【市況】株価指数先物 【週間展望】 ―米金融システム不安で需給状況は一変、リスク回避で日本に資金流入も
NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより
「米金融システム不安で需給状況は一変、リスク回避で日本に資金流入も」
今週の日経225先物は、米金融システム不安の広がりが警戒されるなか、ショートが入りやすい展開が見込まれる。SVBファイナンシャル・グループ<SIVB>傘下で、スタートアップ企業向けを主な取引先とするシリコンバレーバンクが、10日に経営破綻した。金融システム全体への影響の波及が警戒されて、10日の米国市場ではリスク回避の動きが強まった。
イエレン米財務長官は米連邦準備理事会(FRB)や米連邦預金保険公社(FDIC)などと協議を行い、国内銀行システムの「強靱さに変わりはない」と述べている。スタートアップなど法人顧客を主力とする特殊な金融機関の破綻が、大手銀にすぐさま波及するリスクは今のところ少ないとみられるが、イエレン氏は非常に注意深く監視しているとも述べており、金融システムを巡る警戒感は燻りそうだ。
シリコンバレーバンクの破綻により需給状況は一変した。先週のNYダウは週間で1480ドル超下げ、昨年11月以来およそ4カ月ぶりに3万2000ドルを割り込んだ。シカゴ日経平均先物は日中大阪比335円安の2万7525円で終えており、一時2万7490円と節目の2万7500円を下回る場面があった。10日の日経225先物は500円を超える大幅下落で2万8000円を割り込んでいたが、ナイトセッションでの一段安によって需給悪化が警戒されよう。
日経225先物は3日から9日までの6営業日で1100円上昇したが、10日の日中取引とその後のナイトセッションで800円を超える急落となった。10日の日中取引での500円超の下落である程度織り込まれているとみられるが、米国市場が下げ止まらなかったことで、急ピッチの下落に対するヘッジ対応のショートが強まりやすいと考えられる。
特に米国では、21-22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を再び0.5%に拡大するといった見方を織り込んできたなか、10日発表の2月の米雇用統計で賃金の伸びが予想を下回ったことで、大幅な利上げ観測が後退。米長期金利は3.7%台と前日の3.9%台から大幅に低下した。これを受けてNYダウが上昇に転じる場面も見られたが、金融システム不安という新たな悪材料によって売りが膨らんだ。
一方で、米国では国内の景気不透明感の強まりを受けて、国外の割安な株式へ資金シフトをする動きも見られる。週明けの日経225先物は下へのバイアスが強まりやすいだろうが、ナイトセッションで25日移動平均線水準まで下落したことにより、短期的な過熱感は後退した。節目の2万7000円処では75日、200日線がほぼ横ばいで推移しているため、同水準が支持線として機能する可能性がある。先週の日銀の金融政策決定会合では、現状の緩和策を継続するとしており、相対的に割安感がある日本株への資金シフトの思惑が高まりそうだ。そのほか、金融システム不安を背景に、FRBは次回のFOMCで利上げ幅を前回同様、0.25%とするといった見方も強まりそうである。
そのため、まずは25日線が位置する2万7500円前後での底堅さを見極めつつ、短期的には押し目狙いのロングスタンスになろう。25日線を明確に下回り、75日、200日線に接近する局面があったとしても、3月に入ってからの上昇分を帳消しにするなかで、需給調整の一巡が意識され、ショートカバーも入りやすい水準と考えられる。オプション権利行使価格の2万7500円を中心に、2万7000円~2万8000円辺りの広いレンジを想定する。
また、VIX指数は24.80に上昇し、高いところでは28.97と昨年10月下旬以来の水準まで切り上がったものの、終値では200日線水準まで上げ幅を縮めていた。しばらくは不安定な推移となる可能性は高そうだが、いったんはピーク感につながることも考えられ、200日線を下回ってくると、米国でも見直し買いに向かわせよう。
なお、先週のNT倍率は先物中心限月で13.89倍に上昇した。25日線を挟んだ攻防を継続するなか、週末の上昇で上値抵抗の75日線を捉えてきた。週初はギャップスタートの影響でNT倍率の低下が見込まれるものの、金融株に売りが波及するなか、NTロングでのスプレッド狙いによるポジションを組成する動きは入りそうだ。期末を意識した低PBRや配当志向の物色により、TOPIX優位が意識されるものの、金融システム不安のなかでは金融株が重荷となり、相対的に日経平均型優位の展開になりやすいだろう。
今週は14日に2月の米国消費者物価指数(CPI)、15日に2月の米国卸売物価指数(PPI)などの発表が予定されており、FRBの利上げペースを見極めたいとするムードが強まりそうだ。ただし、市場の関心はシリコンバレーバンク破綻の米金融システムへの影響に集まり、経済指標の結果を受けた市場反応は限られるとみておきたい。
3月第1週(2月27日-3月3日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物と先物の合算では2週ぶりに買い越しており、買い越し越し額は6992億円(2月第4週は6億円の売り越し)だった。なお、現物は994億円の売り越し(同2263億円の売り越し)と2週連続の売り越しであり、先物は7986億円の買い越し(同2256億円の買い越し)と7週連続で買い越している。個人は現物と先物の合算で4006億円の売り越しで、2週ぶりの売り越し。信託銀行は現物と先物の合算で743億円の売り越しとなり、8週連続の売り越しだった。
