングプラットフォームは他にも存在します。

 以下では、過去に上場した、マッチングプラットフォームを提供しているクラウドワークス <3900> [東証G]、ウォンテッドリー、ランサーズ <4484> [東証G]、ビザスク <4490> [東証G]、ココナラ <4176> [東証G]の上場直前の売上高、税引後当期純利益、上場時の時価総額を比較してみましょう。そうすることで、人材プラットフォーム系の上場時の売上高や利益水準をイメージできるようになります。図表6は、これら企業の上場時の情報を示したものです。

図表6 人材プラットフォーム関連企業の上場時の財務データ及び時価総額
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出所:MINKABUより作成


 参考までに、これら企業が上場する直前における年の売上高の平均値を計算すると、約12.3億円、税引き後当期純利益は▲300万円ほどになります。

 もちろん、売上高や利益水準だけで上場できるわけではないですし、重要なのは上場直前の売上高や利益よりも、グロース市場の上場基準に書かれているように、高い事業成長の可能性を有しているかどうかです。

 とはいえ、売上高や利益の水準について、メルクマールとして図表6を見た場合、ビズリンクは十分に上場を狙える位置にいることがわかります。

 実際のところ、人材市場において、図表6に挙げている新興の労働市場のマッチングプラットフォームを提供している企業に加えて、Indeedが好調なリクルートホールディングス <6098> [東証P]、パソナグループ <2168> [東証P]、パーソルホールディングス <2181> [東証P]、ビズリーチといった大手企業の動向を踏まえると、人材市場におけるサービスは極めてレッドオーシャンの状態といえます。このような競争環境においても、この数年でこれだけの成長を見せているビズリンクは、顧客ニーズやインサイトを捉えていると言えますし、上場を通じて資金調達をしたり、知名度が上がったりすることで、さらなる成長を期待できそうです。

 今回は、主にビズリンクの売上に注目するとともに、グロース市場への上場において求められる売上や利益の水準について解説しました。

 今後、未上場のスタートアップ企業を見る際には、売上や利益を押さえることで、上場までどれくらい時間がかかりそうなのかも合わせてチェックをしてみてください。

(※1)出所:日本取引所グループ「市場構造の見直し」を参考に記載。
https://www.jpx.co.jp/equities/market-restructure/index.html

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