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【市況】明日の株式相場に向けて=最強テーマと化す「メガバンクの逆張り」

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(14日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比610円安の2万7222円と大幅に3日続落。前日の欧州株や前週の米国株のように問答無用の下げに見舞われると、理屈では埒(らち)が明かず、嵐が過ぎ去るのを待つしかない。東京市場も対岸の火事どころではなく、きょうは日経平均が一時700円超の下落で2万7100円近辺まで一気に水準を切り下げた。これは前週木曜日9日の終値と比較して1500円以上の下げとなり、下落率で言えばNYダウ5日分のそれを上回る。きょうは、その後やや下げ渋ったとはいえ、大引けは600円あまり下げて2万7200円台で引けた。売買代金が3兆9000億円台に膨らみ、目先的にはミニ・セリングクライマックスの様相ともなった。

 ひとたび信用収縮が起こると、ダムが決壊するように加速的な資金流出が始まるのが相場の怖いところ。AI全盛時代であっても相場の方向性を支配するのは群集心理(投資家心理)にほかならない。売りの仕掛けにより相場が崩れる時は、力ずくではなく、投資家心理が弱気に傾斜したのを見計らって足を引っ掛けるからこそ効果が倍加する。例えば個別株の場合も、PERが10倍だから買われ20倍だから売られるというような明確な境界線が存在するわけではなく、その銘柄が信用されなくなったら上昇相場は終わる。

 これが銀行経営の場合、信用力の崩壊はもっとリアルに危険な要素をはらむ。今回の米銀の相次ぐ破綻は、信用不安によってダッチロール飛行を繰り返した挙げ句に潰れたというケースではない。いきなり空中分解と言えるような“超速破綻”であった。米SVB(シリコンバレーバンク)の場合、2008年のリーマン・ショック以来最大規模となる総資産2000億ドル超の金融機関の破綻となり、世界中の耳目を驚かせた。元凶はFRBにあると言っても過言ではない。パウエルFRB議長はアクセルから足を離すのが遅すぎて、インフレがどうにもならなくなってから今度は慌てて急ブレーキをかけたが、それについていけなかったのは一般投資家だけではなかったようだ。

 SVBはテック系ベンチャー企業から集めた資金の大部分を債券で運用していたが、タカ派に豹変したFRBの急速な金融引き締めで債券価格が急落し、損切りしているうちに預金者の引き出しが加速して万事休した。「預金者はSVBの経営が危ないと思って引き出したのではなく金利が相対的に低いことに気づき、他に乗り換えようという何の変哲もない預け替えの発想で引き出していた。こうした行動が、最後は不安に置き換わって引き出しが加速し破綻した」(ネット証券アナリスト)と指摘する。ただし、こういう事例が生じた時点で、群集心理によって負の連鎖が他行にも広がる。だからこそ、バイデン大統領は13日の演説で、SVBやシグネチャー・バンク<SBNY>の破綻では預金を全額保護し一般市民が損失を被ることはないと強調した。これによって、米国株はいったん下げ止まったのだが、問題はここからのFRBの舵取りがどうなるかだ。

 「こうした波乱局面だからこそ、日本時間今晩の米CPI発表は重要性が高い」(前出のアナリスト)とする。それはなぜか。コア指数で前年同月比5.5%の上昇がコンセンサスとなっているが、これと同等もしくは下回るようなら、FRBは21~22日のFOMCで利上げ幅を0.25%もしくは利上げを行わないという選択の大義名分が立つ。問題は予測を上回る数値だった場合、「銀行破綻が相次いでいるのでインフレは心配だけど引き締めを緩めます」というのであればそれはそれで英断だが、FRBの信用は地に堕ちる。

 ここでの狙い目は三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>などのメガバンク。「ここ数日の強烈な下げは悪材料を内在させているのではなく、ヘッジファンドによる“債券売り・銀行買い”ロング・ショート戦略のアンワインドによるもの」(前出のアナリスト)という。とすれば、需給的な売り圧力が切れれば急速に戻る。反転のポイントは売買代金であり、株価以上にその動向を注視しておく必要がある。

 あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の議事要旨(1月開催分)、2月の訪日外国人観光客数など。海外では2月の中国小売売上高、2月の中国工業生産高、2月の中国固定資産投資、2月の中国不動産開発投資、1月のユーロ圏鉱工業生産、2月の米小売売上高、2月の米卸売物価指数、3月のNY連銀製造業景況指数、3月のNAHB住宅市場指数、1月の米企業在庫などが注目される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2023年03月14日 17時54分

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