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【特集】横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (34)株価の方向性と調整や押し目のあたりをつけるリトレースメント【後編】

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆トレンド否定の分岐ポイントを把握しよう

 前回の復習です。株価がどちらの方向に、どれだけ動く可能性があるのかを分析する手法として、リトレースメントをご紹介しました。具体的にはリトレースメントは、フィボナッチ比率などを使って、株価が反転した際の目安を測るテクニカル分析です。フィボナッチ比率では23.6%、38.2%、50%(半値)、61.8%などが代表的な数値とされています。リトレースメントは、この他に3分の1(33%程度)、3分の2(66%程度)などが、どこまで戻り高値があるのか、あるいはどこまで調整するのかを計算する際に用いられます。

 それでは、東証マザーズ指数のチャートで具体的に考えてみましょう。2022年1月からの日足チャートを見ると、期間内で最安値を付けたのが22年6月20日の607ポイントでした。その後、順に安かった日を並べると、10月3日の681ポイント、12月26日の701ポイント、23年3月16日の725ポイントでした。

 次に高値を付けたポイントを見ていきます。東証マザーズ指数は22年1月4日大発会で付けた995ポイントを高値に下落し、2月24日安値の648ポイントでいったん反発、4月5日の843ポイントまで戻しています。以降、順に目先の天井を打った日を高かった順に並べると12月1日の813ポイント、23年2月9日の794ポイント、22年8月17日の765ポイントでした。

図1 東証マザーズ指数 日足
【タイトル】

 それでは、リトレースメントを活用して、東証マザーズ指数がどこまで調整する可能性があるのかを見ていきます。

 22年6月20日に607ポイントまで値下がりした時には、「どこまで下落するのだろう……」と悲壮感に見舞われたりもしましたが、株価はなんとか600ポイントを割り込むことなく下げ止まりました。その後、切り返すと8月17日の765ポイントまで上昇。途中、調整は挟んだものの12月1日には813ポイントまで上げています。ただ、ここで上値を抑えられて、残念ながら足もとは調整を余儀なくされる状況となっています。

 ここでのポイントは、12月1日で天井を売ったのか否か、ということでしょう。前回も解説しましたが、方向性とだいたいの目標株価がわかれば売り時や買い時がわかりますので、最初に使うのはリトレースメントの代表的な数字である「50%」です。「半値戻しは全値戻し」との格言もあるように、判断の重要な分岐点となる「50%」をまず基準に考えていきます。

 東証マザーズ指数は22年12月26日の701ポイントから23年2月9日の794ポイントまで上昇しました。この時の上昇幅の半値がいくらであるのかを算出します。

 (794ポイント-701ポイント)×50%=93ポイント×50%=46.5ポイント

 高値から半値押しの水準がどこなのかを計算してみましょう。

 794ポイント-46.5ポイント=747.5ポイントになります。

 足もとは3月16日に725ポイントまで下落し、この半値押しの水準を割り込んでおり、さらなる下落につながる可能性が出ているという状況です。

 ただし、これは昨年12月安値からの上昇に対する調整を測ったものです。確かにリスクの高まりを告げる信号は灯っていますが、より長期の視点で最悪のシナリオも分析しておく必要があります。

 22年6月20日の607ポイントから上昇トレンドが始まっていますので、このスタートからの半値押し水準を算出してみましょう。

 (813ポイント-607ポイント)×50%=206ポイント×50%=103ポイント

  813ポイント-103ポイント= 710ポイント
 
 さて、ここからですが……、6月20日の安値607ポイントから始まった上昇トレンドは、12月1日の高値813ポイントで天井を打ったのかは、実はまだはっきりしていません。

 足もとは12月26日の701ポイントから23年2月9日の794ポイントまで上昇した際の半値押しの水準を割り込んでいますので、目先の高値をつけたとは考えられます。だからと言って、6月20日の安値607ポイントから始まった上昇トレンドが否定された(トレンドが転換した)というわけではありません。

 というのも、今のところ高値を切り下げる一方で、安値を切り上げる形で推移していますので、半値押しの水準である710ポイントを大きく下回ることがなければ、再び800ポイントに向けて上昇していく可能性も考えられるでしょう。一方で710ポイントを大きく下回ると、昨年6月から始まった上昇トレンドが昨年12月の高値で終焉した可能性が高まり、一段安へとつながるリスクがあります。「半値押し」は市場関係者が注目する水準であり、これを割り込んでしまうと、下方へのトレンドが強く意識されて、売りが売りを呼ぶ展開になりがちだからです。

 不測の事態が発生して株価が急落すると、個人投資家が不安に見舞われまるのは普通のことです。ただ、株価の急落に右往左往しているだけでは今後の戦略を練ることも難しいですから、そうした時こそ株価のトレンドが変化していないかを確認するべきでしょう。当面は市場の動揺が収まるのを待つ形にはなりますが、先が見通しにくい時こそテクニカル分析を積極的に活用すべき局面だと言えますから、リトレースメントを活用して目標株価や方向性を考え、日々の売買に活用していきましょう。

 


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