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【市況】コラム:欧州通貨に根強い下押し要因


欧州通貨に金融システム不安による売り圧力が続いています。ウクライナ戦争によるダメージを克服しつつあったものの、足元の上昇は限定的。ヨーロッパ大手行の経営問題に関する懸念が払しょくされるまで、ユーロやポンドは引き続き買いづらいでしょう。


米シリコンバレー銀行の破たんをきっかけに、米国ではシグネチャー銀行、ファースト・リパブリック銀行など中堅行の経営問題が浮上。今のところ、連邦準備制度理事会(FRB)や大手金融機関による支援策で、市場のパニック的な動揺は抑えられています。アメリカ発のリスク要因のため、ドルは当初売りが膨らみましたが、その後はリスクオフによる買いが入り主要通貨に対し下げ渋っています。


どちらかと言えば、欧州通貨の伸び悩みの方が目立ちます。3月15日にクレディ・スイスの筆頭株主であるサウジ国立銀行の幹部が追加投資に否定的な見解を示すと、クレディ・スイス株は急激に下落。それを受け、スイス当局は流動性供給による支援を決めました。さらにUBSによるクレディ・スイス買収で市場の危機感はいったん和らぎ、欧州通貨売りは和らいでいます。


米国が中堅行の破たんであるのに対し、ヨーロッパは大手の経営が問題視されており、預金者のほか投資家の不安を強めていると専門家は指摘します。米銀の問題で市場のリスク許容度が低下し、先行きが憂慮されていた欧州銀に飛び火したとの見立てです。ヨーロッパの大手金融機関のなかには、いまだにソブリンリスクなどから完全に持ち直したとは言い切れないところもあります。


3月16日の欧州中央銀行(ECB)理事会は金融システム不安が強まってから初の主要中銀による政策決定となったため、多くの注目を集めました。利上げ幅縮小や利上げ休止の見方も浮上していましたが、ECBは予定通り0.50ポイントの利上げを維持。会合後の記者会見で、デギンドス副総裁はヨーロッパの銀行業界は「強靭」と強調し、インフレ抑制に向け利上げの余地があることを示唆しました。


ECBの大幅利上げに続き、英イングランド銀行(BOE)は3月22-23日の金融政策委員会(MPC)で0.25ポイントの利上げにより引き締め継続を決定。一方、直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策内容からはFRBの意図がはっきりせず、ユーロとポンドは対ドルで小幅に値を上げました。ただ、欧州の大手行の経営問題は完全に払しょくされていないようです。さらに景気減速懸念も加われば、欧州通貨は目先も上値の重い展開となりそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《YN》

 提供:フィスコ

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