【市況】再浮上遠のく米国株【フィスコ・コラム】
NASDAQ <日足> 「株探」多機能チャートより
米国株のさえない値動きが続いています。インフレ鎮静化への期待感で年初から底堅く推移していたものの、連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め再加速の観測で再び失速。その後、突如として金融システム不安が台頭し、リセッション懸念が広がってきました。
NY株式市場で主要指数は安値圏でもみ合う状況です。このうち、ダウ平均は年初からおおむね33000ドル前後の底堅い値動きでしたが、足元はやや値を下げ、3月前半は31000ドル台に下落。2021年11月に過去最高値圏の36000ドル台に浮上したものの、その後は下落基調に転じました。現在も22年終盤の28000ドル台からは持ち直したとはいえ、ピーク時から10%超も安い水準です。
S&Pも同様の展開です。2021年末に4700ポイント台と過去最高値圏に達した後、翌22年10月には30%超も安い3500ポイント台に下落。今年2月に年初来高値の4100ポイント台に浮上しながらも、再び下げ始め、足元は3900ポイント付近。S&Pは2000-2003年に長期下落トレンドを形成していますが、弱気相場は平均で1、2年と言われます。その意味で、現在はその分岐点かもしれません。
ナスダックの弱さはさらに際立っています。2021年11月に過去最高値の16000ポイント台に切り上げた後は軟調地合いとなり、昨年10月には10000ポイント付近に下げる場面もありました。2023年に入り2月には12000ポイント台に回復したものの、3月には11000ポイント台に逆戻り。ピーク時から40%超も安く、本来なら押し目買いが入ってもおかしくない水準ではないでしょうか。
米国株の軟調地合いの原因は言うまでもなく、連邦準備制度理事会(FRB)による2022年3月以降の利上げです。途中、利上げ幅を拡大して引き締めを加速させ、金利高を招いたことからハイテク関連を中心とした売りが強まりました。金融引き締め効果により物価高は抑制されつつありましたが、ここへきてインフレ指標は下げ渋る動きを見せ、金融システム不安が台頭するまでは、FRBが今後引き締めを再び加速させるとの思惑が株価を下押ししていました。
金融大手シティの幹部は最近、FRBがインフレ抑制の取り組みをさらに強めるとの見方を示したうえで、年後半には緩やかなリセッションに陥ると指摘。米国の2年債利回りが10年債利回りを上回る「逆イールド」の現象も長期化しており、今後は景気減速への警戒感が高まる見通しです。雇用情勢の力強さは顕著ながら、高インフレに賃金の伸びが追いつかない状況で景気の回復が妨げられているようです。
そのような中で生じたシリコンバレー銀行の破たんをきっかけとした金融システム不安。FRBの急激な利上げによって米国債をはじめ保有有価証券の大きな損失につながったのは間違いないでしょう。それでも欧州中央銀行(ECB)の利上げ継続を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)も追随すれば、やはり株価の上値を抑えるかもしれません。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
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