経済スケジュールでは13日に1-3月期法人企業景気予測調査、14日に米国2月消費者物価指数、15日に日銀金融政策決定会合議事要旨、中国2月小売売上高、中国2月鉱工業生産、米国3月ニューヨーク連銀製造業景気指数、米国2月小売売上高、米国2月卸売物価指数、米国3月NAHB住宅市場指数、16日に1月機械受注、2月貿易統計、米国2月住宅着工件数、米国2月輸入・輸出物価指数、米国3月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、欧州中央銀行(ECB)政策金利、17日に米国2月鉱工業生産、米国2月コンファレンス・ボード景気先行指数、米国3月ミシガン大学消費者態度指数などが予定されている。
――プレイバック・マーケット――
●SQ値
04月限 日経225 27122.37 TOPIX 1904.02
05月限 日経225 25951.24 TOPIX 1838.12
06月限 日経225 28122.81 TOPIX 1955.38
07月限 日経225 26659.58 TOPIX 1890.16
08月限 日経225 28525.62 TOPIX 1963.05
09月限 日経225 28253.40 TOPIX 1957.76
10月限 日経225 26666.31 TOPIX 1885.58
11月限 日経225 28225.86 TOPIX 1978.52
12月限 日経225 27576.37 TOPIX 1945.27
01月限 日経225 26325.21 TOPIX 1900.71
02月限 日経225 27779.75 TOPIX 1986.19
03月限 日経225 28377.34 TOPIX 2047.32
◆日経225先物(日足)
始値 高値 安値 清算値 前日比
23/06 03月10日 28330 28340 27830 27860 -510
23/03 03月09日 28430 28730 28390 28640 +220
23/03 03月08日 28320 28480 28170 28420 +100
23/03 03月07日 28240 28400 28170 28320 +60
23/03 03月06日 27900 28320 27860 28260 +360
◇TOPIX先物(日足)
始値 高値 安値 清算値 前日比
23/06 03月10日 2046.0 2047.0 2004.5 2005.0 -43.0
23/03 03月09日 2051.0 2072.5 2048.5 2072.0 +21.5
23/03 03月08日 2045.5 2054.0 2036.0 2050.5 +4.5
23/03 03月07日 2036.0 2047.0 2033.0 2046.0 +10.0
23/03 03月06日 2019.0 2041.5 2016.0 2036.0 +17.0
●シカゴ日経平均 円建て
清算値 前日比
03月10日(6月限) 27525 -335
03月09日(6月限) 28000 -370
03月08日(3月限) 28620 +200
03月07日(3月限) 28205 -115
03月06日(3月限) 28200 -60
※前日比は大阪取引所終値比
□裁定取引に係る現物ポジション裁定残(金額)
売り 前週末比 買い 前週末比
03月03日 2566億円 +200億円 7783億円 +2698億円
02月24日 2365億円 +2023億円 5084億円 +1482億円
02月17日 342億円 -230億円 3602億円 -0.09億円
02月10日 572億円 -1769億円 3602億円 -381億円
02月03日 2342億円 -1159億円 3983億円 -513億円
□裁定取引に係る現物ポジション(株数)
売り 前日比 買い 前日比
03月08日 6394万株 -151万株 5億1894万株 +1億2533万株
03月07日 6545万株 +810万株 3億9361万株 +5153万株
03月06日 5735万株 -545万株 3億4207万株 +5450万株
03月03日 6281万株 +887万株 2億8757万株 +7723万株
03月02日 5394万株 -31万株 2億1034万株 +1974万株
03月01日 5425万株 -105万株 1億9059万株 +691万株
02月28日 5530万株 -309万株 1億8367万株 +210万株
02月27日 5840万株 -5万株 1億8157万株 +230万株
02月24日 5846万株 +27万株 1億7927万株 +93万株
02月22日 5818万株 +359万株 1億7833万株 -327万株
02月21日 5458万株 +4875万株 1億8161万株 +3404万株
02月20日 583万株 -429万株 1億4757万株 +123万株
■日本銀行による指数連動型上場投資信託(ETF)買い入れ推移(通常ETF分)
【2022年】
1月14日 701億円
1月25日 701億円
2月14日 701億円
3月07日 701億円
4月07日 701億円
5月19日 701億円
6月13日 701億円
6月17日 701億円
12月2日 701億円
株探ニュース