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【特集】効率化のカギはDXにあり、「スマート工場」が描く未来図と関連株 <株探トップ特集>

国内の製造業は人材不足などの問題を抱えているが、その解決のカギになるのがテクノロジーを活用した「スマート工場」だ。直近では「スマート工場EXPO」開催が予定されており、株式市場で関連銘柄への関心が高まっている。

―「ものづくり大国」復活の切り札、テクノロジー活用で課題を解決―

 市場参加者の注目を集めた日銀金融政策決定会合は、この日に現行の金融緩和策の維持を決め、長期金利の変動許容幅の再拡大など長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の修正も見送った。市場では政策修正の思惑が高まっていただけに、これを受けて外為市場で131円台まで円安・ドル高が進むとともに、東京株式市場では日経平均株価の上げ幅が一時680円近くに達した。ただ、日銀の政策が近く見直しを迫られるとの見方も根強く、今後の相場は再び不安定な動きとなる可能性もある。

 ただ、こうしたなかでも各業界に押し寄せるデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れは変わらない。背景には少子高齢化の進行に伴う人手不足の問題などがあり、既存の業務をデジタル化してビジネスモデルを変革することが求められているからだ。「ものづくり大国」と呼ばれ、日本経済を支えてきた製造業が今後も牽引役となっていくためにはDXの推進が必要不可欠で、改めて「スマート工場」に注目してみた。

●「2025年の崖」への危機感も追い風に

 スマート工場とは、人工知能(AI)モノのインターネット(IoT)などのテクノロジーを活用した生産性が高く効率的な工場のこと。工場内のセンサーや機器から得られる膨大な量のデータを分析し、その結果を用いることで、生産工程にとどまらない設計・製造・流通・販売・保守といった製造業の在り方そのものを革新しようとするコンセプトだ。

 国内製造業では、少子高齢化による労働力人口の減少の煽りを受けるかたちで慢性的に人材が不足しているほか、技術力の継承、過剰在庫や欠品による機会損失、デジタル技術の知識・リテラシー不足などの問題を抱えている。また、経済産業省では複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存のシステムを使い続けると2025年以降、毎年最大12兆円の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)があると指摘しており、これらを解決するためには工場におけるDX推進が重要となる。

 製造業を取り巻く社会情勢は、新型コロナウイルス感染症の拡大、半導体や部素材の不足、カーボンニュートラルへの取り組み、DXの加速などを受けて大きく変化しており、次世代を担うスマート工場に関連する企業のビジネス機会は今後更に広がりそうだ。

●「スマート工場EXPO」出展企業に注目

 スマート工場関連としては、AIやIoTによる遠隔監視やデータの見える化、 ロボット、生産管理システム、予兆保全(機械の故障の兆候を捉えて故障前にメンテナンスを行うこと)、デジタルツイン(現実世界の情報をもとに仮想世界に双子を構築し、さまざまなシミュレーションを行う技術)などがあるが、ここでは25~27日に東京ビッグサイトで開かれる「スマート工場EXPO」に出展する企業にスポットを当てた。

 ブロードリーフ <3673> [東証P]は、作業分析・業務最適化ソフトウェア「OTRS10」、スマートフォンアプリ「Mobile OTRS」のほか、昨年10月に発表した富士通 <6702> [東証P]との共同開発による作業分節AIなどを展示する。「OTRS10」は映像による動作分析・時間分析などの機能により、生産・製造現場の作業時間短縮・省力化・コスト低減が実現可能なソフトウェアで、「Mobile OTRS」は「OTRS10」を手軽に活用できるスマートフォン・タブレットアプリだ。

 ウイングアーク1st <4432> [東証P]は、データ分析基盤「Dr.Sum」を出展する。これはデータベースやシステム、設備データなどと連携し、データを高速集計・加工して活用しやすいかたちに整備するもの。継続的に発生する時系列データをリアルタイムに収集、加工することができ、チョコ停(「チョコっと停止」の略で、生産設備のトラブルで一時的に設備や生産が停止・空転する現象)などの設備不具合やロス発生など、現場で起きている状況を正確に捉えることができる。

 サトーホールディングス <6287> [東証P]傘下のサトーは、工場での入荷、工程、検査、出荷などの各業務プロセスにおける課題改善に寄与する新たな商品・ソリューションを展示する。具体的には、設定レス印字品質検査機能付きラベルプリンター、RFID(電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステム)対応の入出荷・在庫管理システム「IritoDe」などを紹介する予定だ。

 エレコム <6750> [東証P]は、離れた現場の状況確認や作業支援ができる遠隔支援ソリューションを起点に、現場のダウンタイムの短縮や技術伝承につながる製品を紹介する。展示製品は、作業員の手元撮影や現場巡視などに便利な「ウェアラブル対応Webカメラ」、録画データをクラウドで一括管理する「クラウド録画サービス」、事務所の会議室からの遠隔指示・支援を高品質化する「テレビ会議システム」、現場のWi-Fiや監視カメラ、電子掲示板の設置・設定が可能な「インフラ工事ソリューション」などとなっている。

 アライドテレシスホールディングス <6835> [東証S]傘下のアライドテレシスは、工場内のさまざまな機器のネットワーク化をはじめ、工場と工場間、海外拠点や本社間をつなぐネットワーク、その延長としてサプライチェーンの強化につながる対策を紹介する。工場内における無線LAN活用をイメージしたデモンストレーションでは、移動しながらでも端末の通信が途切れない独自技術AWC-CB、ネットワークや端末の接続状況、位置情報を可視化する管理ツール「Vista Manager」シリーズなどをアピールする。

 KIMOTO <7908> [東証S]のブースでは、360度カメラで撮影した複数のデータを使い空間内を自由に行き来できるソフト「KIMOTO360 EDITOR」、iPhoneやiPadで手軽にAR(拡張現実)を体験できる建設業特化型ARアプリ「TerraceAR」、360度映像を使用するオンラインコミュニケーションツール「nossa360」、工場をレーザー計測して3次元データを作成する「SCAN to BIM」などを紹介する予定。これらコンテンツを通じて、製造業のデジタルツイン実現を支援するという。

 このほかでは、システムインテグレータ <3826> [東証S]がスマートファクトリーソリューション、サイバネットシステム <4312> [東証S]がAR作業支援ソリューション、HCSホールディングス <4200> [東証S]子会社がユーティリティ向けメーター監視ソリューション、ブラザー工業 <6448> [東証P]がPLC(外部の機器を自動的にコントロールできる制御装置)連携ソリューション、岩崎通信機 <6704> [東証P]がDX化・AI化をサポートする製品、丸文 <7537> [東証P]がデータマネジメントIoTプラットフォーム、菱電商事 <8084> [東証P]が省人省力のロボット、日伝 <9902> [東証P]がAI×画像処理の現場活用などを出展する予定となっている。

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